森の中3
夜を待っての作戦開始となった。
イリスが言うにはああいう連中は金の損得で行動する。
要は割には合うか合わないかが大きく関係してくる。
更には集団での力はあるが個々での力はイマイチだと言う。
だから統率さえ崩せれば何とかなると。
ヴェスタ公国が王様の死後に国政が不安定になった時、それは国民の間にも広がったという。
その結果沢山の失業者が発生して各地に溢れた。
その中の一部が徒党を組み雇われ師団となった。
どの世界でも一緒でこういう仕事は絶え間なくあり、時には必要とされてしまう。
どの世界も一緒だなとマコトは思った。
「そろそろね。」
「OK。行こう。」
ほとんどイリス発案の仕掛けをかけ終え暗くなったのを見計らい二人は動き出した。
相手の拠点となる場所は森の中ではあるが一方向だけ動きやすい場所がある。
他の所は馬を走らせるにも森の方向は足場が悪過ぎて向いていない。
従って追い出すだけならその一点に集中させれば良い。
しかもこの森の中での視界はとても悪い。
チャンスはマコト達にあった。
マコトの担当は撹乱と人質である子供たちを助けることだった。
まずは相手の武器を積んでいる荷馬車を叩く。
その後はイリスがやってくれる。
兎に角子供達を助けることが最優先事項だった。
武器の積んである荷馬車の近くまで来たマコトは様子を伺いながらチャンスを見計らった。
やはり、気配を殺したフォルトゥナの力は偉大で誰も気づく様子は無い。
世界最強のかくれんぼマスターだった。
「こりゃ町中でも気が付かれないかも。」
そんな事を言いつつ見張りが通りすぎたのを確認してマコトは飛び出した。
素早く荷馬車の下に潜り込むと裏にイリスに貰った布を木の継ぎ目に押し込んだ。
この布は火布という布で何処でも誰でも火を起こせるライターのようなマジックアイテムだ。
「これでよし!頼むぞ。」
マッチのように擦ると直ぐに焦げ臭くなってきた。
それを確認してマコトは一旦そこを離れ次の場所に向かった。
次第に荷馬車からは小さな煙が上がりだした。
丁度そのころ見回りの一人が焦げた臭いに気付き大声を上げた。
それと同時に休んでいたり酒を飲み交わしていた仲間が集まってきた。
「よしよし。第一段階は成功ね。」
マコトが上手くいったのを見てイリスも動き出した。
イリスは目の前に吊るしておいた油の染み込んだ松明に火をつけるとそこから順番次々と火をつけた。
イリスの丁度反対側にはマコトが到着していてマコトのいる場所にも同じように松明がありマコトも順番に火をつけた。
辺りを松明で照らされた師団の面々は何事かと狼狽えた。
何と自分達の集団が気付くとほとんど松明の火で囲まれていたのだ
その時何処からか大きな声がした。
「ナチューロの大兵団が来た!ホーリーライトの光だ!アデプトもいるぞ!」
無数に燃える松明の中に白い光が一つ光っていたのだ。
それは火の光ではなかった。
その声で一気に場が戦闘モードになったが時すでに遅し。
武器を積んだ荷馬車が炎に包まれ燃えていた。
「まずい!武器を積んだ荷馬車をやられたぞー!待避!待避!」
誰かが叫ぶと一気に現場は大混乱になった。
奇襲をかけられ武器も失った兵士に戦う勇気と気力は残っていなかった。
全員が右往左往しつつ各々松明の切れ目を目指して逃げた。
応戦を呼び掛けるもの、トラップが効果が無かったのかと嘆くもの、死を逃れたいと走るもの様々な思いが交錯する混沌の中で一つ別の目的で動く影があった。
「流石イリス!この隙に。」
マコトは子供達の救出に向かった。
ほとんどが敗走しており難なく子供達のいる荷馬車までたどり着いた。
「よし。ここだ。」
マコトは荷馬車の後ろについた布張りを捲り中に入ろうとした。
「おい!お前誰だ?」
背後からの声にビクリとマコトは固まった。
残党が残っていたのだ。
「これはお前の仕業か?そのままこっち向け!」
ヤバいとマコト思った。
ここで捕まればトリックがバレると何とかしないとと思ったその瞬間だった。
「うぐっ!」
うめき声声がして誰かが倒れる音がした。
そして…………
「マコト!早く!」
「おお!イリスか。助かった。」
「いいから!早く子供を!」
全ての仕掛けを終えたイリスが戻って来たのだ。
まだ逃げていない残党が何人かいたが少人数ではイリスには全く歯が立たなかった。
「おし。大丈夫か?逃げるぞ。」
荷馬車の中で恐怖に震える子供を見つけるとマコトは一目散に村へ走った。
イリスはギリギリまで奮闘すると残った。
しかし、マコトには信じていた不運でもそれを凌駕するくらいイリスは強いという自信があったから。
子供を連れているため多少時間はかかったが追手もなく無事にマコトは村にたどり着くことが出来た。
村に入ると直ぐに村人に子供達を渡してマコトは引き返そうとした。
戦力にはならないがここで待つというのはマコトには出来なかった。
「俺の望みはイリスが戻って来ることだ。イリスの不運対俺の幸運プラスイリスの剣。どっちが力が強いかなんて誰が見たって分かる結果だろ。」
そう言葉にし森に目を向けた瞬間、まだ暗闇に包まれている森の奥に白い光が見えた。
マコトには直ぐにその正体が分かった。
「ホーリーライト…………か。」
その光はアデプトの使う魔法ホーリーライトではなくマコトの持っていたスマホのライトのライトだった。
持っていたのは勿論…………
「おーい。何とかなったみたいだよー。」
イリスがスマホを振りながら戻って来たのだ。
「ふーっ。何とか上手くいったみたいだな。」
「勿論!私の作戦だよ。」
「残党は?」
「2、3人逃げたかな?恐らく二人で奇襲をしたのはバレてないと思う。」
「そっか…………ああ疲れた!」
思わずマコトはその場に寝転んでしまった。
それを見てイリスは苦笑いした。
「ふふっ。お疲れ様。いい声してたよ。」
「迫真の演技だったろ?」
「最高の『ナチューロの大兵団だ!』と『武器の荷馬車がやられた!』だったよ。」
イリスが声真似をしながら言う。
そう。
あの混乱を更に加速させた大声は2つともマコトの声だった。
マコトは相手が混乱し始めた中に入り嘘も交え自分達が今より不利な状況であると思わせるために大声を上げていたのだ。
勿論ホーリーライトはマコトのスマホのライトをイリスが点けていたのだった。
イリスがスマホに興味を持っていたのでマコトは使い方を教えていてのだ。
イリスはやはり頭がいいのかぱっと覚えていた。
「サンキュー。イリスも最高の剣だったよ。」
マコトもイリスを称えた。
「とりあえず今後は?」
「んーとりあえず村への報告かな?」
「そっか。」
「うん。そう。」
マコトは星が満面に輝く空を見上げていた。
イリスはその空を見上げるマコトを無言で見ていた。
そしてそれはほぼ同時だった。
「「行こうか。」」
マコトは起き上がり二人は村へ報告へと向かった。
マコトとイリスの初の共同仕事いかがでしたか?まだまだまだまだ続きます。




