プロローグ
"⋯これで映ってるんだよな"
髭が汚く生え散らかった口元がカメラに映っている
"ははっ!映ってら映ってら! おーーい!"
男は全身が映る画角まで下がり、
大はしゃぎでカメラの前で身体を動かしていた
さながらバラエティ番組で有名人が街ロケ中に
奥の方で目立とうとしている通行人のようだ
"えー⋯これはなんだ。ちゃんと残せてるのか。"
男は天井を見上げながら少し考え込んでいる
恐らく「この映像は保存できているのか」と言いたいのであろうか
これはこの男が想定していなかったであろうが、
実際は、この映像は大手動画サイトにて
「生放送」されていた
しばらくの沈黙が続いた
恐らく画面に映るこの男にはこの映像が保存されているかどうかがとても大事なことらしい
夏の暑さが一服したものの、残暑抜けきらない今日
そこに映る男は
嘘みたいに年季の入ったマント
原型をとどめないくらい直されたズボン
タオル側に使っているくらい汚いトップス
所々穴の空いたヘルメット
まるで戦争から帰ってきた退役軍人のような姿である
あまりに見すぼらしく汚らしい格好のため
その男の格好が季節にそぐわないことに気づくのに
幾ばくか時間を要するであろう
"俺はあの街の出の人間だ"
先程までと打って変わって真剣な表情の男が語る
"俺の知る限り、あの街の出の人間を、街の外で把握してないから、俺が最初なんだろうよ"
男は少し目に涙を浮かべている
"あの街の真実を⋯そしてあの街で生きた奴らの話をする"
午後2時
生放送には視聴が「2」となっている
"俺は、神威って呼ばれてる"
"あの街で8人目の「目が見える」人間だ"
⋯




