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シルシナキセカイ  作者: 徘徊猫
 Wellcome to the underground
12/28

Smile faintly

 日記って、最初は頑張るけど徐々に書かなくなっていく…

 そして、大した内容もないから、見返して恥ずかしくなる

 暗闇に包まれた窓の外を、頬杖を突いてぼーっと眺めている。前世よりも明かりが頼りなくて、私の周りを仄かに包むのみ。

 動物の鳴き声、木々の擦れ合う音。それらについて記したこともあったが、生憎と今日は書きたいことが沢山ある。

 「……逆に、どこから書き始めれば良いかも分からないわね」

 この村では、一日の出来事を日記に書くことが習慣となっている。その理由は分からないが、上質な紙を生産する場所だから、そんな習慣が生まれたのかもしれない。……前世では、あまり日記を書くことがなかったから、今でも迷ってしまう。


 「うん、取り敢えずお婆さんの話と呪術について、軽くまとめましょうか」

 祖先の犯した罪は私たちにも引き継がれている。根源たる罪・神殺し、この原罪は生きる上で受ける四苦を飲み込む上での説話という側面がある気がする。しかし、その中身を私たちは知らない。神に逆らってまでも、楽を享受しなかった理由を。


 筆が動くと、自然と頭も動くものだ。勢いに乗せて、続きを進める。


 今日教えてもらった呪術。それは私たちドルイドに伝わる技術の一つで、一般に普及している魔法とは違い、呪術を使えるものは少ない。正確には、ドルイドほど呪術を上手く扱える者たちはいないそうだ。


 呪術はドミノ倒しのような……結果までの道のりを作る方法だ。相手の動きを止めたい、という感情がドミノを倒す指だとして、相手の姿と似たもの・影に杭を刺して縫い止める。

 ……ただ止めたいなら、手で相手を押さえ込むだけで良い。しかし、そんな力がない場合に、別のものを代替してドミノを積み立てる。

 力だけの問題ではない、わかりやすく説明すると、二人を取り押さえる力があっても、身が一つである限り、片方を捕まえたら、もう片方が手の届かない場所にいれば捉える事はできない。しかし、呪術なら余剰分の取り押さえる力を割いて、捉えることができるということだ。

 呪術は手間と用意に時間がかかるが、それさえできれば様々なことに手を伸ばせることが強み。


 どうやって呪術で取り押さえるかについては大事ではないので書かない。可能性を広げる力、手の延長とでも呼ぼうか。端的に言えば、呪術というパーツを噛み合わせることで、『できることが広がる』という一点が呪術の魅力ということだ。


 実際、父は呪術を狩りに応用して、複雑な罠を使うことがあると言っていた。父は強いから獲物が向かってくれば簡単に獲れるが、逃げられたら難しいそうだ。だから、逃げ場を抑える為に呪術の罠を張ってから獲るらしい。……今後は魚に転用されるのだろう。

 今思ったが、網引き漁を一人でやれると言った方が分かりやすかったかもしれない。




 ついでに軽くまとめておくが、お婆さんの言っていた類感呪術と感染呪術の違いは手段だけだ。

 類感呪術の代表例は、呪いの藁人形だろうか。相手に見立てた人形に釘を叩き付けることで、相手を苦しませる。

 感染呪術もまた、呪いの藁人形が分かりやすい。写真や髪の毛などの相手の一部を入れることで、呪いの人形を相手に近づける。繋がりの強化……呪いを相手に強く与えることが、感染呪術の本領と言えるかもしれない。




 「ふぅ……かなり書けたわね」

 コツコツと進めることは嫌いじゃない。特に、成果が目に見えるものは。


 お婆さんの話を自分なりの解釈して書いたこと以外にも、呪術のことで母に念を押されたりしたことから夕飯後のアリアのお腹がぷくらと膨らんでいたことまで、様々なことを書いた。

 ……このひと時を忘れないように。


 「フィーちゃん、いっしょに寝よぉー」

 今日も部屋に入ってきた来訪者に、私はため息をついて振り返った。

 「しょうがないわね……その前に歯は磨いたの?」

 いつも通り、つつがなく一日は終わりへと向かう。

 明日の私は昨日の私なのだろうか

 今日の私は一体誰になるだろうか

 私が私なのかも分からず、暗闇の道を進むしかない

 境界は曖昧で、手探りを繰り返すうちに一日は過ぎてゆく

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