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俺はドMに目覚めない   作者: 幸運を殺す者
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第三十九話 哀しみの炎

こちらを睨み付ける三百の眼光。

巨人は混ざり合い一つになったその体の、三百の腕を同時に構える。

その手の中には、光球とは違う。

鋭さを持った、まるで槍のような物を携えている。


それを見て翼を広げ、空へと飛び立つ。

しかし完全に飛行することは叶わない。

糸による補助を行いながら、滑空するようにして近づいていく。


空中ならば避けれないと思ったのか、光の槍の雨が降る。

移動に合わせてまるで銃弾のように降り注ぐそれを、糸を駆使しバレルロールをするように回転して回避していく。


全てを避けきってから、回避しながら巣のように張り巡らせていた糸の上に立って目線を合わせる。


それを見て、地団駄を踏み悔しがる巨人。


「まるで子供だな。」


再び巨人は三百の腕を構える。

同じように槍による攻撃を行うようだ。

好機と判断し、糸で空中ブランコをするように一気に距離を詰める。

だが獣化の影響か、蜘蛛の危機察知のような力が働き、途中で落下に移る。

地面に降りる寸前で、頭を光が掠めた。


巨人は三百の腕全てで槍を構えてはいるのだが、数本の腕でその槍を集合させ、火力を高めてから放っているようだ。


「ただくっついただけじゃないってことか。」


元々バラバラの三体だった巨人が、あえて一体に合体したのだ。

三体で囲むよりも、効率よくこちらを仕留めるためなのだろう。

そしてその仕留めるための方法の一つが。


「今の速い槍か。」


ただばら撒くのではなく、狙いを定めて不規則に槍を放ってくる。

その速さは目で追って回避するのでは間に合わない程。


目で見ていては避けきれないだろう。

いや、避けるのが間違いなのか?

光線は防げたのだ。

結晶での防御、試してみる価値はある。

掌に糸を張り赤い結晶を作り出す。

光が瞬いた瞬間、掌を前に突き出す。


結晶が割れる音と、手に伝わる焼けるような熱さ。

槍は何とか弾けたのか、少し後方の土を抉った。


「防げなくはない、がジリ貧だな。一気に近づく方が良さそうだ。」


糸で繭を作るようにその身を覆い結晶化、その後糸を強く張りパチンコの容量で体ごと巨人向けて打ち出す。

突然のことに巨人は槍を一気に放ってくるが、何重にもなった結晶を貫くことは出来ない。


足元まで近づかれたことに気づいたのだろう。

六本の足で蹴りを交互に放つが、当てずっぽうのそれでは、小さい少年の体を捉えるには至らない。


六本あるうちの一本に手を叩きつけ、そこから糸を足に張り巡らせる。

狂化と獣化の併用により、片手から糸一本の上限を取り払われたのだ。

まるで靴下を履かせていくかのように、その足を糸が包み込む。

そして一気に毒を張り巡らせ、結晶化させる。

自然と足にそれは食いこみ、千切れるようにしてその足は地面に倒れた。


痛みに怒り狂う巨人の声が響き、地団駄と共に生え変わる足。

三体分の生命力が備わっているのだ、再生力も並外れたものとなっていた。


「おいおい、お前もそうなのか?」


本質的には、ライフイズペインによる再生とは違う物である。

しかし、発動を自身の目で見ていない少年には同じものであるとしか思えなかった。


「そうか、お前も死にたかったのか。でもそれで・・・互いに苦労してるな。」


もう少年の心の中から、少女のための怒りは消え去っていた。

ただ、自身と同じ苦しみを持つその存在を哀れんでいたのだ。

本当はそうではないのに、巨人は生きようとする故に生命力を使い再生しているに過ぎない。

しかし少年は狂っていた。

目前で起きたそれを見て、自分の姿を重ねたのだ。


「あぁ、じゃあ殺してあげないとだな。」


気付くと泣いていた。哀しみの涙を流していた。

その感情は一気に膨れ上がり、自身のため、そして目の前の同類のために注がれていく。

少年の心は哀しみに支配されていた。


突如、ステータスが強制的に開かれる。

目を向けると一つのスキルが薄暗く光っている。

少年はこれに見覚えがあった。

今度は間違えない。

一瞬の時間も無駄にはせず、目の前の存在のためにその力を振るう。

少年の手がそっと巨人の体に添えられ、言葉が紡がれていく。


「Life is pain "The glory burn out"」


一瞬で、巨人の体を炎が走り抜ける。

しかし傍から見れば、決して燃えているようには見えない。

なぜならその炎は白い炎。

哀しみに包まれた炎は焼かれる者にそれを認識させない。

しかし、間違いなくその炎は燃え上がっていく。

やがてその超巨大な体を包み込み、じっくりと燃やしていく。

熱さを認識した時には既に遅い。

体全てに行き渡った炎は、消し去ることなど出来ない。

燃え、溶けて、持ち主を失った百五十ある頭が転がり落ちていく。

三百ある腕はもう抵抗を諦め、全て垂れ下がり死を待つのみ。

やがて全身を燃やし尽くし灰にした時、その炎は消えていた。


それと共に少年の涙も止まる。

一陣の風が吹き抜け、涙を乾かして灰になった巨体を吹き飛ばしていく。

預けていた体を失ったことで、そこから重さを持った何かが頭に落ちてくる。


それは白い半透明の宝石だった。

手で触れると熱く、鼓動を感じる。

もしかしたらそれは巨人の心臓だったのかもしれない。

一瞬で気づかないまま燃やし尽くされたことにより、死を気づいていないのだろうか、鼓動は止まる気配がない。

そして宝石を手にしてから胸が熱い。宝石同士が惹かれあっているのだろうか。

近づけると、琥珀色の宝石の上に吸い込まれるようにして取り込まれていく。

宝石は混ざり合い、琥珀色と白色の半分ずつになり動きを止める。


「お前も俺の友になってくれるのか。」


少年からしたら同じ苦しみを味わった者だ。

実際は違くとも、少年にとってはそうなのだ。


宝石に意識を取られていたが、我に返る。

周りを見ると燃えている最中に落下した頭部等があることに気づく。

その巨体故に気づかなかったが、頭は人間と同じような大きさだったようだ。


「これもギルドに納品しておくか。」


一つ一つを触り確かめ、灰になっていない頭を選びバッグに入れていく。

転送機能のおかげで、いくつ入れても満タンにならないので入れすぎてしまった感は否めない。

よくよく考えれば、これはギルドに送られているのだ。

今頃ギルドには生首が大量に転がっていることだろう。


冷静になり、ヘレナの存在を思い出す。

あの傷ではもう死んでいるだろう。

それを分かっていながら少女の元へと走る。

弔ってあげたい。そんな気持ちになったのだ。


「ヘレ・・・ナ?」


その体を預けていた木の根元には、誰もいなかった。

不意に肩を叩かれる。

振り返るとそこには、下半身を失ったはずの少女が、二本の足でそこに立っていた。

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