第四十話 巨人から引き継いだ物
「ヘレナ・・・足が・・・」
「うん。ナイがいなくなったあと沢山の水に包まれたの。それで気を失って、目が覚めたら生えてた。」
「生えた?・・・前見たスキルにそんなのは・・・」
「水の精霊王の贈り物、尽くす者に祝福をってスキルがあるの。今まで一回も発動したこと無かったんだけど、その効果みたい。」
「尽くすってのは、あの・・・精霊としてスキルを分け与えたからとかそういう?」
「うん…恥ずかしいけど、そう。スキルが発動した時って何となく分かるでしょ?」
「あの体が熱くなったりする感覚か、確かに分かるな。」
「だから、またナイに助けられた。」
そう言って両の頬に手を当て顔を紅く染めるヘレナ。
しかしはじめて自分の持つ精霊王のスキル以外の名前と効果を聞いた気がする。
もしかしたら条件は違えど、近い効果を持つ物もあるのかもしれない。
それと名前の件、前抱いた疑問が確信に変わる。
「やっぱあの女患ってやがる・・・」
小声で呟いたそれは誰の耳にも聞こえない。
噂好きの風に運ばれて届けられない限りは・・・
「あっ、ナイまずい!」
「ん、何が?」
「今日の寝床・・・」
そういえば拠点にしていた鉱山の洞窟は、ヘカトンケイルに破壊されてしまった。
つまり今日休む場所がない。
そのうえ既に太陽はその姿を隠し始めている。
探そうにも時間が無いだろう。
「今日は野宿だな。」
「ううっ・・・」
「木に糸を張っておけばバリケードになるから。」
「さっきので魔力ないんじゃないのっ!」
「あぁ、確認するか。ステータスオープン。」
Lv34 ナイ
年齢8
職業 冒険者
ライフ 85/85
魔力 120/240
攻撃 90
防御 76
魔法攻撃 0
魔法防御 0
素早さ 93
運 8
スキル一覧
・短剣装備時攻撃上昇Ⅱ・短剣装備時素早さ上昇Ⅱ
・短剣攻撃時攻撃上昇Ⅱ・短剣攻撃時素早さ上昇Ⅱ
・一対の刃 ・飛来刃 ・武器眷属化
・眷属武器召喚 ・眷属武器解除 ・離さない手
・血毒の防皮Ⅲ ・白光の巨腕Ⅲ ・糸製造Ⅲ
・毒製造Ⅲ ・狂化 ・獣化 ・ストリング
・闇の精霊王からの贈り物『ライフイズペイン』
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宝石を取り込んだからだろう、魔力が増えており約二倍に増えていた。
それとだ、やはりスキルが増えている。
白光の巨腕、ブラッドスパイダーの時はその特徴を持つスキルだった。
使うと腕が百本になるのだろうか。
考えただけで使いづらそうだ。
っとヘレナが目を点にして固まっている。
どうしたんだろうか。
「な、なん私より歳下っ!魔力ある!なんで!減ってない!」
「落ち着いて、一個ずつ答える。」
「・・・なんで10歳じゃないのに魔力があるの?」
「これのおかげだと思う。」
そう言って胸の宝石を見せる。
「どういうこと?」
「クラスホワイトの魔物を倒した時、宝石を落としたんだ。それがとある一件で体とくっついて、その時魔力を手に入れたんだよ。」
「全然わかんないけどわかった。魔力が減ってないのはなんで?」
「減ってないとおかしいのか?」
「獣化の代償で、発動時に残りの魔力を全部払わないといけないの。制御があれば解除時に払う事にできるけど・・・結局は払わないとダメ。」
「渡したのは狂化と獣化だけだし、どちらにせよってことか。狂化はどんなスキルなんだ?」
「獣化もそうだけど凄い強くなる。でも代償で、狂化中に魔物を倒してもレベルが上がらない。」
なるほど、つまり魔力が減ってない事自体がありえないということか。
しかし狂化について聞いたおかげで、今上がってるのは石像とトカゲと鳥で上がった分のレベルということもわかったな。
「魔力が減ってないというか残ってるのも、この宝石のおかげだと思う。
ヘカトンケイルからも同じように宝石が出たんだ。近づけたら取り込まれて混ざったみたい。
前までは最大120だったのが増えてるから。」
「全然わかんない!ナイの言ってることだから信じるけど!」
「まあとりあえず、今夜は安全に過ごせるって事だよ。」
スキルのごたごたで、夕飯の話が無くなったのは助かった。
ヘカトンケイルが出た時に邪魔だったからその場に捨ててきたのがバレずに済んだからだ。
糸を張りひとまずの安全地帯が出来た頃には、ヘレナは疲れていたのか眠ってしまっていた。
信頼してくれているのはありがたいが、ここまで来ると流石に困惑するのでやめて欲しいものだ。
地べたに横になり同じように眠りにつく。
ヘレナがお腹を減らして目覚めてしまい、お魚と騒がれることにはなったが、それはそれで楽しんでいる二人と共に夜は更けていった。
お魚騒動以外は何事も無く朝を迎え、まだ寝ているヘレナのために朝食の準備を始める。
と言ってもこの周辺でとれるのは魚しかないので、川へと向かう。
ここまで広ければどんなスキルでも影響はないだろう。スキルをうまく使えれば強い相手に本気を出させやすくなるのだ。
いざという時のため、魚を獲るついでに白光の巨腕のスキルを試しておこう。
「白光の巨腕。」
突如背中と肩のあたりがムズ痒くなる。
痒さが収まった時には、視界の両端に大人程の大きさの真っ白な筋肉質の腕があった。
「巨腕ってほどでかくはないな。」
しかし、まるで自分の腕のように動かすことは出来る。むしろこの腕は生まれたからあったかのような錯覚を覚えるほどには馴染んでいる。
単純に扱える腕が増えるスキル。
これは使いようによってはかなり使えそうだ。
「糸製造。おっこれは。」
意識して使ってみると両腕と巨腕、計四本の腕から糸を作り出すことが出来た。
これはかなり便利だろう。
「血毒の防皮。」
全身が赤黒い肉へと変質、巨腕の方は白と赤がマーブル模様で混ざり会うようにして変質している。
流石に別の魔物の力ということだろうか。
完全に混ざりあうことはないが同居しているような一体感を巨腕の方から感じる。
認めあった友二人、きっとうまくやれるだろう。
っと魚を取りに来たのだった。
血毒の防皮は解除し、自身の腕と巨腕とで糸を同時に作りストリングで編むようにして網を作る。
これが無意識に二本の腕で出来ていたあたり、狂化や獣化は潜在能力を限界まで引き出すことの出来るスキルということだろう。
しかし四本の腕で糸を編んでいくのは中々に繊細な操作を要求される。
一瞬白光の巨腕に力を入れすぎてしまったその時だ。
糸が千切れる音と共に肩がとても重くなり、立っていられなくなる。
あまりの重さに前方の川の中に倒れてしまった。
頭を動かして前方を見る。
そこには巨腕の名に相応しい、自身の体程の太さを持った腕があった。
「百本出た方がまだ使いやすいかもしれないな・・・」
ゆっくり力を弱めていき、最初の大きさに戻す。
腕に隠れて見えなかったが、魚が何匹か打ち上がっているようだ。
まさしく熊が鮭をとるような要領で水面に叩きつけられた腕が、偶然にも魚を捉えたのだろう。
「結果よければなんとやらだな。」
昨日の夜が抜きになってしまった分はこれで取り戻せただろうと安心しつつ、扱いの難しいスキルをどう使いこなしていこうと考えながら血抜きを行う忙しない朝となった。
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