本編終わって久々の更新
……翌日。
「おはよー」
「おはよー、闇代ちゃん」
いつもの朝。闇代と上風のハイタッチ。そこから少し離れたところで、ぐったりしている狼。
「どうしたの?」
「疲れた……」
その一言だけ返して、机に突っ伏す狼。すると闇代が頬を赤めて、
「狼君、昨日は激しかったから―――きゃっ!」
直後、狼は突っ伏したまま右ストレートを闇代の鼻へ直撃させる。いい加減、学習すればいいのに。それとも、彼に殴られたいのだろうか?
「うぅ……ちょっとふざけただけなのにぃ~」
因みに、昨日は格ゲーで遊んでいました。ええ、それはもう激しいボタン捌きでしたよ。まあ、最後は脱衣格ゲーに発展しそうになって、リアルに殴り合ってましたけど。そりゃ疲れるわ。
「……てか、今日も来てないんだな、天野」
教室内を見回して、呟く狼。そういうの、よく把握出来るよな。お前、案外まめだろ。
「あんたって、昔からクラス内の欠席者を全部把握してたわよね。だから小学生のとき、先生みんな、出欠確認はあんたに聞くだけだったし」
元々そういうタイプだったのか……。確かに、たまにいるよな、そういう奴。
「多分、一昨日から来てないと思うんだが」
「天野さんなら、紗佐が仲良くなかった?」
「そう思って昨日聞いたけど、知らないってさ」
「なら、先生にでも聞けば?」
それが確実だ。彼もそう思ったのか、軽く頷く。
「昼休みにでも聞いてくる」
「そうしなさい」
彼らの担任は、今日このクラスで授業をしないから、時間の空いた昼休みが一番都合がいいのだろう。
そこで、始業を知らせるチャイムが鳴った。
◇
……昼休み。
「引き篭もり?」
「ああ」
狼は、天野の欠席について聞きに、職員室に来ていた。そこで聞かされたのが、今の話。
「一応、家族に聞いてみたんだが、どうやら本人が部屋から出てこないらしい」
それに面倒臭そうに答えるのは、彼らの担任である春山。この人、最後に出たのいつだろうか?
「なんでまた……」
「知るか。大体、引き篭もりなんて理由が分かってもどうにもならん。そいつが外に出たいと思わんことにはな」
「けど、理由が分かればどうにか出来るかもしれない」
「おいおい、お前は引き篭もりの世話でもする気か?」
春山が、鼻で笑った。まあ、普通はそこまでしたくないだろうから、そう思うのも分かるが。
「やめとけ。あれは面倒、なんてもんじゃない。下手に関わるとろくなことにならないぜ」
「どういう意味だよ?」
狼がそう尋ねたものの、春山に教える気はない様子。真面目に答えたりはしない。
「どうしても知りたければ、お前の仲間を頼れ。俺はそこまで親切じゃない」
最後にはそう告げて、狼を手で払った。仕方がないので、彼は渋々引き下がることにする。
退室の挨拶だけして、狼は職員室を出たのだった。
◇
……放課後。
「おい、氷室」
「んー? 何さうるっち」
帰ろうとしていた氷室を、狼が呼び止めた。
「ちょっと、調べて欲しい奴がいるんだが」
「おぉっ! 久々に俺の出番か?」
狼の頼みに、氷室が目を輝かせた。そういえば氷室って、情報担当だったっけ。完全に死に設定で忘れてたけど。
「んで、誰を?」
「天野」
狼がそう答えると、氷室は一瞬硬直して、それから目を大きく見開いた。
「どうした?」
「……いや、何でうるっちが天野のことを?」
「あいつ、最近学校に来てなくてな。担任に聞いてもまともに答えないから」
そう言うと、氷室は顎に手を当て少し考えてから、
「それって、何を、どのくらい調べんの? 学校に来ない理由? だったら引き篭もりじゃね?」
「その場合、引き篭もってる理由だな。それが無理なら、理由になりそうな話とか」
「……っても、天野だったら寧ろ、引き篭もらないほうが不自然だけどな」
「どういう意味だよ? ってか、お前、天野と親しいのか?」
氷室の言葉を不審に思い、尋ねた狼。氷室は躊躇う素振りを見せるも、渋々といった感じでその問いに答えた。
「天野とは、小中と同じ学校だったんだ。だから、それなりに知ってる」
そうだったのか……初耳だな。
「そんなら話は早い。色々教えてくれ」
「―――分かった。けど、ここだとちょっと……」
あれ? 氷室が周囲を気にしている。一体どんな話をする気なのだろうか。
「分かった。なら、トイレでいいか?」
「何でトイレ?」
「闇代が入ってこないから」
まあ、あの子なら平気で入ってきそうだけど。入りづらい場所を選ぶのはありかもだ。
「了解」
というわけで、男二人で仲良くトイレへ行きましたとさ。




