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~後日談④ 首飾りの贈り物


 しばらく製作の考えにふけっていると、作業部屋の出入口扉のあたりで小さな声と物音が聞こえてくる……。


 ん……。なんだろう……。


 振り返ると、作業部屋の扉がわずかに開いている。


 扉の向こうに人の気配がする。数人いるようだ。


 扉の隙間からわずかに猫耳が見えている。ふさふさのしっぽもチラチラと見えている。

 

 ははーん。ミーアとイナリだな。


 更に、エルフ耳がちらりと見える。エミリーとミレアかな?


 マントの端や白いワンピースの裾などもちらりと見える。アリシアさんとルーナさんぽいな。

 羽帽子の羽部分もちらりと見える。シャンテがたまにかぶっている帽子っぽいな。


(ちょ……ちょっと、ミーア……押さないで)

(しーっ、トール殿に見つかるぞっ!)

(トールが作業をしてるのじゃ~。首飾りを作ってるのじゃ~)

(やった~、トールさんが作ってるのですぅ~)

(にゃ~、もう出来たかにゃ?)

(は、早く出来ないかな?)

(そ、そうだね……)

((ごくり……))


 皆のひそひそ声が聴こえてくる。

 首飾りの完成を心待ちにしている様子だ。


 これは……皆の期待に全力で応えないとな。


 よし! 頑張ってみんなのために素敵な首飾りを作るぞ!


 俺は苦笑いして、ふたたび作業に向かうのだった。




 

 ここ数日、皆は、暇があれば俺の家に遊びに来て、俺の部屋に入り浸っている。


 皆で家で食事を取り、くつろぎ、たわいもない話に笑い合う。平和な日々だ。


 俺は、皆との食事とひとときの会話を楽しみ、一日の大半は、錬金小屋に詰めて皆の首飾りを作っている。


 その間、皆は、リンと一緒に俺の広い部屋でゲームなどをして遊んだり、庭を散策したり、時折、東の山に山菜取りなどをして楽しんでいる。



 そして――数日が過ぎ。


 やっと、皆にプレゼントする首飾りがすべて出来上がったのだった。


 その日の夜の食事後に、みんなに、一人一人その首飾りをプレゼントすることにした。


 首飾りの効果は、全能力値+300は皆一律に付与されている。それ以外では、皆の個性に合わせて効果はまちまちだ。


 ミレアには、緑色を基調とした首飾りだ。宝石はエメラルドグリーンでまるで世界樹の色のように美しくきらめいている。装飾も世界樹をモチーフとして世界樹の模様が宝石を包むかのように台座に大きく描かれている。効果については、ミレアの場合「最大魔力量+50%」という規格外の効果が付いている。


 エミリーには、ミレアと同じく緑色を基調としているが、やや薄い緑だ。宝石はやや薄めのエメラルドグリーンだ。装飾は魔法陣のような結界を表す模様が刻まれている。見る角度を変えるたびに少し色が変わる美しい魔法陣だ。効果は、「魔力超回復」という凄まじい効果が付いている。魔力回復スキルの究極形が出来上がった。結界維持を支えるにはすごく役立つと思われる。


 ミーアには、ベージュを基調とし、やや薄い紫色のポイントも付けている。宝石はミーアの目の色のように明るいベージュ色で、見る角度を変えるたびにその色は微妙に煌めき美しく変化する。装飾は剣や様々な武器の小さな形が宝石の周りの縁に神秘的な古代文字のように刻まれている。効果は、「筋力+50%」という凄まじい脳筋効果が付いている。ミーアらしい効果だな。


 イナリは、やはり赤を基調としている。明るい赤と深紅の赤の二つの赤がアクセントとなっている。宝石はルビーのような燃える赤だ。宝石をよく見ると、赤の中に小さな太陽が入っているかのように力強くも明るい陽射しのような煌めきを放っている。効果は、「炎の効果2倍」という炎特化の凄ましい効果だ。もう、究極の "元初の炎" を操れるといってもいいのかもしれないな。


 アリシアさんは、シルバーを基調としてアクセントとして清廉な青色を付けている。宝石はダイヤモンドのように白く輝いている。見る角度を変えるたびに白い光の中にややブルーの輝きを放つ。非常に美しい宝石だ。装飾は、騎士の剣と盾の模様が小さく刻まれている。効果は、「体力+50%」という凄まじいスタミナと防御効果がついている。


 シャンテは、黄色が基調だ。黄色と黄金色の二つが絡み合い上品な感じの仕上がりになっている。宝石は「キャッツアイ」に似ているが、強い黄色と黄金色が更に綺麗に輝いている。これも見る角度を変えるたびに、同じ黄色や黄金色でも多彩な変化が見られ、不思議な美しさを持っている。装飾は、台座に糸のような細い線が縦横無尽に走り回り、繊細かつ上品な美しさを奏でている。効果は「敏捷+30%、幸運+20%」というシャンテらしい効果が付いている。


 ルーナさんは、やはり月光の淡い色を基調とした。シャンテの色彩とやや似ているが、こちらはまさに月光の光そのものだ。宝石もまさに月光色といった神秘的な美しさだ。装飾は、宝石を中心として台座に三日月、半月、満月といった少しづつ月の満ち欠けの模様がいくつも刻まれている。神秘的で非常に美しいデザインになっていると思う。効果は、「精神+50%」が付いている。精神特化……なんとなくルーナさんらしいな。


 リンは、リンの好きなオレンジ色を基調としている。アクセントとして、これもリンの好きな水色と緑色も付けている。まるで太陽が草花を優しく照らし、水で成長するようなイメージをモチーフとしている。宝石はオレンジ色を基調とし、見る角度を変えるたびに緑色や水色の煌めく光が見え隠れしている。これもまた非常に美しい宝石だ。装飾は、世界樹の枝やつる草模様が台座に刻まれていて神秘的だ。効果は、「植物魔法Lv10」という不思議な魔法効果が付いている。世界樹の守り手として、聖女らしいスキルなのかもしれない。


 これら、皆それぞれの個性に合わせて付いたスキルや効果は、俺のイメージと彼女たちの持つ女神の加護が合わさって、自然と付いたもののように思える。錬金術は、ある程度自分の意図したものを付与させることが出来るが、実際は出来上がるまでどんな効果が付くか分からない部分もあるのだ。今回は、皆それぞれ個性にあった素晴らしい効果が付いたと俺は思っている。



 皆にそれぞれの首飾りをプレゼントする。


 皆全員、目の色を変え、大喜びだ。


「わぁー! 奇麗な首飾り! 世界樹の模様が描かれてるよ! トール、ありがとう!」

「わぁ……奇麗な緑色の宝石……色まで変わるわ! それに、この魔法陣のような装飾も素敵だわ! トール、ありがとう!」

「にゃー! 奇麗な首飾りにゃー! 模様もかっこいいにゃ! トール、すごく嬉しいにゃ! ありがとにゃー!」

「赤い奇麗な宝石なのじゃー! わらわの好みの首飾りなのじゃ! ありがとうなのじゃ! トール!」

「と、トール殿! こ、こんな素晴らしい首飾りを……本当にありがとう! 凄く気に入ったぞっ!」

「トールさん! すごく嬉しいのですぅー! ……奇麗な宝石、見る角度を変えると色が変わるのです! 装飾も綺麗なのですぅ!」

「なんて綺麗な首飾りなのでしょう! 月光のような宝石に、月の満ち欠けの装飾……素敵ですわ! トールさん、ありがとうございます!」

「お兄ちゃん、最高の首飾りだよ! 私の好きな色が全部入ってるよ! それにすごく奇麗……。お兄ちゃん、ありがとう!」


 大喜びで首飾りを身に着ける皆。


「おお! みんな! よく似合ってるぞ!」


「「「トール! ありがとう!」」」


「にゃにゃ!? 何だか筋力が馬鹿みたいに上がった気がするにゃ! すごいにゃ!」

「わ、私は体力が馬鹿みたいに上がった気がするぞっ! す、凄いぞっ!」

「ミレアは、魔力量がすごく上がったよ!」

「わ、私は……魔力回復力が、とてつもなく上がったような気がするわ!」

「わらわは、炎の力が倍増したのじゃー! これは凄いのじゃー!」

「私は、敏捷が、かなり上がったのですぅ! 裁縫力が増したみたいです! それと幸運も上がった気がするのですぅー」

「わ、私は……精神力が跳ね上がった気がしますわ! 占いの力が増した気がします……素晴らしいですわ!」

「こ、これは……私は、なんか植物魔法? とかいう魔法を使えるみたい! お兄ちゃん、これすごいよ!」


 皆が首飾りの美しさとそれぞれの効果に感嘆し喜んでいる。


 いやー。みんなどうやら気に入ってもらえたようで良かったー。

 喜んでくれると俺も嬉しい。


 こうして、賑やかな喜びの中で夜が更けていくのだった。


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