第7話
1週間後。
「……どうかな?」
曲が終わると、私は緊張した面持ちでウルカちゃんにそう聞いた。
ウルカちゃんは私の部屋のスピーカーの前で正座して目を瞑っていた。
「うん……すごい。ユカPさん……完璧だよ……」
半ば放心した状態でウルカちゃんは口を開けた。
「よかった。ヒトの歌のミックスは初めてだったから時間がかかっちゃってごめんね。じゃああとはMV動画だね」
私はパソコンの方を見て、メールを見る。
MV動画についてももう依頼済みだ。
ユカP時代からお世話になっている人。
久しぶりに連絡しても、快く対応してくれた。
むしろ久しぶりだからってサービスもしてくれた。
『ユカPさんがまたこっちの世界に戻ってきてくれて嬉しいから』って。
「あ、ウルカちゃん。もうメール来てたみたい」
メールの中にある動画ファイルをダウンロードすると――。
「うわ……すげぇ。かっこいい……おしゃれだ」
「でしょ? この人のイラスト、好きなんだぁ」
動画の構成は本家――『トウキョウ・エロティカ』と同じ。
けれど、イラストは本家とは違い、ウルカちゃんっぽいかっこいい女の子になっていた。
私のMVだと確か可愛いお姉さんだった気がするな。
ありがたい。
「じゃあさっそく曲と合わせちゃうね」
私はパソコンを操作して、動画と曲を合わせてエンコーディングする。
ここら辺はもうほぼ作業だ。
「すげぇ……かっこいい……」
後ろでウルカちゃんが感嘆な息を漏らしているのがわかった。
確かにそういう気持ちになるのもわかる。
私も初めて曲を合わせた時は感動したものだ。
「ね。かっこよく仕上がったよね」
「いや。違うって。ユカPさんが」
「! 私が?」
「こんなさらっと歌ってみた動画を作っちゃうなんてかっこいいなって」
そういうとウルカちゃんは私の肩に両手を乗せる。
「はは……ま、まぁ慣れだよ。慣れ」
なんとなくだけど、最近、ウルカちゃんからのスキンシップが増えたような気がする。
距離が近くなったというか。
それに――――。
「ねぇ。ユカPさん」
ウルカちゃんが私の耳の前で囁く。
私の心臓が高鳴る。
「な、なに?」
「やっぱり好きだなぁ……」
「――ッ!! だ、だから曲ね!? 主語つけて! ね!」
不覚にも赤面してしまった。
あの一件以来、ウルカちゃんはことあるごとにこうして私をからかってくる。
「ほら。冗談やめてよ。もう動画投稿しちゃうよ!」
カチカチッと動画配信サイトを開き、動画をアップロードする。
アップロードが完了するまでにまだまだ時間がかかる。
「うーん。休みだし、この時間だから普通に投稿しようかな。
ウルカちゃん。リンク送るからつぶやきの準備しておいて」
「え? あ、うん。わかった」
私は慣れた手つきでリンクをウルカちゃんに共有して、自分のアカウントにもログインする。
こういうのは初速が大事。
人生で一回しかない初めての投稿なんだ。
派手にいこう。
動画のアップロードが完了した。
概要欄を入力してサムネを貼り、必要最低限の入力を終える。
「じゃあ投稿するよ」
私はカーソルを投稿ボタンに移動する。
するとおもむろに後ろから腕が伸びて、マウスを握る私の手の上にウルカちゃんの手が乗った。
驚いてウルカちゃんを見ると、ウルカちゃんは私の顔を見て微笑んだ。
「せっかくなんだ。一緒にやらせて」
「…………そうだよね」
ウルカちゃんの気持ちはよくわかる。
私はその手を受け入れて微笑んだ。
「あ、あと。ユカPさん」
「なに?」
「さっきの言葉、冗談じゃないから」
「――――ハッ!? ハァァアア!!??」
「投稿しまーす」
カチカチ。
私が動揺している間にウルカちゃんがマウスをクリックし――。
――――世界に私たちの作品が解き放たれた。
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