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転移大学生のダンジョン記~拳一つでフルボッコだドン~  作者: 如月 燐夜
四章 攻める者と護る者
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勇者、思考の坩堝に嵌まる

アリシア、ユキヤ視点でお送りします。




エルフの里_アリシア


ティアちゃんが突然消えた後、私はブルースちゃんから連絡を受け保護したという連絡を受けたのは成人くらいのソラト君と同じ黒髪の普人族の男の子と、赤い髪の普人族の女の子、橙髪のハーフエルフの女の子、それに紫髪の普人族の女の子…あら、この子少し魔族の血が混ざってるわね…けどそこまで遺伝はしてないみたい。


お供にヒューイとリラを連れ、寝かされている家へ私が辿り着くと男の子が目覚め、その後に赤髪の子、橙髪の子が起きた。


「気が付きましたか?事情はブルースちゃんから聞いています。」



「貴方は…?」


男の子は混乱している様子で頭を抱え踞っている。


「ユキヤ…!」


赤髪の子が腕に抱き着き、警戒した表情をしている。


橙髪の子は状況が理解出来てないみたい。


「あれ?ワタメは…?」


ワタメ…もう一人の紫髪の子かしら?


リラに聞くと熱を出し、体力、魔力の消耗が激しく、奥で寝かせていると報告を受けた。


私は素直にそれを伝える。


「紫の少女なら熱を出し体調が悪いみたいなので休ませています。申し遅れました、私はアリシア。エルフの里長を務めるものです。」



「貴方が里長?でも四ヶ月前里を訪れた時は男性だったような…」


「貴方が会ったのは私の父でしょう。父は三ヶ月前、魔人に殺されました。娘の私が跡を継ぎ里長を務めています。リラ、皆さんに温かい飲み物を用意してあげて?」


かしこまりました。と言葉を残し、リラは部屋を出た。


「それは…辛いことを思い出させてしまってすみません…その魔人は?」


「いえ。お気になさらずとも私は平気よ。彼が…貴方と同じ髪と瞳を持つ方が助けて下さいましたから。」


私の言葉に橙髪の子以外の二人が大きく目を開け驚いている。


「その人は今何処に?もしかしたら同郷の者かもしれません!あ、名乗ってなかったですよね?俺はユキヤって言います。こっちは赤髪がトト、橙髪がネムって言います。」


ユキヤ君はソラト君の事が気になるのか早口でそう言った。


ソラト君の事は王国の人には内緒ってことになってるけど、これくらいなら話しても大丈夫よね?


その時、ブルースちゃんから連絡が来た。


この際だから聞いちゃいましょう。


ブルースちゃんの名前も出しちゃったけど…平気かしら?


まだ移動中だけどソラト君の事を聞かれたらスカイって偽名を伝えれば良いのよね?


私が迷っていると、部屋を出ていたリラが戻ってきてお茶を出した。


「お待たせしました、どうぞお飲みください。」


なんて良いタイミングで来たのかしら。


流石、長年里長の家で給侍をしていたサラの娘ね!


もしかしたらタイミングを見計らっていたのかもだけど。


「まずは温かいものを飲んで落ち着いてから話しましょう?ね、ユキヤ君。それとも勇者様とでも呼んだ方が良いかしら。」


さて、ブルースちゃんからどの程度話して良いのか聞いたし彼の質問に答えるとしようかしら。


私はからかう様に笑ってユキヤ君の反応を楽しんだ。



▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼


同場所_ユキヤ


何で俺が勇者だとバレたんだ?


俺の素性は何も話しては居ない筈なのに…。


もしかしたらこの里を救ったっていう人が何か知ってるのかもしれない。


出されたお茶を飲みながら俺は考える。


あ、これ美味しいな。


緑茶に似た味がする。里を出るときにでも少し分けて貰おう。


俺はニコニコと微笑むアリシアさんにどう切り出すか悩んでいた。


「ねぇ、ユキヤ。貴方が何をそんな悩んでいるの分からないけど、大体分かるわ。多分あれでバレたんじゃないかしら。」


トトが小声で俺に話し掛けてくる。


壁に立て掛けられた聖剣と聖鎧を指差しながら。


クソッ!それは盲点だった。


少し考えれば11才の子供でも分かる事なのに何故気付かなかった?


「ユキヤ君、どうかなさいましたか?」


「い、いえ…あ、あの!」



いや、それほど齎された情報に焦っていたのだろう。


黒髪、黒瞳の、彼と言っていたから男だろうな。


その人はこの世界に来てエルフの里をまもったんだろうな。


それが三ヶ月前と言う話だから今頃、クロッセアか、帝国、ドワーフの地帝国家、翼人の浮遊島辺りに居るのだろうか?獣王国も有りそうだな。


このフェール大陸に既に居なくてとなりのガトラン大陸って可能性もあるな…。


もし俺の仮説が正しければ正式な召喚ではなく、転移、もしくは転生って可能性もある。


そしたら選択肢は幅広い。


会える確率も低い。



地球の人かな?もしそうならアジア系の人種だろうな。


会いたい。会ってどんな冒険をしてきたのか話が聞きたい。



「幾つか質問させて貰っても良いですか?」


「ええ、答えられない事もあるけど可能な限りは答えるわ。」


「この里を救った人は今何処に?」


ニコニコしていた表情を一瞬だけ崩したがすぐにアリシアは戻した。


吸い込まれそうな金色の瞳に俺を写し口を開く。



「ごめんなさい…彼の事は話さないって約束なの。だから私が言えることは何もないわ。」


「そう…ですか…。せめて名前だけでも教えてくれませんか?」


縋り付く様な思いで俺はそう尋ねる。


頼む…日本人で会ってくれ…!



「ええ、ええ…あら、話して良いの?分かったわ。ごめんなさいね、私もどこまで話して良いのか分からないけど、その質問には答えられるわ。彼の名前はスカイって言うの。」


何やら腕に巻かれた青いプルプルした時計?と話していたアリシアさんがその人の名前を告げた。


この世界に腕時計なんて有ったっけ?


しかも、なんか日本に居たとき、見覚えというか既視感が有るんだよなぁ…児童向けアニメで見たことが有るような…


スカイ…か。


この騒動が終わったらクロッセアにでも行って冒険者ギルドで問い合わせてみよう。


「有難うございます。あの…その腕に巻いてる物ってなんですか?」


そう聞きながら鑑定する。


が、鑑定が弾かれた。


だが時々動いてるのを見るに生物なんだろうな。


すごく気になる。


スカイさんって人が与えたものなんだろうな、きっと。


「これは…あら、言っちゃだめみたいね。ごめんなさい、彼の秘密に触れる様な質問には答えられないわ。」


「分かりました。次の質問です。さっき言ってたブルースという人は俺たちを助けてくれた青い髪の人と同一人物でしょうか?」


「それは答えられるわ。答えはイエスよ。それにもうすぐ貴方達を襲っていたエルフを連れて戻ってくるらしいわ。」


マジか!それは助かる。


そのブルースって人から何か話を聞けないだろうか。


「只今帰還したでござる。」


「あら、ブルースちゃん、早かったわね。そちらの二人は初めましてかしら?ブルースちゃんに似て可愛いわねーー…嘘!クリマにソルダじゃない!」


思考しているとすぐにブルースという人が戻ってきた。


両脇には簀巻きにされたクリマとソルダを抱え、部屋に入ると二人を下ろした。


アリシアさんが後ろに控えていた二人に指示を出し、ベッドに寝かせる。


その後ろから似た姿の黄色い髪の人がまた似た赤髪の人を抱えている。


黄色い髪の人は赤髪の人を床にぶん投げた。


「おや、無事に里へ流れ着いた様でござるな。その様子から察するに元気そうで何よりでござる。」


「流石お姉さまです!人助けをなさるなんてお優しいお方。」


「そうでござるか?キーちゃん、申し訳ないが今はこの御仁と話すので少々待っていてほしいでござる。」


「承知しました。」


口調が少しおかしいな…


ござるって…この人の知り合いか仲間に日本人か日本に縁がある人物が居るのは間違いないだろう。


黄色い人は何故かすごく落ち込んでいる様だ。



「いえ、あの時は助かりました。まずはお礼をさせて下さい!助けていただき有難うございます。その二人も俺の仲間なんです。突然様子がおかしくなって戦えない状況だったので…」


「気にしないで良いでござるよ。この御仁らは精神汚染か、その類いの魔法を施されておった様でござるな。多少荒療治だが拙者が治癒しておいたでござる。」


自分の事を拙者って表したぞ?


絶対日本人が知り合いだろ、これ!



「あの…先程から拙者とかござるって言ってますけど、知り合いに日本の方が居たりとかします?」


勇気を出して聞いてみる。


さて、どう出る?


「主殿のことでござるか?拙者にそのことを話す権限はないでござるが拙者の領分で問題なかろう。その質問には肯定するでござるよ。」


マジか!肯定するってことは認めたって事だよな!


主殿ってのは少し引っ掛かるけど、この人の雇い主とかそんな感じだろうな。


「じゃ、じゃあ、その主殿って人とスカイさんって同一人物ですか?」


俺は逸る気持ちを抑えながら尋ねる。


ブルースさんは肯定も否定もしない。


黙秘って事か。


「すまぬがそろそろ全線へ向かい負傷者の治癒をせねばならない。分身体だけでは追い付かない様なので申し訳ないが失礼するでござる。」


「お姉さま、お供します!ピー、いつまで寝てるの?」


「んー?ここどこだー?あ、待ってー!」



「あ、ちょっと待ってくれ‐‐行っちゃったか…分身体?とか言ってたよな?」


どういうことだ?鑑定も弾かれるし、色々謎が増えてくばかりだ。もっと聞きたい事があったのに…


「あら?言ってなかったかしら。ブルースちゃんは元魔物よ。種族は言えないけど。」


「ま、魔物…?ってあの?え、えぇーーーー!?」


俺の絶叫がエルフの里に響き渡ったのだった。


明日はセレナ、ユリアン視点になります。


次回 セレナの覚悟、ユリアンの葛藤 お楽しみに!



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