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転移大学生のダンジョン記~拳一つでフルボッコだドン~  作者: 如月 燐夜
四章 攻める者と護る者
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守るべき者のために

ユキヤ視点です。

俺はユキヤ、平凡な高校二年だった。


ある日突然、不思議な光に包まれて異世界に召喚されるまでは…


別に前の世界に未練はない。ボッチだった俺は話す相手も居らず、学校では適当に授業をこなして放課後はコンビニでアルバイトかゲーセンに通う日々。趣味のラノベを読み漁っては妄想するという何の面白味がない平凡な人生を送っていた。


突然だが、それは必然だったのかもしれない。高校二年の終わり、春休みの終わり頃か。


アルバイトの時間になったので家を飛び出そうとしたら突然俺は光の柱に包まれて広い部屋にやってきた。


「おお、勇者様が召喚されたぞ!」


「無事成功したのか!」


などという声が響く。何これ?妄想のしすぎで夢でも見てるんじゃないか?周囲を見ると見慣れない服装の人々に見たことも無い装飾品を身に付ける北欧系な人達。最初は自分の目を疑った。彼らの話す言葉は俺の居た地球の言葉ではない…なのに、自然と理解することが出来た。


「えっと…ここはどこですか?貴方達は一体…?」



「勇者様が混乱なされているぞ!誰か説明をして差し上げろ!」


野太い声が響く中、一人の少女が俺に近付いてくる。



「初めまして、私はアルテシア。この国の第二王女です。勇者様、貴方様にお会いできて光栄です。」


アルテシアと名乗った少女に俺は抑揚なく淡々と述べられたその言葉に張り付けた様な仮面の様な笑み…機械の様だなと印象は持った。


だけど、美しい…俺が今まで見てきたどんな女性、モデル、女優、アイドルを並べても月とすっぽんだ。


月並みの言葉しか浮かばないけど言葉では形容しがたい美しさをアルテシアに感じた。


それからアルテシアにこの世界の歪み、魔物や魔族について教えられた。


人々を脅かす巨悪を見過ごせない。


時には涙を流しながら語られたアルテシアの言葉に俺はそう思った。


「俺に任せて下さい!この国は、いや世界は俺が守ります!」



漫画もゲームもない世界だけど俺はこの世界で生きていこう。そう思ったんだ。



▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼



「ユキヤー!どうしたの?」


ネムが思考の海を漂っていた俺に声を掛ける。


「いや、昔の事を思い出していただけだよ。何か有ったのか?」


そう、この半年間、俺は生きる術を学んだ。この国の人達は皆良い人ばかりだ、そんな人達がいるこの国を俺は守りたいとさえ思っていた。


良い師匠にも出会えたし、王様や王妃様、その子供の王子や王女も皆俺に優しくしてくれた。大臣や貴族も俺に沢山の物や情報を与えてくれたし。


けど、分かってるんだ。アルテシアが俺に向けたあの笑顔は偽物なんだって。王様に王妃、王子や王女達が俺に優しくしてくれたのは打算でしかない、貴族達のくれた物だって顔を繋ぐ為の代価だと分かっている。


自分で言うのもなんだけど急成長をする俺を一人の【人間】ではなく【兵器】として見てるんだ。全て師匠…マルスさんが教えてくれた。俺の弱さも甘さも脆さも含めて全部。あの人と目の前の三人の少女しか俺は信じられない。


「あのねー!マルスおじさんが近付いてくるよー!ワタメが関知したってー。」


「師匠がか?何か聞いてるかトト?」



「私も知らないわ。父さんがなんで此処に近付いてくるのか。」


師匠の娘であるトトに聞いてみるも知らないという。


「ユキヤ。来る。」


言葉少なめにそう告げたワタメの視線の先には師匠が立っていた。



「いよぉー、バカ弟子!魔物殺しまくってるか?」


「師匠ご無沙汰してます。」


俺は頭を下げる。この人には全く以て頭が上がらない。気のぬけた声をかけてきたが、この異世界に来た俺に常識や戦い方を教えてくれたのは目の前に居るミンストレイル王国大将軍、英雄マルス・ティーベントさんだ。


大柄な体に短く刈り込んだ赤髪に額から左目に掛けて二本の縦傷がある。見た目の厳つさとは裏腹に話しやすくて優しい人だ。



「トトちゅわぁ~ん!元気してましたかぁー?パパでちゅよー!」


「うざいッ!あっち行ってよ!」


そして大の娘好きでもある。愛娘トトに顔面に蹴りを入れられながらも嬉しそうにしている姿を見るのはあまり慣れない。


「それで師匠、何か有ったんですか?こんな所まで直々に足を運ばれるなんて!」


俺は話を戻す事にした。師匠の顔を見た時ただならぬ気配を感じたからだ。


「あぁ。ついにおめぇに指令が下った。森のエルフの集落、それとクロッセアを落とせだとさ。おめぇの力を隠し通すのもそろそろ限界ってこった。すまねえ、上の決定だ…!」


上の決定…それはつまり王様や各大臣が決定したということだ。俺は人を相手に戦えるのか?


「そんな…いえ、こうなることは分かってました。師匠は御同行して下さるんですか?」


「いや、俺は立場上動けねえ。エルフの里まで着いてくが制圧したら王族や貴族どものお守りだ。すまねえ…」


大きな体を折り謝罪してくる師匠。言葉足らずだがその言葉には重みがあった。



「いえ、良いんです。こうなることは予め師匠から聞いてたじゃないですか。何も謝ることなどありませんよ!頭を上げてください。」


俺は今出来る精一杯の笑顔を浮かべる。この人は…優しすぎる。


「バカ弟子…いや、ユキヤ。お前には俺が教えられる精一杯の事を全て教え込んだつもりだ。もう十分俺より強ぇ筈だ、隠してたんだろうが俺にはお見通しだ。だが…お前が望むならトト達を連れて逃げ出してくれないか?」


まただ。何度もこの話はした。優しすぎるから俺を戦闘から遠ざけ国を出て慎ましく生きろ!と何度も言われた。だから俺は何度目かも分からない同じ言葉を返す。


「まだまだ俺は未熟者ですよ。だからこの戦争が終わったらもっと沢山師匠に教わらなくちゃいけません。俺は逃げない。さ、行きますよ!」


「はっ…!偉そうな口叩きやがって…!ぜってぇ死ぬな!生きろよ?」


「俺を誰だと思ってるんですか?英雄マルスの弟子ですよ?必ず生きて帰る!」


そう、俺はこの国で生きていく。師匠と三人の妹達、トト、ネム、ワタメを守らないと。何も持たない俺に沢山のものを教えてくれたこの四人を守る為に。



次回はソラト視点に戻します。


ここでキャラ紹介をば…!


ユキヤ フジシロ

藤代雪哉 17才 ミンストレイル王国勇者


王国の召喚によりミンストレイル王国に転移した少年。

召喚される前は適当で怠惰な人生を送ってきたが

召喚され様々な悪意に触れ、英雄マルスに何度も窮地を救われる。

また強さを隠したり、王家や貴族の思惑に気付かない振りをしており、その頭脳はそこまで悪くはない。

突然異世界に飛ばされ、孤独を感じた彼のその人格は脆く拙いものとなったがマルスとの修行により明るさを取り戻した。

三人娘に翻弄されながらも温かく見守るイエスロリータ、ノータッチの精神を持つ紳士。

顔は中の上、癖毛と目元のほくろが特徴。性格は大胆で正義感が強い。


マルス・ティーベント 35才

ミンストレイル王国軍騎士団長 英雄


十年前に起きた魔物の大氾濫に対し祖国ミンストレイルを救った若き英雄。

その大戦により多くの上司、部下を失い心は壊れた。

左目の傷はその時の名残である。

妻を氾濫戦で亡くしており、忘れ形見である愛娘トトに生きることの大切さを教えられ希望を見出だす。

後妻は居るが関係はあまり良好ではない。

過去の自分とユキヤを重ね彼を鍛え上げることにした。


トトレニア・ティーベント 11才

ミンストレイル王国勇者パーティ一員


ユキヤのパーティ内の三人娘では年長者である。

まだ幼いながらも母から美しさを、父からは深紅の髪色を受け継いだ。

年頃なのか、ユキヤにどう見られているのかを常に気にしてしまうおませさん。

共に過ごすうちにユキヤの事を兄の様に慕うが周りからすればツンデレ丸出しである。その槍裁きは父ゆずりなのか熟練の域に達している。

癖なのか、未だにおねしょをしてしまう。


ワタメ 9才

ミンストレイル王国勇者パーティ一員

ユキヤに買われた元奴隷の娘。物静かだが毒舌である。

奴隷から解放してくれたユキヤを尊敬しており将来は妻になりたいと躍起になっているが、全く相手にされてない様だ。

膨大な魔力をその小さな体に内包しており、どんな弱い魔法も倍化してしまう。

ワタメという名は本名ではなくユキヤによって名付けられた。



ネム 7才

ミンストレイル王国勇者パーティ一員


エルフの血を1/4引く幼い少女だが、弓の腕前は一人前。

王都の貧困街で倒れていた所を偶然通りがかったユキヤに救われてから行動を共にしている眠そうな目をしているが本人はしっかりと開いてると豪語する。

欲望に忠実なまだまだ甘えたい盛りである。



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