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転移大学生のダンジョン記~拳一つでフルボッコだドン~  作者: 如月 燐夜
二章 求める者と授かる者
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デートの下準備~セレナ・クッコローゼの場合~

久々のセレナ視点です。

~セレナ視点~



あぁ、今日はこれから旦那様とのデートだ。デートなんて生まれて22年間したことないからドジをしないか不安で仕方ない。何より私の恥は旦那様の恥、ソラト殿に恥を掻かせる訳にはいけないので重圧に押し潰されそうだ。


「デート…か…。ふふっ…うふふふふ」


さっきからずっとこの調子である。すれ違う隊員からは気味悪がられているがそんなこと知らん!私は楽しみで楽しみで仕方ないのだ。


朝から隊員連中を鍛えていたが私は今日休みとなっている。だが何もしないで居るよりは体を動かしていたいので午前中だけ着いていく事にしたのだ。


「隊長!頑張ってくださいね!」


「あまり難しく考えることはありません。セレナさんらしく居ればソラト様も目を向けてくれる筈ですよ!」


アンリが私にそう助言してくれた。経験者の言葉は身に沁みる。


「ああ、それじゃ後は頼んだぞ。怪我なく無事に戻ってこい。」


「「「了解!」」」


私はダンジョンを後にして宿へと戻った。くぅ~、なんだこの高揚感…!今から楽しみで仕方ない。早く、早くソラト殿に会いたい…!



湯浴みをして汗を流して部屋に戻ると一着のドレスがベッドに掛けてあった。


「これは…ソラト殿の仕業か!味な真似をしてくれる…。」


ドレスの横には羊皮紙が置かれており六時になったら迎えを寄越すのでそれを着て待っててくれと書いてあった。白の袖無しのドレスだが金と銀の刺繍が入っており美しい。手に取るとなめらかな肌触りで高級なものだとすぐにわかった。


「私にこれを着ろと…」


湯上がりの簡易な服を纏った私は鏡越しに自分の体を見る。見事に割れた腹筋、腕は普通の女からしたら太く引き締まっている…。


「こんな体ではソラト殿に可愛がって貰えるか不安だ…」


下着は何が有っても良いように最高級のものを密かに作らせて準備しているが体はどうにも変えようはない…いや、ソラト殿なら多分…などと淫らな妄想をしながら時間だけが過ぎていく。


私は時間をもて余したので読書をすることにした。実は私は本が好きで寝る前によく読んでいる。中でも愛読書であるエクレア・フランドール先生の【恋は猪突猛進シリーズ】を片手に優雅に午後を過ごす。


「なるほど…約束時間にわざと遅れて相手を焦らす。エクレア先生は策士だな…!」


書にはこう書いてあった。


〈初デートの時は敢えて遅れて合流する事で相手の会いたい欲を掻き立てる。そうすることで相手は何があったんだろうと勝手に考えるのでプラスに働く可能性がある。気を付ける点は手を振りながら近付き息を切らしながら登場すること。ここで堂々と徒歩で向かっては逆に嫌悪感を抱かれる可能性があるので要注意。〉と書かれていた。私は感心しながら紅茶を口に含む。時計を見るとあと一時間しかない。早く着替えなくては…!


「うーむ…腹筋が……」


着替えるまで読書に夢中で忘れていた腹筋のことを思い出す。憂鬱だ…だがこのまま立ち尽くしていては仕方ない。覚悟を決めて私はドレスに袖を通した。


「まぁ…似合わなくはない…のか?」


その時私の部屋をノックする音が鳴った。返事をして鍵を開けるとアンリが立っていた。


「良かった。まだいらっしゃいましたか。そのドレス凄くお似合いですよ?セレナさん肌が白いから白いドレス似合いますね!」



「むぅ…そうか?だが女らしくない体だから折角のドレスが台無しになってないだろうか?」


体にフィットするような素材なのでどうしても腹筋が浮いてしまう。


「そうですね…あ!ちょっと待ってて下さい!」


アンリはそう言うと部屋を出て自室へと戻りすぐに戻ってきた。



「これを羽織れば少しは隠せるのではないでしょうか?紺なら隊長にもドレスにも似合うと思いますよ!」


アンリが持ってきたのは紺色のストールだった。長さは腰の辺りまであり、端と端を結ぶところにリングがあり調節出来るようだ。


「アンリ、良いのか?」


「ええ、セレナさんに差し上げます。私は色違いでもう一枚持ってますので」


「すまない!恩に着る。」


「いえ、セレナさんには日頃からお世話になってるのでそのお礼です。あ、靴はどうされますか?」


「あ…」


私が持ってるのは軍用の編み上げブーツだけであり貴族が着けるような上等な靴は持っていない。盲点だった…


「そんな事だろうと思って用意しておきました。実は前にソラトさんが話してくれたのを思い出して隊員皆で買ったんですよ?」


アンリが何処から取り出したのか箱を取り出し中を開けると白のハイヒールが入っていた。

アンリの後ろには隊員が顔を揃えて私を見ている。


「お前たち…!!ありがとう、大切にするからな…!」



「ええ、それとサイズは気にしないで大丈夫ですよ。自動調整と自動修復が付与されているのでお手入れも簡単ですよ!」


「ありがとう、本当にありがとう。」


私は涙を浮かべながら感謝の言葉を述べる。私の涙を見せないためかアンリが他の隊員を解散させた。


「さぁ!セレナさん、後は髪を巻き上げて完了ですよ!急ぎましょう!」


ここまで助けてくれる部下を持てて幸せだ。


「さぁ、出来ました。きっとソラトさんもメロメロですよ!頑張ってくださいね!」


風魔法と火魔法を使って温風を出したアンリが私の髪を漉き整えていく。前にもこんなことがあったな。王都に居た頃、陛下主催の王子の成人祝いの時もこんな事があったっけ。パーティーで浮いていた私は元々宿屋の娘で庶民から騎士爵を得て周りから鼻つまみものとあしらわれていた時、声を掛けてくれたのがアンリだった。


「あの由緒名高いシュラーク家のお嬢様が私に声を掛けてくれるとは思わなかったよ。」


「その頃からセレナさんを何度か訓練所で見掛けてましたから。すごく気になってたんですよ?ふふ」


あぁ、そういえばあの頃は仕事が終わると訓練所にいって我無娑羅に剣を振り回してたっけ。



「出来ました!やっぱりセレナさんは素材が良いので磨くのが楽しいです。ソラトさんの心をしっかり掴んできて下さいね?」


所謂夜会巻きとなった自分の頭を鏡で眺めているとアンリはそう言った。


「自信はないが…いや、任せとけ!」


私は立ち上がり部屋に鍵を掛け宿屋を出た。


宿を出たら目の前に巨大な黒馬が居た。


「セレナ・クッコローゼ様ですね?ソラト殿の使いであるスレイプニルのハヤセです。どうぞ、我が背に跨がり下さい」


こ、これはどういうことだ?ソラト殿の使いと言った。だが災害級の魔物であるスレイプニルを使いに出すだと?ソラト殿は一体何を考えてるんだ?


「さぁ、早く!」


ハヤセと名乗ったスレイプニルが私を急かす。周囲を見渡すと人だかりが出来ていた。


うぅっ…これは恥ずかしい…


私はさっさとハヤセに跨がってソラト殿の所へ向かった。

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