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悪魔的サーチメモリア  作者: 涼ミ音エイ
序章 悪魔の誕生
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第八話 Night light

ドゴーンと大きな音と共に今の瞬間まで二人のいた地面がえぐれる。ゴブリンロードが一度剣を振るった結果だ。

辺りは既に暗くなり、空には丸い月が青白く光っている。


あの一撃をもろに食らったら死ぬな……。ゴブリンてのはみんなこんなに強いのか? 正直魔物を舐めていた。


アルトは油断なくゴブリンを睨みつける。

勢いのまま殺した三人が実はかなりの実力者だった事を知り、ゴブリンのことをなめていたのは事実だ。戦場では少しの油断が大きな危機を生み出すこととなる。しかし、アルトの感想がどこか人ごとなのは自分の命をなんとも思っていないからだろうか?


「最近のゴブリンってみんなこんなに強いのか?」

「ううん。違うわ! おそらくあいつはゴブリンの上位個体よ!」

「……通りでな。こんなのがごろごろいてたまるか!」


アルトは再びゴブリンに近接しナイフを振るう。


『条件を満たしました。スキル【ナイフ術】がエクストラスキル【剣術】に進化します』


スキルも進化しアルトの攻撃はさらに切れを増す。

相手の大剣と比べ、間合いは短いがその分相手の意表を突いた攻撃や、身軽な攻撃で確実にゴブリンに傷をつけていく。


やっぱり、スキル補正って凄いな。剣のことはずぶの素人だった俺がこんな化け物と渡り合えているんだ。それにこれだけ跳んではねてしているというのにまだ、息が切れる気配がない。


アルトの息が切れないのはユニークスキル【再生】の効果だ。

このスキルは自分の体に起こる不利益な変化を元に戻そうとするスキルで、この世界トリプテットにおいてもかなり珍しいスキルである。


「アイスソード!」


アクアの魔法が飛ぶ。

先ほど、打ち落とされたアイスパイルと違いアイスソードは氷の刀で、相手を切り裂く技だ。直線的な動きではないため、アルトの攻撃の隙間をつき、ゴブリンに休む暇を与えない。


「やっぱり夜の方が魔力の流れがスムーズね。頭にかかっていたもやが晴れた気分」

「夜になって、目が覚めたか? さっきまでとは動きが違うな」

「ええ。もうパッチリよ!後衛はこれまで以上に任せて!」


アクアの放ったアイスソードがゴブリンに傷をつけていく。


「はあっっ!!」


アクアが腕を振り落とすとゴブリンの頭上に浮かんだアイスソードが、一斉に落ちてくる。

ゴブリンの悲鳴とともに砂埃があたりを覆った。


「やったか?」

「手応えはあったわ。でも、油断はしないでね」


砂埃が晴れるとそこには、地面に刺さったアイスソードの真ん中に傷だらけながらも確かに、ゴブリンが立っていた。

グオーーーーーーーー!!!

ゴブリンが叫びを上げる。


「やっぱりまだ生き生きしているわね」

「ああ、あとは俺がやろう」

「…? まだ私もやれるわ」

「嘘つけ、かなり息が上がっているじゃねーか。後は俺に任せてゆっくりしてろ」

「うっ…。わかったわ、気をつけて。」

「ああ、任せとけ」


アクアは少し離れた木の幹に寄りかかる。

魔法の威力は己の魔力と想像力によって変わる。

アクアの魔法はかなりの威力がある。そのため魔法を使っている最中、アクアの脳にはかなりの負担がかかっているのだ。

アルトはゴブリンを睨み付ける。


「さて、そろそろ夜食の時間だ。おまえの肉がおいしいことを祈る」

アルトはナイフを握り直すとゴブリンに向かい走り出した。ゴブリンも迎え撃とうと、大剣を振りかぶる。

二つの刃が交差し、剣戟が振るわれる。

アルトはゴブリンの頭上や背後など、宙を舞うような動きで次々とゴブリンに傷をつけていく。


ゴブリンの攻撃を一度でも受けたら、死ぬ。だから、絶対に受けないようにヒットアンドアウェイ戦法でやるしかない。


ゴブリンの攻撃がアルトの頭上すれすれを通った。


「アルト!」


アクアの悲鳴が聞こえる。


「俺についてくるって決めたんだろ。じゃあ、俺のことを信じて待ってろ!」


アルトはゴブリンの大振りの攻撃を掻い潜ると、ゴブリンの懐に入った。そして、ゴブリンの驚いたような表情に笑いかける。


「じゃあな!!」


アルトはゴブリンの首めがけて、ナイフを振るった。

しかし、キーンと甲高い音がしてアルトのナイフが飛ぶ。


マジかよ……。


ゴブリンの大剣がアルトのナイフをはじいた結果だ。


嘘だろ、死ぬ!


ゴブリンの大剣がアルトを切り裂こうと、迫る。


「なんてな……」


アルトは一言つぶやくと、近くに刺さっていたアイスソードを抜き取りゴブリンの胸に刺した。

氷の剣はゴブリンの胸から、背中へと貫通する。ゴブリンは悲鳴を上げると、辺り構わず腕を振り回し暴れ始めた。

アルトは氷の剣から手を離すと、飛び退きながら叫ぶ。


「まだ、やれるんだろ。アクア! とどめだ美味しく焼き上げてくれ」

「任せて! ファイヤオーシャン!」


あたりを焼き尽くすほどの炎がゴブリンを襲った。

グギャーーー!!

ゴブリンは悲鳴とともに炎の海に飲み込まれていく。


『レベルアップしました』

『レベルアップしました』

『レベルアップしました』

………………。


アルトの頭に声が鳴り響く。その声はアルトに、ゴブリンが死んだということを教えてくれた。

あれほど、元気だった魔物も最後はあっけないものだ。


「アクア、やり過ぎじゃね?」

「ええ。気合いを入れすぎたわ…」


二人は焼け焦げ、とても食べられなくなったゴブリンと、火が燃え移り赤々としている樹林を見ながら話す。

そもそも、ゴブリンを食べようとしていたことに問題があるのだがそれは置いておき、樹林で火魔法を使ってはいけないのは当然、常識だ。

さっきまで残っていた、氷のかけらや剣はすでに溶けて跡形もなくなっている。


「ああ〜。今日の夕飯もあのくそ不味い木の実か……。」


アルトはポケットからロルルの実をだして、火の明かりにかざす。


「あれ?」


この実、青かったっけ? もしかして、俺があのくそ不味い木の実だと思ってたのってこの青い実か? これ、凄く美味しかったやつじゃね?


アルトは青くなったロルルの実を口の中に放り込む。


「アルトだめっ!」


気付いたアクアが制止するがもう遅い。

前にも記した通り、ロルルの実は夜になると青くなり、猛毒を持つ。アルトは前に食べた美味しい実と勘違いし、猛毒の実を食べてしまった。


「うっ、これは……。不味い」


『条件を満たしました』

『スキル【毒耐性】を獲得しました』

『条件を満たしました。スキル【毒耐性】がエクストラスキル【毒無効】に進化します』


アルトの頭に声が響く。

アクアはロルルの実の不味さにうずくまるアルトに声をかける。


「アルト大丈夫? それはロルルの実って言って、夜になると猛毒になる実よ」

「ああ、通りで不味いはずだな。今、頭に毒無効を獲得しましたって、声が聞こえた。この実は捨てよう」


アルトは残りのロルルの実を全て、火の海に向かって放り投げる。


「さてと、まずはこの火を消して食料を探さないとな」

「振り出しに戻ったわね」

「ああ、次はやっぱりオークを探そう」


自我をしっかり保っての最初の戦闘を終えたアルトは、自分がこの戦いに重要な意味を見いだしていたことを完全に忘れている。

すでに二人の頭の中はオークの肉一色だ。

今はまだ、始まったばかりの二人の物語がどのような結末にたどり着くかは空に輝く満月にもわかりはしないだろう……。

二人はまだ煙の上がる樹林の中、出口とは正反対の方角へ、今日の夜食を探して歩いて行った。

どうも織田です。

三日連続投稿今日が最後になりました。楽しんでいただけると嬉しいです。

八話九話と戦闘シーンが続きますがうまくかけているでしょうか? やはり、戦闘シーンはなれないので、書くのが難しいです。

また、説明回が続いてしまいました。なるべく、説明回も読みやすくしたつもりですが、わかりにくいところがあったかも知れません。これから書いていくにつれ、そのような所は減らしていこうと思います。

さて、今回の八話でいったん序章が終わりの様な雰囲気を出していますが、まだまだ続きます。まだ、あらすじの部分にもたどり着いていないので……。

つたない文章ですが、どんどん改善していくつもりなので、暇つぶしにでも読んでいってくれると嬉しいです。

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