表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

保護

誤字脱字あったらすみません


「ふぅ、」


 何とか落ち着いたか。見た目とは裏腹に、かなりのじゃじゃ馬だった。まさか車に乗せるのに、30分も要するとは考えていなかった。後ろから聞こえてくる寝息にホッとする。ここまで俺を困らせるとは、流石は鈴司のお気に入り。

 そんなことを考えながら、俺、咲撫 灰は車を出した。今は深夜2時を過ぎていて、車の通りはほとんどない。余裕で法定速度を無視しながら、後ろの席で眠っている少女、神尾 直李の事を考えた。

 現在日本は多国籍国家だ。一昔前までは日本人だけが住んでいたと聞くが、今はそんな面影はない。ある自然災害の末、政府は崩れ、国は死んでいった。その死んだ国を、アメリカやロシアは開拓しようと人を大量に送り込んだのだ。そのお陰で、日本はまた先進国として名をはせていられる。しかし、生活格差が激しく、第1都市から第15都市までに分けられた東京や、真っ直ぐな線で引かれたような分けかたをしてある九州が、いい例だろう。

 そして神尾 直李が住んでいたのは東京の第12都市。都市の数字が多いほど貧相な東京の中でも、だいぶ貧乏な暮らしをしている。もうほぼ底辺の暮らしの中、彼女はどうやって生きてきたのだろう。 フワフワとした金髪に、大きな綺麗な瑠璃色の瞳。美人と言うよりも可愛らしい、と言う言葉がよく似合う、目を引く容姿をしている。馬鹿だったが、かなりの馬鹿だったが。それでも、変な男に強姦されているような感じではなかった。もし本当に身の危険を感じたら、彼女は躊躇なく銃を取り出している筈だ。

 とにかく、第12都市での生活は大変だった筈だ。あの様子では、誰かに保護されている、なんて事はまずない。そうでもなければ、拳銃なんて持っていない筈だし、もし護身用ならあそこまで手慣れた扱いはできない。しかも、あの年で予備動作なし、展開術式なしの詠唱弾丸を使えるのだ。相当な努力と、才能がなければ出来ない。

 そもそも、詠唱弾丸は身に秘めている神力を解放し収縮して拳銃と言う媒体に弾丸として力を込める技。現代科学と古き技を組み合わせた複雑な技なため、長いスパンで修行をしなければならない。10年修行をしても出来ない者がいるのに、彼女はさも当然のように高位神銃術まで使いこなす。あの雷皇をぶっぱなした時、普通のヤツなら完璧に死んでいるだろう。まぁ、俺が無効化できたからいいとして。

 だからこそ、彼女の過去が気になる。

 たとえ日本がこれほどまでに酷い国でも、小さな頃から拳銃を持たせる教育はしていない。仮に鈴司が拳銃を持たせていたとしても、アイツの事だ。打たせるなんて事、絶対にさせないだろう。アイツはどこまでも甘いヤツだったから。絶対にあり得ないが、もし鈴司が神尾 直李に発砲の許可を出していたとしても、それでも、詠唱弾丸を使いこなすには時間が合わない。


「まぁ、いいか」


 そうだ、別に今はいいじゃないか。鈴司との約束通り彼女は保護した。彼女と共に鈴司を殺したヤツを探しだし、殺せばいい。気の向くまま、残虐に。神尾 直李もそれを望んでいる筈だ。そうでもなければ、鈴司の名前を出してあんなに錯乱しないだろう。とにかく、新しく仲間が増えたのだ。大変喜ばしい事である。フラビットに有能な新入社員が入ったと、早く狼に知らせなければ。なんだかんだ言って、狼も仲間を欲しがっていた。しかも、17の美少女。大層喜ぶだろう。狼は綺麗なものが大好きだからな。

 車の窓を開け、外の空気を入れる。窓から入ってくる風に目を細め、艶やかな紺色の髪を空気に舞わせている。

 現在、多国籍化した日本で明るい髪色や外国よりの顔立ちは珍しくない。むしろ日本人特有の黒髪・黒目の方が珍しい位だ。俺が知ってる黒髪・黒目は天皇家などの第1都市に住む華族だけだ。そういう俺の髪も紺色で、後ろの少女は金髪である。俺の紺色は大分黒に近いため、よく目立つ。神尾 直李の毛色は、第12都市としては確実に見ることのない色だろう。色鮮やかな髪色はそれなりに裕福な血筋に多いからだ。第12都市特有の汚い市街を抜け、車をどんどん走らせる。向かう先は第5都市の森林。その中にフラビットの事務所、兼、自宅があるのだ。無駄に広い建物だ。少女一人が増えたところで変わらないだろう。いっそ好きな部屋を選ばせようか。それから家具や服を買わないと。神尾 直李は見た目がいいから、服は選びがいがありそうだ。いろんな事を考えているうちに、俺は自然と笑っていた。


 本当に久しぶりだ、こんなに忙しいのは。鈴司が生きていた時は、むしろ暇がなかった。いつも働いていた。相棒の俺が困るぐらいに。

「・・・鈴司」

 

 今、見ているか?

 俺はお前が言った通り、生きている。

 狼はお前に頼まれた通り、今もずっとこの世界に留まっている。

 神尾 直李はお前が望んだ通り、俺の手をつかんだ。

 これで、お前が望んだ事はあらかた片付いただろう。

 だから。これからは、俺たちは好きなように、生きていくよ。

 俺も、狼も、お前を殺したヤツが憎くてたまらない。

 神尾 直李もそうだろう。いや、俺たち以上かもしれない。彼女が銃口を向けた瞬間のあの目は、憎しみしかなかった。

 だから、俺たち3人で、



 いつかお前を殺したヤツを、殺すよ。



*********************




 城。

 目の前には城があったッス。さながら童話に出てくるような、でかくて洋風な石畳の城。悲しきかな、私の頭は「凄い!住みたい!」じゃなくて、「掃除大変そうッス」としか浮かばないッス。自分よ、少しは少女趣味に目覚めるべきッスよ。ショートケーキよりスルメが好きとか、オッサンスか私は。


「おい、行くぞ」


「は、はいッス」

 予想外の目の前の建物に戸惑っているうちに、灰さんは車を降りて奥に見える通路のような所に歩いて行く。

 てか駐車場なンスね、ここは。私には車の新作発表会の会場にしか見えないッス。体育館ぐらい広いし、フェラーリとか普通に並んでるし。灰さん。今さらッスけど、何者ですか、貴方。金持ちなのはわかったッスけど。

 灰さん成金説が私の中で浮上していると、灰さんは通路を通るためであろう機械を見て一瞬考えたようにした後、私の方へ視線を向けてきたッス。


「ここは登録したヤツしか開けられない仕組みになっているんだ。指紋、暗証番号、耳の形で本人かを確認して、自動でロックを解除する。もし本人確認が出来ない時は、すぐに建物内の警報に知らせが行く。そして何らかの形で無理矢理開けようとするヤツは80万ボルトの高圧電流がそいつを殺す」


「え、・・・」

 

 ハイテク過ぎんだろう。

 てか危ないッスね。


「今から、お前にもここの登録をしてもらう」


「・・・いいンスか」


「何がだ? 」


「そんな簡単に私の事を信用して」


 会ったばかりのこんな拳銃持ってる女なんか、普通信用しないッス。むしろ私だったら怪しんでその80万ボルトの電圧で殺すッス。いくら鈴司さんの知り合いだからと言って、ここまでしてもらうのは可笑しな話ッス。

 そんな考えを読んだのか。鼻で笑ったような顔で灰さんは自信満々にいい放ったッス。


「何、たかだかお前くらいなんて事ないぞ」


「へ、へぇ~」


 腹立つううううぅっ!そりゃ私は弱いッスけど、あの言い方はないでしょう!毎日修行してる私に少しは優しくしたらどうスか!!


「ほら、早く来い」


「う、」


 自慢にもならないッスけど、機械を触るのマジ苦手なンス。自分好みの拳銃カスタマイズするのはめちゃくちゃ楽しいッスけど、こういうハイテク機器は壊しそう。なんか壊れる想像しか出来ないッス。


「そんなに簡単に壊れねぇよ」


「壊しても弁償できませんよ?」


「その時はお前が扱えるぐらい簡単な操作方法のヤツを買うさ」


 金持ちの発想はよくわかんないッス。よくこんな高そうな物持っておいて買うとか簡単に口に出せるンスかね。その図太さ、少しばかり分けて欲しいッス。

 ビクビクしながら機械の前に立ち、手形のマークのある所に手をおく。なんかぶよぶよしたスライムの感触が気持ち悪いッス。3秒ほどたつと、いきなりピーッと大音量が周りに響き渡ったッス。


「こ、壊したッスうううぅッ!!!」


「落ち着け、指紋の登録が済んだだけだ」


「そ、そうスか」


 よかった。本当によかった。ドキドキした。まさか本当に壊したかと思ったッス。この!いきなり大きな音なんか出すな機械め!


「・・・何睨み付けてんだ」


「・・・いえ」


 ふぅ、危うく機械を蹴りそうになったッス。灰さんありがとうございます。話しかけてくれて。そんな気持ちを込めて笑顔を見せれば、灰さんは心底変な物を見るような顔をしてたッス。何ででしょうか。

 隣から変な視線を感じながら、次の登録に移ったッス。


「暗証番号スか・・・」


「6桁以上12桁までの数字を―――」


ピピピピピピピッ、


「話を最後まで聞け」


「ヤバイッス灰さん!暗証番号って覚えておく必要あるンスよね!?今適当に押したッス!!!」


「この馬鹿あぁぁぁっ!」


「ごめんなさいッス!!!」


 すみません。マジで。 まさか覚えとく必要性が頭からすっぽ抜けてたなんて夢にも思わなかったッス。自分でも正直ビックリッス。ここまで自分が馬鹿とは。


「最初からやり直しだ馬鹿。初めて見たぞ、記憶する気一切なしで暗証番号打ったヤツ」


「・・・私も初めてッス。ここまで自分が馬鹿と自覚したのは」


「だろうな」


 これはさすがに私でも落ち込むッスね。自分でやっときながら暗証番号打てないとか。

 ん?でも、あれ?


「待ってください灰さん」


「あぁ?」


 新しい認証をするために機械と対面してる灰さんは、怪訝そうにこっちを見てきたッス。ふふん、そんな顔されてももう平気ッス!!!


「見ててくださいね!―――そりゃ!!」


ピピピピピピピッ、


 見よ!この素晴らしい指さばき!!これが私の本気ッス!

 灰さんは何が起こったのか分からないようで。一瞬固まりましたが、笑顔で再起動。


「おぉ!思い出しのか!!」


「いや、勘ッス!!!」


 場が凍ったッス。どうしてでしょう。


「私、思い返せばATMの番号も覚えてないンス。だから、生来、私は覚えとかなくちゃいけなお数字は勘で打つ習性が―――」


「もう黙れ。あと人間のくせに習性言うな」


 あれ?何かかなりガッカリされてますか?これ。何がいけなかったンスかね。私馬鹿だからよくわかんないッス。


「もういい。最後だ。耳の認証」


 灰さんお疲れのようです。やけくそ感がにじみ出てるッス。原因わかんないッスけど、多分私のせいッスよね?

 とにかく灰さんをこれ以上疲れさせないためには、早く認証登録を済ませるッス。


「どうするですか?」


「前に立て」


「それだけ?」


「そうだ」


 何か逆に怪しいッスね、こうも簡単だと。


「あ、強いて言うならずれると認識出来ないから動くな」


「了解ッス」


 最近の機械は繊細ッスね。なんて、思っていた時だったッス。

 機械からいきなり二本のアームのような物が出てきて、


「ぇ、ちょ、これ」


「動くな」


 耳をわしづかみされたッス。


「くすぐったあぁぁあぁあぁぁぁあぁっ!!!!」


「動くな」


 貴方鬼ですか灰さん!私を羽交い締めまでしてまで逃がさない気ですか!?


「灰さあぁぁんっ!ムリムリムリッス!!!」


「頑張れ、あと10秒だ」


「拷問ッスねええぇぇえええぇっ!!!!」


 今回の認証登録でわかった事。

 それは――――


「いやぁあぁぁあぁぁぁあぁっ!!!!」


「フッ、頑張れ」


「今笑いましたよねええぇっ!!!」


「いやぁ、この方法以外にもやり方あったなって思っただけだ」


「マジスかあぁぁ!?」


 ――――灰さんマジドS。




********************




 耳サワサワされること、およそ5分。辛い闘いだった。キツイ。喉が痛いッス。

 まさか灰さんがあんな暴挙に出るとは・・・。何が辛かったって、あの後もう一度認証させられた事ッス。あの機械怖いっッス。あ、まさか蹴ろうとしたのが間違いだったンスかね。だったら、もう2度と蹴ろうなんて思いません。約束するッス。



「おい、いつまでクズクズしてるんだ。早くしろよ」


「私が遅いのは八割方、灰さんのせいッス」


「それはよかった」


「どこが?」


 なんて喋りながら進んでいるのは、長い長い廊下。機械が開けた鉄の扉はなんと三重構造で、開いた時は「うほぉっ!」「お前本当に女か」って会話がされるぐらい驚いたッス。

 くねくねと曲がる通路ではあるけど、一本道だから迷う要素、全くないッスね。でも、何かそこはかとなく気味が悪い。ずっと続くような、いきなり途切れそうな変な感じッス。あまりここは通りたくないッスね。


「もうすぐだ」


「やっとですか」


「うるさい」


 見ると、でかくて大きな扉。洋式な館によくある、2メートルはこえるヤツッス。


「おい、」


「なんスか?」


「今から会うのはフラビットの構成員の一人だ。名前は(おおかみ)。女だ。歳は・・・自分で聞いてくれ」


「え、了解ッス」


 何でそんなに悲しい顔してるんですか。美形が儚さプラスされて6割増しッスけど。

 そんな変な灰さんばかり見ていたから。私は気がつかなかったッス。扉の先にいる、女の人を。銀髪の髪をした、異界の使徒を。


「おい、お前が神尾 直李か」


「え、――――」


 振り替える先には、―――


 切れ長で睫毛の長い瞳。

 細くて白い四肢。

 首につけてある首輪。


 ―――完全無欠の美少女がいたッス。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ