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誤字脱字あったらすみません。


「むー」


 今月、後二週間ほどを395円で生活しなければならない。

 そんな無茶な生活を、貴方達はしたことがありますか?私はしたことがあるッスよ!水で腹を満たし、草を食べ、ブレーカーをわざと落としておく。日の出で起きて、日の入りで寝る。1日一食、カップラーメンを糧に日々を過ごす。風呂は二分。家にある電化製品は冷蔵庫と洗濯機と炊飯器のみ。冷暖房なんて物はあり得ないッス。紙って食べれない事無いって知ってました?不味いッスけど、段ボールは腹が膨れるからオススメッス。車なんて、乗り捨ててあった物を適当に乗り回した事があるぐらいッス。もちのろんで違法ッス!排気ガスと二酸化炭素とはかなり無縁、と言うか現代人の生活を捨ててるッス。なんとエコな我が貧乏ライフ!第12都市の皆が、こんな生活をすれば、きっと地球温暖化なんて言葉、消える筈ッスよ。

 しかし、そんな貧乏のプロでも、危機はあるんッス。それが、


「納税」


 マジ、こんないたいけな17の女子から金巻き上げようなんて、流石政治家。人間の底辺。クズ。ゴミ。あ、クズとかゴミに失礼ッスね!謝ります。クズさん、ゴミさん。

 まぁ、とにかく。納税分の金を払ったら、私はまだ光熱費も払っていないというのに、395円で過ごすことになるんスよ。あり得ないでしょ?流石に死ぬッス。光熱費は払えないし、ご飯は買えないし、金はないし。本当に絶望的。望みは今週のバイト代。週払いにしてて良かったッスね。でも、光熱費払ったら、やっぱり一文無し。


「・・・・・ヤバイッス」

 これはもう、臓器売買に手を出すしかないのか。人に自分の体を分けるなんて、本当に嫌ッスけど、仕方ないッス。自分の持っている物で、一番価値のあるものは、体の他にないッス。健康だけが取り柄ッスから。あ、でも血液は一応売れるンスかね?だったら血液の方を私は売り出したいッス。どのくらいが相場なんでしょうか。気になるッス。いや、もういっその事、自分で血液売買の会社を作り上げるとか・・・。

 今後の生活費をひねり出す為に、結構危ない事考えているとき、


パリンッ!!


 窓が割れる音がして、


「っ!!――――うわぁっ!!!」


 思いっきり、押し倒されたッス。

 窓ガラスの破片が、薄暗い四畳半の部屋に散乱するのがチラリと見えた。けど、そんなことに気を取られている訳にもいかないッス!


「はぁ、はぁ・・・君可愛いねぇ。こんなに可愛いのに、アパートの一階なんて住んじゃダメだよ、はぁ、はぁ。だから僕みたいなのに引っ掛かるんだ、ヒヒハ、ハハハ」


 ▼息が荒いキモいオッサンが現れた!

頭の冷静なところが、変な効果音をつけてRPG風に再生してたッス。そんなところで頭使わないで、今の状況を打破する事に使ってほしいッス。

 どうにも、この目の前のオッサン明らかに目がいっている。自分で言うのもなんスけど、ろくでもないヤツなんて腐るほど見てきたッス。気持ち悪いヤツ、頭がおかしいヤツ、刃物を振り回すヤツ。いろんなヤツに会って来たッスが、この手の盛った男ほど面倒臭い物はないんス。欲で周りが見えなくて、自分の事ばかり優先したがって。その上、相手のせいにしたがる。


「ど、けろっ!やめるッス!!」


「フハヘヘヘッ、はぁはぁはぁはぁ」


 本格的にキモいッスウウウウウッ!!!!!!!!めっちゃ息が荒い!!!しかも息臭いぃぃぃぃっ!!こんな者が同じ人間なんて思いたくないッス!!!これならまだ第6都市の政治家とか名乗ってる人間の方がいいッスよおぉぉぉぉっ!!!


「っ、やめろ離せええええっ!!」


「ウッ、!!」


 隙を見て、腹に膝を入れた私マジ勇者!!誰か褒めてほしいッス!!!

 腹にいきなり衝撃と痛みを感じたオッサンは、対して広くもない部屋でもんぞり返っている。人の事は襲うくせして、痛みには弱い。よくあるクズ人間の特性ッスね。

 しかし、クズ人間でも男。女の、しかも万年欠食人間の自分では、とてもじゃないが、力では敵わない。

 なので、戦略的撤退――――所謂、逃げるを選択をしたッス。生きるためなら何でもする。草木食って、どぶ水飲んででも生き延びろ。それがモットウッスから!今一番尊敬しているのは、みんなが嫌いなあの黒くてツヤツヤしてて、台所とかによくいる、あの不衛生害虫ッス!!!なりたいなんて1ミクロンも思いませんが、あの生命力は褒め称えましょうよ!

 私の頭はやっぱり変な事しか考えないなぁ、なんて他人事のように思いながら、私は全速力でバック一つとニット帽を持ち


「死ねッス!!!」


「グハッ!」


腹に蹴り入れて靴履いて逃げたッス。

 そりゃもう?必死でしたから、周りなんて見る余裕なかったッス。えぇ、もう本当。


 だから、今。逃げる私を、誰かさんが見てるなんて、夢にも思わなかったッス。

 しかも、その誰かさんが私の恩人になるなんて、宇宙規模で考えてもなかなかある事じゃないッスよね?




********************



 「はぁ、はぁ、っ、・・・ここまで来れば大丈夫ッスよね」


 走って走って約20分。あのキモいオッサンにも勝るくらい息を乱しながら、ようやくたどり着いたのは結構デカイ公園。特に遊具なんて物は置いてなくて、年老いたじいさん婆さんの散歩コースの為に作られた物ッス。

 バックには金、タオル、歯磨きセット、ブラシ、下着、護身具、パン等のお泊まりセットが入ってるからいいとして、これからの事が大変ッス。住居とかまた見つけるのは面倒ッスけど、あのキモいオッサンが入った部屋は使いたくないッス、マジで。とにかく、今日はこの公園のベンチで寝て、明日から頑張るッス。そのためにちゃんと身だしなみとしてニット帽とかブラシとか持ってきたンスから。

 だって、まさか雇ってる女の子がホームレスとおんなじ事してるなんて嫌でしょう?それに私は曲がりなりにも女なんで、それなりに小綺麗にしとかないとまた襲われる可能性があるッス。あとニット帽は深く被れば顔も隠せるッス。その対策としても、身だしなみは大事なんンスよ。


「・・・ふぅ、」


 本当にこれからどうすればいいのか、よく解らないッス。自分はこうまでして生きなきゃいけないンスけど、まだ私の人生は17年とそこそこ。これから長い時間の中を、毎回こんなんで過ごすのはちと辛いッス。

 疲れでボーッとし始めた頭は、考え事をするのには向いていないッス。なので、何も考えないように、目を閉じて。夢を見るように。




 深い海に堕ちていくように。

 闇の中に熔けるように。

 影の一部に成るように。

 そっと息を殺す。

 そうすれば、いつか見たような暗い世界が、何だかとても懐かしい風景が、浮かび上がって、消えていく。

 ここにいる自分はまやかしで、彼処が自分の居るべき。

 そう思う、この感じ。

 焼き付ける焔も。

 貫く氷も。

 吹き付ける疾風も。

 ただあるがままに、私を傷つける。

 それがまた何とも懐かしい。

 誰もこの感覚を共有したことはなく。

 ただ一人、私にしか解らないような世界。

 遠くから音がしてくるような。

 懐かしいような香りが、近づいて来るなんて――――



「おい」


「ッ!!」


 まさか本当に人が近づいていたなんて思わなかったッス。寝ていたとはいえ、こんな見知らぬ人に接近されるのはよくない事。しかもよく見ると、声をかけて来たのは男。暗くてよくは見えないッスけど、身長が180はあるッス。暴力ふられたら、まず敵わない体格差ッス。

 とりあえず適当にあしらってこの場を去ろうとする私を、目の前の男は見事に止めてしまったッス。


「お前、神尾かみお 直李すぐりだろ」


「っ!?」


「違うか?」


「・・・違うッス」


「ほう、」


 一瞬、面白がるような声をだした男は、すぐに声を返して来たッス。

 それも、とても真剣で、真摯で、誠実な声。


「俺は、美琴波 鈴司を知っている」


「なっ――――!!!」


 汗が滲み出して。心臓が痛いほど鳴り出して、ガンガン私の思考乱していくッス。冷静に、落ち着け、自分。

 そう思っても、言葉は頭を巡るだけで、脳ミソはちっとも言う通りにしてくれないッス。


「な、なんで鈴司さんを、知って、るんスか ・・・!」

 

「なんで、ねぇ」


 焦らすかのように、ゆっくりとした声で言葉を紡いでいく男は、次の瞬間――――


「俺が、殺したと、言ったら?」


 ―――――私に護身具である拳銃を握らせたッス。


「殺すッス」


そう言い放ちながら、最新型のWMO285型を安全装置を外す。ゼロ距離の射撃では、285型の発射衝撃に私の肩は耐えられないので、自分が持つ全身全霊の運動能力で後ろに跳び、距離をとる。

 距離を取ったとしても、相手は長身の男性。油断はダメッス。もしこいつが本当に鈴司さんを殺していたとしたら、相手はとんでもなく強い。あの神器〔セイパハイム〕を体の一部みたいに使いこなす鈴司さんを、絶命まで追い込めるンスから。

 視線を一度も外す事なく、男の頭に寸分の狂いもなく銃口を向ける。

 男は感心したような声で笑っていた。


「確かに、いい判断だな」


「そうスか、死ねッス」


 緩いしゃべり方してるから分からないッスけど、この男は今の私の動きを見ても驚かないということは、こいつは絶対に《コッチ》の人間。こいつは何者かは知らないッスけど、今の一連の動きで、多分私の実力を把握したと思うッス。これは私の第六感、野生の勘、が告げているッス。自慢じゃないッスけど、テストの選択問題だけは間違えた事ないんで。

 とにかく、油断だけはダメッス。集中を切らせば、今この瞬間の、鈴司さんの仇をとるチャンスを失ってしまう。そしてもれなく私も殺される。

 私の命はともかく、こんなチャンスもう来ない筈。鈴司さんの為に、私は、ここまで生きてきたンス。

 だから、だから・・・!!


「雷皇!」


「――――なっ!!」


全身全霊で目の前のヤツをぶっ飛ばす!

 そんな決意を胸に、私の身に宿る力を1秒未満で285型に詰め込む。

 男は、まさかこんな非力そうな私が詠唱弾丸を使うなんて思わなかったのか。驚きの声が小さく聞こえたッス。


「弾っ!!」


「―――っ」


 青色を纏った4発の弾丸が、男の体めがけて翔んでいく。その弾丸の軌道が、全て男の体をとらえているのを確認したッス。それが男に当たったのを確認する隙もなく、力を解放し、収縮する。

 打って打って打ちまくる。隙を作ってはいけないッス。距離を縮めてはダメッス。この距離を保ち、それから相手の脳髄に。


「やめろ」


「ヘ・・・?」


 頭の機能が止まる。

 何故、何故、男は無傷なンスか。雷皇は5大属性最速の威名を持つのに。それを避けた、または無効化するなんて、とてもじゃないッスけど人間の所業じゃないッス。いや、鈴司さんを殺したぐらいになると、そんな事できるようになるンスかね。いやいや、もし無効化したとしてもノーダメージはあり得ないッス。鈴司さんを殺したのは教会の人間のはず。なら、神以外の属性に抗体はないンス。だから、無理矢理あの雷皇を無効化したら、それなりに痛みがあるッス。なのに、目の前の男は、けろっとしてるッス。


「ま、まさか・・・」


「何だ?神尾 直李」


「これは、あんたは、・・・」


 そうだ、そうに決まってる。

 だってこんな事あり得ない。あり得ない事が起きるのは、いつだってそう。


「夢なンスね!」


「な訳あるかぁっ!!!」


 男がこけた。


「いやいやぁ、だってこんなに鈴司さんの仇が見つかるなんてあり得ないッスよぉ。しかも雷皇が効かないなんてぇ、それに鈴司さんを殺したようなヤツだったら私なんて銃握った瞬間に殺されてるッス」


「まぁ、そうだが・・・」


 何だか物凄く馬鹿を見るような視線を感じるッス。ムカつく。夢の一部のくせにムカつくッス、この男。


「だが、これは夢ではない」


「何を根拠に言ってるンスか」


「お前も何の根拠で夢って決めつけてるんだよ」


「む、そうッスね。・・・根拠は、・・・ないッス!!!」


「ないのに夢だと言うのか!!?」


「え、これは私の夢ッス。根拠なんて要りません!」


「寝言は寝て言え」


「さっきからなんなンスか!?夢のくせにムカつく!」


「だぁ、もう!!!」


男が叫んだかと思ったら、一気に距離を詰められる。驚く暇なく腕を捕まれ、視線を向けさせられたッス。ここで私は初めて男の顔をちゃんと見たッス。

 近くで見る男の顔は、驚くほど整っていたッス。眼鏡の奥の瞳が赤く光り、色素の薄い肌や綺麗な紺色の髪を持つその姿は、女の私よりも色気があったッス。

 てか、距離が近いッス。こんな綺麗な男は初めて見たもんで。所謂、めちゃくちゃ居心地悪いッス。贅沢な話ですけど、神様、今すぐこのイケメンを私から離して欲しいッス。


「俺は、鈴司を殺したヤツを探してる」


「だ、だから?」


「俺の所に来い」


「―――は?」


 流石夢。イケメンに迫られているッス。私、自分では自覚なかったッスけど、面食いなンスかね?まぁ、綺麗な物は嫌いじゃないッスけど。

 変な事を考えているのが伝わったのか、イケメンは私の頬を引っ張りながら、怒ったように喋り出したッス。


「夢じゃないって何回言えばいいんだよ!このぉ!ほらこんな頬っぺたつねられて痛くないのかあぁ?!」


「ちょ、い、痛いれふ!わかったっふ!夢じゃないっふ!!!」


「わかればいいんだよ、わかれば」


 マジ痛い。こんなに痛いの久しぶりッス。

 涙目になっている私に、イケメンは真剣な顔で言ってきた。


「俺は灰、咲撫さかなで かい


「灰さんッスね」


「そうだ」


「で、なンスか」


「俺は鈴司に頼まれて、お前に会いにきた」


「え・・・」


「鈴司は最後に、お前の事を俺に託した。正真正銘、死ぬ間際だ。お前の事、不自由なく暮らさせてやってくれと、幸せにしてやれと。そう言われた」


 真剣に、ただ人の事を思っている瞳が、私の事を見ていたッス。そう、これは、鈴司さんと同じ。優しくて、強くて、かっこよかった、鈴司さんと、同じ。だから、この男からは懐かしい匂いがするのだろうか。鈴司さんの、何だか少し甘い匂いが。

 とたんに、涙が止まらなくなった。こんな初対面の相手に、何を私は泣いてるんスか。それでも、涙が止まらないッス。


 鈴司さん、私は貴方と一緒に幸せになりたかったんです。貴方を、幸せにしたかった。私にくれた分の安らぎを、私は貴方に返したかった。こんな私の事なんか、気にしなくてよかったのに。私の事をこの男に託す時間があったなら、助けてと言えばよかったのに。


「・・・泣くな」


「別に、泣いてないッス」


「鈴司のことで泣くな」


「頬っぺた痛くて泣いてるんッスよ」


「そうか」


 悪い。そう言うイケメン、灰さんは、ただただ静かに私の事を見ていたッス。この人も、鈴司さんが好きだったのだろう。じゃなきゃ、こんな私の事をわざわざ探さないッス。

 こんな簡単に感情が表に出るなんて、私も落ちぶれたものッス。相手は鈴司さんの事を知っていると言っただけなのに、自分の事を言っていたと言われただけなのに。それだけで鈴司さんの記憶が溢れだしてきて。


「貴方に、ついていけば」


「・・・」


「鈴司さんを殺したヤツに、会えるンスか」


「・・・あぁ」


「そうスか」



 今まで、他人といるのが嫌だった。もし頼ってしまったら、一人で立てなくなってしまうから。寂しさに押し潰されてしまうから。優しくされればされるほど、自分のメンタルの弱さを感じるから。

 

 でも、


「私は、弱いッス」


「そうか」


「多分、貴方を困らせるッス」


「そうか」


「それでもいいンスか」


「あぁ」


「じゃあ、これから」


 

 これが鈴司さんの手掛かりなら、


「よろしくお願いします」


 私は、一人を捨てる。




「神尾 直李。『フラビット』ヘ、ようこそ」


「はい、灰さん」




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