表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
R15 終末世界で、執事は僕を調律する。~人外執事×傲慢坊ちゃま~  作者: 島田まかろん三世
第一章 北海道編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/12

人工の灯

 メンテナンス扉を抜け、地上へと続く階段を駆け上がると、そこは、大通おおどおり公園の中だった。


「……あ」


 思わず声が漏れた。


 人工灯の中で、肩を寄せ合っている人が見える。数十――いや、数百という単位の生存者だ。彼らは公園の中央に集まっていた。地面に座り込んでいる者、呆然と空を見上げている者……。


 もしかすると、パパたちのことを久世がはっきりと口にしないのは、生きている確かな証拠がないから。

 これだけの人が無事なのだ。そうだ――パパたちもきっと。


 それだけではない。自衛隊の車両が、いくつか停まっているのが見える。


 助かる。

 御子柴の名を出せば、パパに連絡がつくかもしれない。

 ――いや、つくに決まっている。


「久世! ほら、あそこに自衛隊が――」


 僕を無視し、歩きだす久世。


「ほら! 見ろって――!」


 僕は、久世の袖を掴んだ。

 久世は足を止め、振り返る。


「……坊ちゃま」


 低い声だった。

 僕は身構えて、久世を睨んだ。


「なんだよ」


 久世は呆れたように短く溜息を吐き、人差し指と親指で、自分の眉間にできたシワを摘まんだ。


「水も食料も十分あります。それよりも、そろそろ日が暮れます」


「だから――!?」


 僕は、久世の袖を引っ張った。


「夜になるなら、あっちの集団に混ざった方が安全だろ! 自衛隊がいるんだぞ!」


 久世は彼らを、ゴミを見るような目で一瞥した。

 そして、空を見上げ、口を開いた。


「……アレは」


 ぽつりと言う。


「夜に、歌を歌うのです」


 久世はそう言うと、逃がさないと決めたかのような力強さで、僕の腰を引き寄せた。

 こんな、公衆の面前でだ。


 驚いて、僕は言葉を失った。

 久世と目が合う。


 途端に、ふわりと香る。品のいい金属に似た匂い。

 久世の使っている香水って……どこのブランドだろう。


 ……今、そんなことを考えている場合じゃない。

 

 けれど、久世の腕に拘束されながら立ち上る熱に、僕の思考はひどく甘く、濁らされていく。


 そもそも、久世の体温は、平熱より少し熱いのだ。

 僕はその胸をググっと押して、離れようとした。


 けれど、久世の力には逆らえず、自衛隊の拠点とは真逆の方向――青い光を撒く街路樹が並ぶ、ビルの隙間へと足を進めるしかできない。


 下手に逆らっても、人の目を引くだけだ。


「わかった――わかったから。離せ……」


 僕の訴えに、久世が足を止めた。目を伏せて、僕を見ている。

 それは、僕の全部を見透かそうとしている者の表情に見えた。

 なにかを探っているような、計算しているような瞳。


 その、冷徹な瞳に射すくめられ、僕は、ごくりと喉を鳴らした。

 名前を口にしようとしたとき、「久世」の、僕の腰を引く力が、ふっと消えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ