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わたしたちの落神様  作者: サカシタテツオ
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047.5 旅の食料問題とキラキラちゃんズ


□旅の食料問題とキラキラちゃんズ


「まずいって訳じゃないんだよなぁ。」

俺はリアやキラキラちゃん達に頼んで、隊商の人達が持っていく、保存の効く食料って奴を一通り試食させて貰っているところ。


干した肉や魚は決してまずくはない。

塩味も効いているし、スパイスだっていい仕事をしている。

けれど、ずっと同じ味が続くとなると確かに飽き飽きしてしまうのも分かる話だった。

パンもあるけれど、保存の為に究極まで水分を飛ばしてあり、カチコチのパサパサ。

現地で煮炊きするのは主に豆類で、この豆のスープなんかの出来が悪いと喧嘩さえ起こりそうな気がしてきていた。


持って行く食料も問題だけれど、調理道具も問題だらけ。

必要最低限って事でナイフと大鍋、まな板の代わりの薄い鉄板。一体それだけの道具でどうしろと言うのか。


「うーん、なんとか工夫しなきゃだな…。」


キラキラちゃん達と意見交換しつつ、最終的に落ち着いたのはガンホルダーならぬ、包丁ホルダー。

太く頑丈な素材のベルトをベースに包丁ホルダーを数種類、さらに麺の伸ばし棒やおろし金、すりこぎ棒や泡立て器なんかもセット出来るようにとアレコレ留め具を付けていけばなんとかなりそう。

そのアイデアを実現する為、まずは俺の胴回りを採寸。

その後、俺の使う調理道具を採寸し初期アイデアの簡易設計図が出来上がった。


あとは鍋とかなんだけれど…。

中華鍋と似た形状で様々なサイズのモノを上手く重ねてコンパクトにならないかと提案すると、金属加工ならアサマさんに相談した方が良いと言われてしまう。

-- なるほど。確かにその通り。


道具に関して一通り話し合ったら次は食材の話。

現地で調達出来るのは、運が良くてもウサギくらいらしいし、野菜の類は無理っぽい。

そもそも石ころの多い草はらで、大きな木さえ生えてなく低木がまばらに存在する程度らしい。


「やっぱり乾燥させるしかないか。」

葉物野菜はとにかく干す。

根菜は千切りするか、薄くスライスしてから干す。小さなトマトも天日干しでいけたはず。

これで随分かさも減るし重量だって軽くなるだろう。

芋類は迷う。そのままでも日持ちするけど、重量がある。しかし干してしまうと調理への応用範囲が(せば)まってしまう気がするのだ。

それと穀類。豆や米、麦はそのまま持って行くそうだけど、小麦粉や米粉など挽いたものもあれば調理の幅はグッと広がる。

けれど調味料と違って、こちらは量が必要なモノ。やはりお気軽に追加ってわけにはいかないかもしれない。


「しょうがないわね。今回は近場だし、私がカジムに掛け合ってあげるわ。」

俺がウンウン唸っていると、リアが食材を大幅に追加出来るよう編成を見直してくれる事になった。

-- ごめんよカジムさん。

-- 安らかにね。

-- 南無南無。


そんな訳で食材については解決の目処が立った。

それでもなるべく重量を減らす努力はするように釘を刺されてしまっているので新鮮な野菜は諦めることになる。

-- 干して干して干しまくるしかないね。


食材に調理道具が揃ったなら、あとは調理場の確保。

聞けば石を積み上げ即席のカマドを作る事もあるけれど、そんな事は稀で焚き火の上に大きな鍋を吊り下げるんだそうだ。その為の支柱は揃っている。

そんな本格的なアウトドア調理法なんて経験した事なんてない。

初歩的なアウトドア料理もした事はないけど、コレは黙っておく。


「ダメだ。失敗の匂いしかしない。成功する想像がまったく出来ない。」

俺がそんな泣き言を言い始めると、キラキラちゃん達から不満の声が上がり始める。


「ジョン様のわがままに付き合って、色々話し合ってるのに!!」

「旅先でも美味しいご飯が食べられるかもって未来に賭けたのに!!」

「ジョン様が一番最初にへこたれるとか、私達のかすかな希望を見捨てないでくださいッ!!」

三人それぞれ、苦情と共に本音がダダ漏れてくる。

-- 旅の食事は、そんなに悪夢なのか…。


「せめて茶屋みたいな屋台があればいいのにな。」

無理だと分かっているけれど、ついつい本音が出てしまう。本音だけど愚痴でもあった。

食材が揃っていても道具がイマイチならば、やっぱり出来もそれなりになるし、調理の命である火力の調整道具はそのまま料理の出来に直結しちゃう。

譲れないけど譲らなきゃいけない。


「それいいですね。」

「ぜひ手配しましょう。」

「試作九号の話を聞きました。」

キラキラちゃん達がなにやらボソボソと小声で話し合う。けれどその内容は俺に筒抜け。

すぐ近くに俺が居るという事実は彼女達には(なん)の意味もないようだ。


「別に良いけれど、ジョン一人では運べないでしょう。持って行くなら三人でジョンをサポートなさい。交代しながらなら運んで行けるでしょう。」

リアのお言葉。



その夜、キラキラちゃん達によるジョン様特別トレーニング会議が開かれ、あの地獄メニューが出来上がる。

ちなみにその会議には俺は参加していない。

-- 女子のお泊まり会に踏み込むだなんて、俺には出来ないからね。



こうしてキラキラ式トレーニングは開始されたのだった。





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