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RETURN ~少女好きの俺が悪者を倒す~  作者: 半裸紳士
悪討疾走編
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山奥の村

前回、レイザは『睡魔』の加護の対象をマシロに絞っていた為、他の皆が眠る事はありませんでしたですます。

盗賊団に没収されていた荷物を回収し、テキストのナビゲートで何とか迷宮の様なアジトを抜け出した俺達は久し振りにすら感じる外の空気を肌で堪能しながら周囲を覆う木々を見渡した。

時間を確認する事は出来ないが明るさから察するにまだ日中だ。僅かに陽の光が差し込んだ森と言う幻想的な風景に異世界を感じる。


「やっと外に出れたな」


外に出て開口一番、一同が思っていた事を代弁するのは途中で目を覚ましたレキシアだ。


「よくあの盗賊共はこんな場所をアジトにしたもんだぜ!」

「ですがここまで入り組んでいるとこう、探索しがいがあると言うか…」


メシアに続きヒウラが満足げにぼやく。それに関しては俺も同意する。道中で色んなお宝を発見した時の興奮感、今まで感じた事のない達成感を身に染みて体験させていただいた。

ちなみに手に入れたお宝は全てマシロのカバンに詰め込んだ。テキスト曰く『倉庫』の加護が付与されているらしいカバンはこう言う時などに便利だ。

実は加護は生き物だけに与えられるだけでなく、物にも付与されている事があるらしい。今俺が着ている黒衣に付与されている『最適化』の加護もその一つだ。


「おかげでお宝も大分手に入れれたしな。盗賊様々だよ」

「そのお宝が人の手から奪われた物だと思うと心が痛むけどね…」

「あんだけあったらもう返しようもないんだ。誰の手にも渡らず埃を被って眠るよりはよっぽどマシだと俺は思うぜ?」

「売った人の手からまた別の人の手へ、そうこうして元の持ち主へと戻ってくれる事を祈るしかないのかな」


自分なりに自分を納得させたセインがもうお宝については口出しするまいと口を閉じる。純粋な正義と言うのも厄介なものだ。


「さて、何時までもここで駄弁っててもしょうがねえ。とっとと王都に向かおうぜ!」


気を取り直してそう俺が提案すると、皆も同意見なのか首を縦に振ることで肯定を表した。あの草原からどれほど離れた場所なのかは知らないが、少なからず距離が遠ざかったのは確かだ。

どんなに先を見据えても出口が見えない森を雑談しながら歩いてもうどれくらいたっただろうか。辺りも暗くなり、既に皆も疲労を見せ始めていた。ずっと歩き通しだったので当然だろう。


「テキスト。本当にこっちの方向であってるのか?」

「間違いない筈なんですがねぇ…皆さんお気付きですか?」


そう言ってテキストが俺以外に問い掛ける。何にお気付きなんだ、と思いつつ皆を見るとコクリと頷いていた。つまり俺だけその何かに気付いていなかったわけだ。

なんだこの仲間外れ感。


「ツヨシ様、実は私達ね?さっきからずっと同じとこ歩いてるの」


シュラが眠たそうな目を擦りながら俺に衝撃の事実を教えてくれる。全く気付いていなかった俺の目は節穴と言う事か。


「まさか、そんな迷いの森的要素…」

「………」


不意に誰かが俺の服の袖を引っ張ってきたので視線を向けると、何時もと変わらぬ真顔を貫いたマシロが何処かあらぬ方向を指差し始める。誘導される様に指された場所を見るとそこには光があった。神秘的でもなければ魔法の光でもない。


「原住民か…?」

「何でその発想に至ったんですかねぇ?」

「とにかく、あそこに何かある事は確かなんだ!行ってみるぞ!」


もしかするとこの無限ループを脱する手段を得る事が出来るかもしれない。そんな期待を抱きながら俺達は足早に光を目指した。少しして、とうとうその光の正体が判明した。

松明の火の光だ。それも一本だけじゃなく何本もある。それに何より大きな発見はそこに村があり、人が住んでいると言う事だ。


「村…村があるぞ!」


メシアが声を上げる。皆もはっとした表情で駆け出して一刻も早くこの状況を脱するべく村へ乗り込んだ。


「夜分に申し訳ありません!この森を抜けたいのですが、どなたかご存じありませんか!?」


セインが村の中央で不思議そうに見てくる村人に呼び掛ける。少しして、一人の優しげな雰囲気をしたおじさんが俺達の前に出て来た。


「おやおや、こんなところにお客さんなんて珍しい事もあるもんだねぇ。私はこの村の村長をさせてもらっております。君達は見る限り、迷ってしまったのかい?」

「実はそうなんです…」

「この森には幻術を使う魔物がいてね…入り込んだ人に悪戯をするんだ」

「どうすればその幻術を突破出来ますか?」

「森の魔物は基本夜行性でね。朝の間なら幻術から逃れられる筈だよ」


嫌な顔一つせずに質問に応えてくれた村長は少し考える素振りをした後、ニッコリと笑った。


「せっかくだからここで泊まるといい。久し振りのお客さんに村の者も興奮を隠せない様だし、今夜は手厚くもてなそう」

「良いんですか?」

「勿論だとも。明日の朝、村の者に外まで案内させよう。それまで遠慮せずぜひゆっくりしていってくれるといい」


正直疲労で限界だった俺達はその言葉に流されて泊まる事を決意する。それぞれ歓喜の声を上げて村長に案内された家へ入る。しばらくして運ばれた料理を美味しく頂き、そのまま眠気に身を任せて俺達は眠りについた。

これが、仕組まれた罠だとは一切気付かずに。夜が明けて初めて俺達はこの村の不自然さに気付く。異常だと知りながらも、それでも俺達は為す術なく敵の術に掛かっていった。

『人化』の加護

マシロが女神アルテシア様より受けた中級の加護。

文字通り、人でない者が人の姿へその身を変化させる事が出来る様になる加護。

この加護で人になれるからと言って自由な容姿に変化出来るわけではなく、元の容姿で人化した時の

容姿が決まってしまうと言う難点がある。

マシロの場合は複数の形態がある為、その時の姿に合わせて容姿が変わる。

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