第一章 朝の音
ブレイデンで最初に響く音は、雄鶏の鳴き声でも、風車へと下っていく荷車の軋む音でもなかった。
テオ・サーンの槌の音だった。
屋根に朝日が届くよりも早く、最初の扉が開き、家々の竈から煙が立ち上るよりも早く、サーン家の裏手では、すでに鉄が歌っていた。
短く三度、間を置いて、強く二度。それから、金床の上で鉄を返す、ざらついた音が響く。
エリアスは、その音を何年も聞き続けてきた。だから、まだ寝床に横たわったままでも、父が金属を打つ位置を間違えたときには聞き分けることができた。
その朝、ひとつ打ち損じる音がした。
エリアスは片目を開けた。
その直後、テオが食卓では口にするべきではないような言葉を、ぼそりとつぶやくのが聞こえた。
「父さんも、おはよう」
青年は枕に顔を埋めたまま、そうつぶやいた。
部屋はまだ暗かった。細長い窓から青白い光が差し込み、木の床に一筋の帯を描いている。分厚い壁には夜明け前の冷気が残り、毛布は一晩のうちにひどく重くなったように感じられた。
エリアスは、もう少し眠ろうかと考えた。
槌の音が再び響いた。
考え直した。
彼は起き上がり、麻のズボンをはくと、椅子に置いておいたシャツを探した。
それは、たぶん昨夜自分で蹴飛ばしたのだろう。衣装箱の裏に落ちていた。淡い茶色の髪に指を通す。無意味な仕草だったが、乱れた髪の印象が少し変わっただけだった。
壁際に置かれた小さな鏡で、自分の顔を確かめる。
琥珀色の目は、まだ眠気で腫れぼったい。曲がった鼻は昨日と変わらず曲がったままだ。十一歳のときに屋根から落ちた名残だった。頬には小さな黒い染みがついている。おそらく煤だろう。親指でこすってみたが、染みは消えなかった。
「素晴らしい」
彼は鏡の中の自分に言った。
「歌に詠まれるにふさわしい顔だ」
階段を下りる。
サーン家は大きくはなかったが、長く住めるように造られていた。石壁は厚く、冬には暖かさを保ち、暑い日には涼しさを守ってくれる。白い窓枠の小さな窓は、少なくとも二年は塗り直されていなかった。屋根では何枚かの陶器瓦がずれており、建物のすぐそばに生えたスモモの木は、枝が煙突に入り込みそうなほど大きくなっていた。
正面玄関は広場に面している。一方、作業場は家の裏手にあり、テオが壊れた車輪や革紐、木片、そして「まだ何かに使える」と彼が言い張る品々を保管している、杭で囲まれた場所に隣接していた。
雨水を溜める樽は、いつもの隅に置かれていた。その上では、銅色の背中をした小さな動物が前足を温めていた。
エリアスは足を止めた。
「またお前か?」
その生き物は顔を上げた。
大きさはリスほどしかないが、鼻先はイタチのように長く、暗い毛に隠れかけた小さな耳が二つあった。背中を覆う光沢のある板状の鱗が、朝のわずかな光を反射している。
それはファグリェイロだった。寒くなると、ブレイデンの作業場や台所に現れる動物の一種である。
暖かい場所と脂っこい食べ物、そして誰にも探されない場所を好む。
とりわけ、こいつは釘を盗むのが好きだった。
「父さんに見つかったら、お前の皮で鞄を作られるぞ」
ファグリェイロは瞬きをした。
エリアスは指を突きつけた。
「冗談じゃないからな」
生き物は樽から飛び降り、柵を横切ると、二つの石の隙間から姿を消した。
エリアスはため息をついた。また今日も、小さな釘がいくつかなくなるのだろう。
台所に入ると、焼きたての大麦パンと濃い茶の香りが部屋いっぱいに広がっていた。食卓にはバターとドライフルーツの入った鉢、それにまだ温かいパンが二つ並んでいる。母は調理台のそばに立ち、腰にエプロンを巻き、髪を布でまとめていた。
ミラ・サーンは細身だったが、部屋にいるだけで、何の努力もせずともその場を取り仕切っているような、芯の強さを感じさせる人だった。新しい生地をこねながら、二人の手伝いの者に指示を出している。一人はスプーンを探し、もう一人は子供が蜂蜜の鉢に手を伸ばさないように気を配っていた。
エリアスが食卓に着く前に、ミラは彼に気づいた。
「早く座りなさい。そうしないと、お茶が冷めてしまうわよ」
「おはよう、母さん」
「そのために頑張っているところよ」
エリアスは椅子を引いた。
「父さんはもう仕事してるの?」
ミラは彼を見た。
「槌の音が聞こえなかったの?」
「嵐でも来たのかと思ったよ」
「嵐のほうが、もっとお行儀がいいわね」
彼は笑い、パンを割った。
ほどなくして、テオが入ってきた。元の色が分からなくなった布で手を拭いている。腕は太く、鼻は折れ、髭は不揃いだった。人生の大半を炉と道具のそばで過ごしてきたような風貌で、そんな自分を変える必要などないと思っているような顔をしていた。
自分の杯を取り、椅子に座ると、食べ始めた。
「車輪は直った?」とエリアスが尋ねた。
テオはうなずいた。
「舞台の車輪?」
もう一度うなずく。
「じゃあ、広場に運べるね」
「朝食の後だ」
会話はそこで終わった。
それは仲違いによる沈黙ではなかった。サーン家では、多くのことが言葉を使わずに伝わる。
テオはエリアスの皿にパンを足すことで、よく眠れたかと尋ねる。ミラは、息子が痩せていると文句を言うことで心配を示す。エリアスは、出されたものをすべて食べることで二人に返事をする。
それは質素な暮らし方だった。そして彼にとって、それ以外を望む理由などなかった。
しかし、その朝のブレイデンには、いつもより早く目を覚ます理由があった。
収穫祭の前日だったのだ。
ブレイデンの村は、多くの地図に載るような場所ではない。
四十棟を少し超える建物が、不規則な形をした中央広場を囲むように広がっている。まるで誰かが計画を立てて村を造り始めたものの、もっと急ぎの用事を思い出して途中で放り出したかのようだった。家々は石と木で造られ、土色の屋根や傾いた煙突が並び、庭は空いた場所を見つけては好き勝手に育っていた。
北には小麦畑と大麦畑に囲まれた風車がある。その向こうにはなだらかな丘が連なり、羊飼いの子供や老人たちが羊を連れて歩く牧草地が広がっていた。南ではレメト川が穏やかな水をたたえて風景を横切り、川沿いには背の低い木々と滑らかな石が並んでいる。そこは漁師たちの腰掛けにも、急ぐ用事のない人々のおしゃべりの舞台にもなっていた。
白い石造りの教会、古い噴水、東屋、小さな学校もあった。踏み固められた土の道は、菜園や間に合わせの家畜小屋、そして互いに話をしたこともなさそうな人々が、それぞれ違う時代に建てたような建物の間を縫うように伸びている。
ブレイデンには鍛冶屋が一軒、酒場が二軒、仕立て屋、香辛料商、そして近隣のいくつもの村で知られるパン屋があった。十五日に一度、市が開かれると、ドライフルーツや革靴、草木で染めた布、手作りの道具を持った旅人たちが集まってくる。
ナレスの森までは、歩いて半日ほど。エルヴァリン山脈の最初の斜面までは、二日ほどの旅になる。
遠くから来た者にとって、ブレイデンは立ち寄る価値もないほど小さな村に見えるかもしれない。
しかし、住民たちにとっては、世界はここから始まり、見渡せる限りの彼方まで広がっていた。
そして、たいていの日は、それで十分だった。
だが、祭りの前日だけは違った。狭い通りからは想像もつかないほど、村には活気があるのだと証明しようとしているかのようだった。
広場では屋台が組み立てられ、長いテーブルが倉庫から運び出され、色とりどりの旗が家々の間に張られていた。子供たちは、バケツに入った塗料や縄、それに何に使うのか分からない道具を抱えて走り回っている。
エリアスは午前中、音楽家たちが使う舞台の車輪を直すため、テオを手伝っていた。毎年繰り返される仕事だった。車輪は軋み、横木の一本は緩み、そして決まって誰かが舞台の水平が取れていないことに気づく。
「傾いているぞ」とテオが言った。
エリアスは車輪を調べた。
「車輪が?」
「舞台だ」
「舞台は地面に置いてあるよ」
「それでも傾いている」
エリアスは舞台を見て、それから父を見た。
「地面のせいかもしれないね」
テオは目を上げた。
一瞬、エリアスは、失敗を地面のせいにしてはいけないという大切さについて、説教を受けるのではないかと思った。
しかし、父は代わりに槌を差し出した。
「直せ」
「はい、親方」
広場の向こうから声が聞こえてこなければ、作業はもうしばらく続いていただろう。
「エリアス!」
タレンがこちらへ向かってきた。
濃い茶色の短い髪に日に焼けた肌。いつも目を細めているように見えるが、実際にはしっかり目を覚ましている。大事な知らせでも持っているかのような足取りだったが、実際には大した知らせを持っていないことのほうが多かった。
「お前が必要なんだ」
エリアスは槌を木の上に置いた。
「それは大ごとみたいだね」
「会議だ」
「もっとひどい」
タレンは返事を無視した。
「学校の物置だ。今すぐ来い」
テオは訪ねてきた少年を見た。
「こいつは仕事中だ」
「大事な用件なんです、サーンさん」
タレンは、目の輝きとは不釣り合いなほど真剣な口調で言った。
エリアスは父を見た。
テオは槌を指さした。
「出かける前に、その車輪を終わらせろ」
「もちろん」
「道具には誰にも触らせるな」
「もちろん」
「釘にもだ」
エリアスは少しためらった。
「釘にもね」
タレンはすでに歩き出していた。
「早く来い!」
エリアスは革のベストを手に取り、友人の後を追った。出ていく前に、柵の中へ最後の視線を向ける。
ファグリェイロが戻ってきていた。
今度は、口に釘をくわえている。
古い物置は学校の裏手にあり、草が高く伸びた敷地に建っていた。子供たちが親に返したくない物を隠す場所でもある。黒ずんだ木造の簡素な建物で、屋根瓦は継ぎはぎだらけ、扉は肩で押さなければ開かない。
エリアスが到着したときには、ほかの面々はすでに集まっていた。
短く刈った金髪のライレンは木箱の上に座り、目の前に並べた空の小麦袋を、まるで戦場の地図を前にした司令官のような集中力で眺めていた。
茶色の髪に赤いリボンを結んだセリンは、その様子を疑わしげな表情で見つめている。
エリンは木炭の欠片で地面に線を引いていた。小柄で、黒髪を乱れたお団子にまとめ、緑の目を鋭く光らせている。どうやら、この場で本当に規則を決めようとしているのは彼女だけらしい。
カエルは物置の広さに対して、あまりにも大きな場所を占めていた。背が高く、ひょろりとした体つきで柱にもたれ、額の上にリンゴを乗せてバランスを取ろうとしている。
ハーレンは扉のそばに立っていた。同年代にしてはがっしりした体格で、短く刈った黒髪と太い眉が目立つ。リンゴにも、小麦袋にも、会議にも興味がなさそうだった。それでも、彼が口を開けば、皆が耳を傾けるのが常だった。
「やっと来たな」とライレンが言った。
「緊急事態に呼び出されたのか?」とエリアスが尋ねた。
「ああ」
「誰か死んだ?」
「まだだ」
「なら、時間はあるね」
セリンが吹き出した。
ライレンは立ち上がり、まるで世紀の大発見でも披露するかのように両腕を広げた。
「明日、袋跳び競争がある!」
エリアスは床の小麦袋を見た。
それからライレンを見た。
「そのために呼び出したの?」
「ただの競争じゃない。賭けもある」
「ああ。それなら重大さが分かったよ」
「本気の賭けだぞ」とライレンは念を押した。「くだらない賞品じゃない」
「ジンジャーブレッドの席を賭けるとか?」とセリンが尋ねた。
「その通りだ」
「それはくだらない賞品よ」とエリンが指摘した。
「負けたやつは地面に座るんだ」とライレンが説明した。
エリアスはしばらく黙っていた。
「ライレン、午前中ずっとそれを考えていたの?」
「いや。昨日も考えていた」
そのとき、カエルの額からリンゴが落ちた。
リンゴは床に当たり、転がってハーレンの足元まで行った。
「風車の近くの坂でやろうぜ」とカエルが提案した。「まだ泥が湿ってる」
「そこで転んだら、二度と乾いた状態では起き上がれないな」とハーレンが言った。
「そこがいいんじゃないか」
エリンは地面に線を引き続けていた。
「距離と参加人数、それにコースから外れた場合の扱いを決める必要があるわ」
「コースから外れたら失格だ」とライレンが答えた。
「じゃあ、コースそのものが間違っていたら?」
「その場合は、コースを作ったやつが失格だ」
「意味が分からないわ」
「負けたのがお前じゃなければ分かるさ」
エリアスは壁にもたれた。
外では、村が祭りの準備を続けていた。槌の音や人々の声、車輪を引きずる音が、物置の隙間を通って聞こえてくる。風に乗って、焼きたてのパンと湿った土の匂いが漂ってきた。
しばらくの間、若者たちは、全員が泥だらけになって終わりそうな競争のルールについて議論した。
小さな子供たちに参加者をくじ引きで決めてもらうこと、袋はパン屋が用意すること、そして相手を押してはいけないことが決まった。ただし、事故だったと証明できる場合は例外とする。
エリアスは競争の実況を担当することになった。
リリアが彼の隣につく予定だった。
その名前を聞くと、彼は顔を上げた。
「彼女もそれに同意したの?」
セリンは微笑んだ。
「まだ聞いていないわ」
「じゃあ、どうして決めたの?」
「彼女は引き受けるからよ」とタレンが言った。
「それは、質問とは言わないんじゃないかな」
「会ったときに聞けばいいさ」
エリアスは首を横に振った。
会議はさらに数分続いた。ようやく外へ出たころには、太陽はブレイデンの屋根を照らすほど高く昇っていた。
広場では、何人かの子供たちが自分たちの腕には大きすぎる旗を運ぼうとしていた。そのうちの一人がつまずき、旗は帆船の帆のように、ほかの子供たちの上へ覆いかぶさった。
エリアスは笑った。
いつもと変わらない朝だった。
そして、ありふれた朝というものは、いつだってそうであるように、いつかその朝を懐かしく思う日が来るなどとは、そこにいた誰一人として想像していなかった。




