第15話 どれがいい?
「変な子だった……」
鍛冶師の少女は不思議探偵がホテル替わりにしている船を肩ごしに見ながら、来た道を歩き出した。
まあなにはともあれ、今日の仕事――つまり人生初のお客さまへの譲渡は終了だ。
「ふへへ」
なんとも言えぬ心の高揚が妙な笑い声となってもれてしまった。鍛冶師の少女は慌てて口を閉じると周囲を見回した。くすくすと笑われている。
(しまったぁ……)
自然と帰り道をゆく足が速くなる。仕事の終了で気が緩んだのもそうだけれどヴォワと逢えたのが嬉しかったのだ。また来よう。
そんな鍛冶師の少女が角を曲がった時。
「え――」
いきなり耳に届いた空気が抜ける音。鍛冶師の少女は目だけを動かして様子を確かめた。注射銃が見えた。打たれたのかな? 鍛冶師の少女は強烈な眠気に襲われてふらついて二・三歩たたらを踏む。鍛冶師の少女を撃った男は彼女を抱えると素早く車に乗って――
「――⁉」
ガラスを貫きドライバーの喉に真っ白な刀が刺さった。次いで鍛冶師の少女を撃った男の喉にもだ。
「やれやれ、言ったそばからこれだ。まあいい。重要な器官は避けて刺した。死にはしないが病院、行った方がいいよ。
さて、ほら、起きたまえ。えっと……雲母エアラリス、だったね。可愛い名だ」
名前を呼ばれて、エアラリスは必死に頭を動かした。ヴォワがエアラリスの口になにかを入れる。
「中和剤だ。飲みたまえ」
言われた通りにエアラリスはノドを鳴らしてそれを飲んで。
「……辛っっっ!」
「それはよかった。目は覚めたね」
「覚めました。なんて強烈な味……」
「で、エアラリス? キミには四つの道がある。
一、ここ日本にいたままボディーガードを雇う。
一、どこぞの宗教に身を寄せる。
一、なにもしない。
一、私に雇われともに戦う。
どれがいい?」
そんなのもう決まっている。
「四つ目ですー!」
エアラリスは思わずヴォワに抱きついた。惚れた。
「斬るよ?」
「あはん」




