21. 初めての女子会
「みなさん、今日は集まって下さってありがとう。おかげさまですっかり体調も良くなったわ」
わたしは目の前の四夫人ににっこりと微笑んだ。四夫人は笑みを返してくれたものの、緊張しているようだ。お互い様子を伺っている事がわかる。
そりゃそうよね。普通は恋敵。いや政敵って言ったほうがいいかしら?どっちにしろ敵は敵だもの。
前途多難とは思いつつもいつも通りにお菓子を勧め、まずはわたしから話を切り出した。
「夏姫さま、園遊会での演舞、本当に素晴らしかったわ!『胡蝶』の皆さまも大活躍でしたね!」
「もったいないお言葉です。本当になにもかも陽花さまのおかげでした。特にあの男装の剣舞は思った以上に好評で」
「それならわたくしも知ってますわ。妃さまたちの何名かが、夏姫さまにお手紙を書いたのでしょう?」
口を挟んだのは秋明さまだ。さすが耳が早い。今、後宮では男装の夏姫さまに恋してしまった女人が増えているのだという。女同士だから咎められることもなく、堂々と口に出せるところが女たちも気楽なのだろう。ふふふ、狙い通りね!
「それで秋明さまは、新作はそっち方面で?」
「ええ、陽花さま。男装の麗人というのはなかなか熱い展開かと!」
「?新作って何の話です?」
と、聞いたのは夏姫さまだ。
「秋明さまは、陽花さまのご依頼で小説を書いていらっしゃるのですよ。それがものすごく面白くて、陽花さまにその小説を共有頂いた私もすっかりはまってしまいました!」
「わ、わたしも!秋明さまの書いた小説、全部読みました!本当に面白かった、最後の場面が特に素敵で」
と、説明するのは雪麗さまと春蘭さま。
「まあ、それじゃあ皆さんわたくしの小説を読んでくださってましたの?」
秋明さまは目を丸くして驚いていた。それに答えたのはわたしだ。
「もちろんよ、秋明さま。わたし、良いものを独り占めするほど心の狭い女じゃないですよ?ああ、あとで夏姫さまにもよければお貸ししますね!舞の稽古がある時にお貸しすると、体に良くないかもと思って」
「体にですか?」
「ふふ、なにしろ秋明さまの小説は続きが気になりすぎて、夜も眠れなくなるんです。だからですわよね、陽花さま?」
「ええ!お稽古で疲れてるのに読書で徹夜させたら悪いわ」
「わ、わかります!続きが気になりすぎて、食事もまともにできませんでした!」
わたしと雪麗さまと春蘭さまは顔を見合わせて笑った。秋明さまは自分の小説がまさか他の妃たちにまでこれほど喜ばれていたとは思わず、感動しているようだった。
「そういえば夏姫さま。あの衣装の刺繍、いかがでした?」
と、おもむろにわたしが尋ねると、
「あ!そうでした!陽花さまが私に用意下さったあの衣装、とにかく刺繍が見事で……!あんな素晴らしい刺繍見たことありません。きっと最高級の職人に依頼して下さったのですね」
「ふふ、それがねぇ、あれを刺繍したのは春蘭さまなんですよ」
名前を挙げられた春蘭さまは真っ赤になっていた。夏姫さまは唖然としている。
「え……!あの刺繍、春蘭さまが!?」
「は、はい、その、陽花さまのご依頼で。僭越ながら私が夏姫さまのお衣装の刺繍を担当しました。その、喜んで貰えたのなら光栄です……」
春蘭さまは下を向いて答えたが、夏姫さまはそんな春蘭さまの手をがしっと掴むと、感動の目を向けた。
「あの刺繍、とっても素晴らしかったですわ!あんな素晴らしいものを用意下さったのだから頑張らねば、と私は自分を鼓舞したものです。本当にありがとうございました!」
「そ、そんな。お役に立てたなら幸いです……」
「ふふ、よかったわー、春蘭さまのご協力もようやくお伝えする事ができて。でも協力して下さったのは、春蘭さまだけじゃないのよ?」
え?と、夏姫さまと春蘭さまの視線がわたしに集まった。




