運命の出会い
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ここは日本のとある公立中学校
この中学校は公立ながら2つの特色がある
1つはスポーツの成績が優秀であること
特に学校が力を入れている訳ではないのだが、毎年のように優秀な成績を出している
今年も野球で全国大会に出場したほどだ
そしてもう1つが
「おぅそこの野球少年ちっとこっちこいや」
「え?何ですか?」
授業が終わり、これから部活動の時間のようで
生徒がそれぞれの部活のユニフォームに着替え練習場に向かう最中
校舎から少し離れたグラウンドに向かう野球部の少年に
見た目完全にそっち系
しかし着ている服はブレザーというなんともな少年?が脅s話しかけていた
ちなみにこのブレザーは同じ市内の中学校のものである
「お前さんの学校によ
東條ってのいんだろ
ちっとそいつ呼んできてくんねーかな」
どうやら探し人がいるようで
言葉遣いは全く出来ていないが
どうやら野球少年に危害を加えるつもりはないようだ
「東條?いやぁわかりませんね」
対する少年は相手をするつもりがないのか
思い出す素振りも見せずに即答する
「あぁぁぁん!?てめえこっちが丁寧にモノ聞いてんのに随分じゃねーか
おぅ!?」
全く丁寧な聞き方ではなかった気がするが
いきなりキレだした男に
さらに面倒になった野球少年は
「はぁ…東條先輩のことですよね
多分そろそろここ通るんじゃないですか?
あの人帰宅部なんで」
そう言ってグラウンドの方に歩き出してしまった
これでは男がぶちギレるのではないかと思うが
だが男がぶちギレることはなかった
もう野球少年のことは眼中にないのか
校舎の玄関の方を学生とは思えない目付きで見ていた
「うるぁぁぁ東條!!」
門の方に歩いてくる東條と呼ばれる男に
まだ数十メートルは離れているのに
大声と言うにはいささか大きすぎる大声で名前を呼ぶ
周りを歩く下校中の生徒がびっくりしているのは言うまでもない
「うちの舎弟が随分世話になったみたいじゃねーの
たっぷり礼しに来てやったよ!?」
ずんずんと肩を怒らせ東條と呼ばれる男に近づき
華やかな繁華街
とは言えないが、そこそこに店の立ち並ぶ通り
酔いつぶれ道端に転がる者
学生グループなのか男女混じって楽しそうに歩いていく者
「ゲホッ…
うぅ…ゴブッ…もう勘弁じてください」
丑三つ時
街灯も疎らな路地裏で3人の男がいた
「何を言うかと思えば
勘弁して欲しいのはこちらの方だよ
私が一体何をしたと言うんだね」
内2人は勤務中の警官で、年齢的に先輩後輩の間柄だろう
初老で背は低めの血塗れの警官
20代前半程の細身で背の高い血塗れの警官
「先に言いがかりをつけてきたのはそちらだろう?
1人はボサボサの髪に無精髭、細身でラフな服装の血塗れの男
状況は正反対なのに互いに血塗れなのは
片方は外傷が原因で
片や返り血が原因で
そう言って再び暴力を振るい始める男
程なくして意識を無くしたことで興味が失せたのか
血だらけの姿に一瞥をくれることもなくその場から立ち去る
「全く…酷い言いがかりだったな」
「そうですね先輩」
警官2人は降りかかった血そのままに夜の町に消えて行った
法が支配する無法の時代
――――――
日本のとある場所にて
「おい!てめえ!
冷蔵庫の俺のプリンまた食ったろ!?」
「え?食べたけど何?」
「てんめえぇぇぇッ!
ちゃんと名前書いといただろうが!」
「うんあったね」
「おい!あれ限定物だから滅多に食えないやつなんだぞ!?
お前が前に『誰のかわからないのがいけないんだよね』って言ったからわざわざ書いたんだろうが!!」
「そうだね☆」
「そうだね☆
じゃねえぇぇぇぇ!お前ぇ!俺がどんだけ楽しみにしてたと思ってんの!?」
プリンを食べられたと喚く30歳前後の色黒の肌にゴリラも真っ青な筋肉、某国の軍人のように短く刈った髪の男
「良く考えてくれ
お前が楽しみにしてたプリン
つまり俺も楽しみにしてたってことにもなると」
人のプリンを勝手に食べ、自分勝手な事を言う20代前半ぐらいの程よい筋肉質な体に黒髪オールバックの髪型、顎に整えた髭を蓄えた男
「だから何!?
それ食って良い理由に全くなってないからね!?
はぁ…もういいや
お前に口で勝てるわけねえしな」
尤もなツッコミをして、軽くため息を吐いた
「まぁ悪かったよ
今度埋め合わせはするからさ雄次郎」
"雄次郎"
親になんとなく強くなりそうな名前という理由でつけられたが
親の願い通りの逞しい体に育ったようだ
「はぁ、暫くは買いにいけねえんだからな
絶対だぞヒカル?」
"ヒカル"
明るく皆を照らすような
そして太陽の様に大きくなってほしいとつけられた名前は
少し前までの会話からは真逆の成長をしてしまったように思えるが
「でもまぁお前にゃいつも世話になってるかんな
今回は俺の奢りにしといてやんよ」
日頃の行いか人徳であろうか
少なくとも真逆には成長していないようだ
「それよりこの後会議だろ
そろそろ行くべ」
そう言って雄次郎はヒカルの肩に手を置き休憩所のような部屋の出口に向かっていく
「あぁもう時間か
じゃ行きますか」
ヒカルは先程のやり取りを思い出してか、軽く笑みを浮かべ雄次郎の後に続いていった