出会い
朝、冬美アパート2階、108号室。俺は起きたらまず洗顔をした。今朝は特に目やにが酷かったので、入念に洗顔をした。その次に歯磨き。朝食すら済ませていないのでまぁちゃちゃっと。部屋に戻り、壁にかけてあるハンガーから制服やら、Yシャツ·ズボンを取り、とりあいずズボンとYシャツを着たが、制服は…行くときでいいか、と割り切り部屋をでた。リビングへと行くと母·奏子の姿が。
「ふぁぁぁ…おはよう、悠」
「おはよう、母さん」
すると、ひょこひょことキッチンから、妹·春咲が片手に水入りコップ、片手にカプセル型の錠剤を持ちやって来た。5日くらい前に部屋の大掃除をやっていたから、その時に風邪をひいてしまったらしい。
「おはよう、風邪大丈夫か?」
「おはよう、もう治ったと思うけど、一応薬をね。そんなことより…お兄ちゃんこそ大丈夫?」
「?…なんのことだ?」
「ほらあれだよ、あれ、今日入学式だけど…」
「あ、あぁぁ、あれか…」
妹が言いたいのはどうやら俺の過去の黒歴史、つまり中学2年の頃にかかっていた「中二病」のことだろうと思う。
「んまぁ、大丈夫…だと思う。」
「ふ~ん、でもまぁあの頃のお兄ちゃん本当に変だったからなぁ…本当に大丈夫?」
「大丈夫です」
と、ここで母さんが話を折るように割り込んできた。
「ところでさぁ、時間大丈夫?」
「「あっ!」」
「って、母さん早く朝食作ってよ!」
「はぁ~い」
母さんは、やる気のなさそうな返答のあと「トーストで済ませようかしら」などと言ってキッチンへと向かっていった。
「そういえば、入学式行った方がいいのかしら」
「いや、いいよ高校生の入学式なんだし」
そう言い残し俺は、部屋へと戻った。
場所は変わり、ここは冬美アパートから約1kmくらい離れたとあるバス停だ。そこで俺は少しばかり焦っていた。俺のいる立ち位置から少し離れた所に、俺と同じ制服を着た少女がいた。それが問題だった。俺が通おうとしている桜ヶ丘高校には、徒歩·自転車·自動車·バスなどの4つに登校方法が限られている。しかし、バスでの登校方法は物凄く離れた所からの登校からに限られる。そう、ここからだ。誰もこんな所から行こうなんて考えない。だから桜ヶ丘高校を選んだ。うちの中学から行く奴が誰もいなかったからだ。全て過去の黒歴史を葬りたいという一心で選んだのに…今、同じ学校に行こうとしている人がいる。もしかしたらだが、そんなことあり得ないが、こいつは、俺のことを知っている―? そんな事を考えていると…
「同じ学校?」
「あ…あぁ」
不意に話しかけられたので口から漏れた言葉で返答した。少女は黒髪のロングで、前に垂れ下がっている髪は赤のリボンで止められている。顔は小さい卵型で、瞳は髪と同色の黒と薄く紫がかっている。身長は150~165cmくらいだ。
「どこ中出身?」
「それは、言わなくてはいけない?」
「うっ…」
それもそうか。会って数秒の他人に自分の個人情報を言う奴なんかいない。
「引っ越して来たばっかりなの。ここらへんの地域は、あまり知らなくて」
「ふ~ん」
内心「よっしゃ!」と思ってしまった。まぁとりあえずこいつにはまだ知られていないようだ。
「バス来たわよ」
「おっ」
ようやくバスが到着した。時刻表の時刻から、5分遅れている。バスから降りたらはや歩きをしなくてはいけないな、と思ったがそんなこと考えてられない。満席だ。立とうにもつま先立ちしなくてはいけない。彼女は座っている。自分も座わりたいが、どうやら彼女の横がゆったり立てそうだ。
「すまん、少し捕まるぞ。」
「どうぞ」
こんな感じで俺の高校生活が始まった。




