第四節
あいも変わらず文章力がありません
素人には難しいです
「てことは柳谷は今後俺達と一緒に行動するわけか。仲間が増えるのはいい事だな!」
「そう簡単に割り切れるお前も凄いよ。こいつが死ぬ可能性なんてアホほどあるんだぞ」
先程の広場の車両に戻り事情を二人に説明した。この大型車両は輸送用大型コンテナを三つ並べ、さらに上にもう1セットを載せたような形をした装甲車両でその広さから部屋も多い。バベッジに連れられ二人の待機している部屋に座っている。暫く喋っていると柳谷もこの空気感に慣れ始め、敬語を使うのをやめていた。
折りたたみ式の寝台と窓だけのシンプルな部屋で広さは四畳半程。男三人なら特に問題はない広さだが荒木が床にシートを敷き銃の手入れをしているので柳谷と神崎はそれなりに狭苦しい思いをしている。荒木の銃は大型の狙撃銃のようで、足元に拳銃らしき銃も置いてある。
「しかし柳谷って地味に凄いよな。魔獣を魔術無しで倒すなんてなかなかできる事じゃないぞ」
「アレは色々と幸運が重なってたというか、綱渡りの連続だったよ。あぁ怖かった」
柳谷自身、あんな事が出来たのが不思議だった。人間は追い詰められるとあそこまで力を出せるのか。
「この任務が終わったらしばらくは休みだな。その間に柳谷の訓練が開始されると思うが、大丈夫か?」
「まぁ、選択肢は無さそうだしやるしかないよ。どうせ自由になったってロクな目に合わなさそうだしこの会社にいるのが一番安全なんだろうな」
狭い中で喋っていると外からけたたましい音が聞こえてきた。ブルドーザーのエンジン音を巨大化したような音と、ヘリコプターが着陸する時のような空気音が響く。
「おっ交代連中が来たかぁ、じゃあそろそろ出発かな?弘ぃ、もう二番隊の怪我人は載せてるよな。特戦はこの後どうだっけ?」
「特戦?二番隊や三番隊はわかるけど特戦って?」
「特殊戦略隊、略して特戦よ。ウチの会社は6隊まであって、一番隊と二番隊と三番隊、あとは工作隊に訓練隊。あとは俺たち特番隊だな。お前が所属するのも特戦隊な」
「え?訓練隊じゃないの?」
「俺たちみたいに日本のある世界から来た奴は基本的に特殊戦力扱いらしいぞ。まぁ普通戦力として扱うとしても通常の魔術は使わないしな」
会話が終わる前に、この大型車両がけたたましい音を鳴らし始めた。こちのまま移動を開始するのだろう。
「そういやどうやって森を越えるんだ?この車だとデカすぎで木にぶつかるんじゃないか」
「あぁそっか。簡単にいうとな、この車飛ぶんだよ」
「……………………ちょっと慣れてきた」
柳谷も流石に順応し始めていた。最早、この巨大な車が飛んだって不思議ではない。馬鹿でかい飛行機が空を飛ぶんだからこれが飛ぶのも普通だと。
けたたましい音がさらに騒がしくなると身体を襲う浮遊感。窓の外を見ると既にこの車体は空を飛んでいた。
「どうやって飛んでんだ?念力なわけないよな。ヘリコプターみたいに揚力で飛んでんのか?それとも単純に推力で?」
「聴いた限りではグライダーが近い。土の魔術を使って軽量な、シリコンに近い素材の羽根を作りそれに風の魔術を使って気流を発生させて飛ぶんだ。ホバリング時には火の魔術を使って気流を作って飛ぶが、後は風に乗るらしい」
窓の外を見ると、なるほど車体の横には半透明の羽根が生えている。この大型のコンテナのような車体がまるで鳥になったように飛べるのも、全長30mはあろうこの羽根のおかげか。
「すいませーん、三人とも揃ってる?」
ドアの外からハルクスエさんとは違う女性の声がする。その声を聞くと同時に荒木が身構え、その荒木を見た神崎も扉から離れる。今入り口の側にいるのは柳谷だけだ。
「おっーす!どうも新しい特戦の人!私はぎゃあ!」
ドアが開くとともに社員のジャケットを羽織った女性が倒れこんできた。入り口でズルリと滑り転んだようだが、ここは男三人四畳半、入り口間際にいた柳谷は倒れこんできた女性のボディプレスが直撃する。
「あぐぅ!!??」
「ごふっ!?」
他の二人は呆れたような顔で女性を眺めているが柳谷は早く助けてほしいところだ。重い荷物を背負っているようでまるで米袋を投げつけられたような衝撃、先程肩甲骨を骨折していた身としてはあまり嬉しいものではない。
「あーもう!なんでここの床は場末のラーメン屋並みに滑るの?うちの店の味ですーとか思ってかー!」
「スズラ先輩、そこはそんなに滑らないし転んだ原因は貴女が走る途中で落としていた書類だよ。柳谷にとって大切な書類なんだから大切に扱ってくだせい」
「あぁごめん、ところで柳谷君は?」
「押し潰してますよ、アンタが」
それを聞いたスズラは悲鳴をあげ、謝りながら柳谷の上から退散した。柳谷がうどん生地のように伸びきる前に退いてくれたのは良かったが、一体何事だろうか。
「誰なんだこの人?神崎わかる?」
「スズラ・ロベリア。特戦所属でうちの班のメンバー。体感しての通り、非常にドジで危険だ」
「なんだとぅ!誰がドジじゃぁ!」
神崎の言葉に条件反射のように反応して襲いかかる。首に腕を回しヘッドロックを決めようとするが神崎はその両腕を掴み子供をあやすように万歳させる。
「狭い部屋で暴れんで下さい。それと荷物と書類はどうしたんですか?」
「あっ忘れてた!」
そういうと背中に背負っていた巨大な長方形状のアタッシュケースを降ろす。かなりの大きさで、スキーバックほどあるのではないだろうか。
「これ柳谷さんの装備、予備の装備を引っ張ってきたらしいよ。あと、そこら辺に散らばってるのが契約書と身分証明書ね」
入隊を決定してからそれほど時間は経っていないが、かなり手早い準備だ。いや、もしかしたら柳谷を入隊させる為に最初から準備していたのだろうか。
「開けてみて。まずは身なりからキッチリしたほうがいいよ、形から入るのも大事」
促されるままにアタッシュケースを開く。中にはハルクスエを始め特戦や別部隊の人も来ていたこの会社のジャケット。片刃と思わしき日本刀やサーベルに似た剣が一振り。その片刃剣と大小揃えるかのような小刀。小型ナイフが二本。そして荒木が整備しているのと同じ形状の拳銃。両手両足につけるであろう、関節保護のためのプロテクター。映画で見るような、特殊部隊が身につけていたものに似ている手袋。スパイクのついた靴。
その装備の多さに驚きながら、確認のために全ての装備を身につけてみることにしたが。
「重い!なんじゃこりゃあ?」
「えぇ?これでもだいぶ軽量化してるんだよ?ジャケットは衝撃に強い糸を吐き出す険曽蜘蛛の糸と耐熱に優れた火牛の皮の合成繊維。関節を守るプロテクターは樹脂の保護部分に白色鋼と炭素の合成金属の甲。この防御力を公国軍の装備で実現しようとしたらその倍の重量があるよ」
「まぁ15kgくらいだな。いつも着用して生活したらすぐ慣れるしずっと着ていたほうがいいぞ」
特殊部隊の装備は15〜30kgほどだとされており、それを考えればかなり軽量的な装備だと言えるだろう。
「じゃあ書類にサイン押してバベッジさんに提出しておいてね。あと、その装備は肌身離さず身につけておくようにしておいて。訓練は明日から開始だから」
飯を食べる時もつけたままなのだろうか、と考えながら、とりあえず書類に目を通すことにした。
誤字脱字がございましあら一言お寄せ下さい