第24話 忘れていた記憶
夕食後、シャルロットはテオドールの執務室を訪ねた。
「テオドール様、仕事に行く前に声を荒げてすみませんでした」
シャルロットが頭を下げると、テオドールは手で制しながら口を開く。
「謝罪より、君が声を荒げた理由がどうしてもわからないので教えてほしい」
「あれは……今思うと、私の心配はするのにご自分の心配をしないところにイライラしたんです。もっとご自分を大切にしてください」
「成程、理解した。私も君の身を心配する気持ちで休めと言ったのであって、支配したいわけではない」
「それは伝わっておりますわ。テオドール様は私の両親とは違う」
シャルロットの返事にテオドールはただ「そうか」と言った。
(テオドール様、無表情だけれど空気がふっとゆるんだ気がする)
そんなことを考えていたシャルロットは、もうひとつテオドールに伝えなければいけないことを思い出す。
「甘いデザートを沢山用意してくださってありがとうございました。どれも私が以前特に気に入ったと言ったのを覚えていてくださったんですね」
「私は記憶力がいいからな」
テオドールは相槌を打った後、何か思い出した表情で「そうだ」と呟いてシャルロットの方を向いた。
「昼間伝えそびれたが、来週は母の命日があるので、グレイヴン領へ行く」
「あっ」
「? どうかしたか」
「あの……先日テオドール様から拉致犯の情報を得るために額に触れたのですが、その時に無意識に別の記憶も読み取っていたようで、その記憶の夢を見ました」
「ほう……、そんなことがあるのか」
「力をコントロールできるようになるまでは、結構ありました」
「そうか。それで、どんな記憶が視えたんだ?」
「幼いテオドール様が、壊れてしまった馬車を指さして『この馬車をとっといてほしい』とセルジュと言う使用人に頼んでいました」
シャルロットの話を聞いたテオドールが驚きで目を見開く。
「なに!? ……それは、母の馬車事故の直後の記憶だ。私はその時の記憶がなくなっていたが、言われて思い出した」
「そうなのですね……」
(なくした記憶を思い出させてまずかったかしら……)
「ありがとう。命日に行った時にセルジュに聞いてみよう」
「はい」




