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Lythrum  作者: 赤井 てる
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「ヌラ」Part5

「コラー!どこ行ってたのー!」


 A35格納庫に入ると、怒った教諭が両手を上げながら来た。


「す、すみませんでした…!」


 少女は深く頭を下げて謝る。

 格納庫内は油と鉄の臭いで満ち、数機のArmsが残っていた。


「…まぁ見た感じ、少年の介護してたようだから特別に不問にするけどさぁ」


 リースは、ヒメカの後ろで何故か怯えているユウキを見てそう言った。


「…いやぁ、少年も見つかって良かった」


 この少し前、A35格納庫に少年を連れてくるはずのアメリアが一人で来たので、ユウキの所在を聞いたところ、「…知らない」と強めに言われたので唖然としていた。


「皆には感謝感謝!それにしても、君達次々と美乃ちゃん探しに行くからびっくりしたよ。人気者だね」


「そりゃあ生徒の中で最年少ですから。心配になりますよ」


 怖気を感じる青年がそう言う。


「………」


「その心意気、とても大事だ。―――んじゃあ、今から早速君達にも戦闘訓練をやってもらうんだけど…」


 そう言うとリースはキョロキョロと周りを見渡した。


「お、いたいた!おーいクレイー!」


 奥のArmsの足元にいた男に向け手を振る。

 するとこちらに気付いたクレイは早足で駆け寄ってきた。


「全員揃ったんだ」


「うん。この2人の事お願い」


 そう言ってリースは青年とカズトを見る。


「異人の2人はここから先、このクレイ副教諭の指示に従うように」


「「了解」」


「ではこちらに」


 副教諭に促され2人は後を着いていく。

 その際、副教諭とカズトが何か会話しているのが聞こえた。


「ノーマル組は私に着いてきて」


「…了解」

「…」


 教諭の命令にリュージが後を進み、ヒメカは「先輩」と呼び掛け、手を掴むとその後ろを着いていった。


 ―――そして格納庫奥の更衣室の前まで移動する。


「じゃあ君達パイロットスーツに着替えてきな。少年は…」


 …チラとリュージを見る。


「…一先ずここで待機」


「分かりました…」


 そう言いうとヒメカは兄を見る。リュージはユウキを睨み付けるように見るが、「…ああ」と更衣室の中に入っていった。


 …それから数分後、黒と灰色のパイロットスーツに着替えた二人が更衣室から出てきた。


「お、二人ともよく似合ってんじゃん」


「…あ、ありがとうございます…」


「…ハァ」


 リュージは小さく息を吐く。


「では早速出撃させていただいても?」


「……」


 …いつもならリュージの強い言葉に注意をするが、今は意に介していなかった。

 ユウキの事を見ている。…さっきと同じく下を俯き、酷く怯えている。

 …心配だった。


「…あぁ構わないよ。訓練の内容と評価方法は事前に送ったメールの内容通りだ。健闘を祈るよ」


 それを聞いたリュージは「…了解」と言い、その場を後にする。

 ヒメカも「はい…」と言うが、足が動かなかった。


「――そんな心配しなくても大丈夫だよ」


 するとその様子に気づいたリースが言った。


「今回少年は私が付きっきりで見ることになってる。だから今は訓練に集中してきな」


「……はい…」


 ……


 …ヒメカは一瞬ユウキを見ると、リースに深く頭を下げ兄の元を追いかけていった。


「…まだ12歳で死地にか…」


 …ヒメカの後ろ姿に、リースはそう歯痒いように言う。


「…よし、じゃあ少年。君もスーツに着替えてきな」


「……っ…⁉」


 ――教諭の命令とともに、またあの言葉が思考を埋め尽くす。青年の言葉も相まり恐怖に呑まれたユウキは更衣室の中に歩き出した。


「…あの壊れる寸前の状態でほんと大丈夫かな」



「……っ」


 ユウキは更衣室に入ると、焦りながら周囲を見回した。


「――」


 正面の壁に手形が表示された液晶端末がある。

 ユウキは突き動かされるようにその前に立った。


「―――そうそう、その画面に手を置けばその排出口から個人のスーツ出てくんよ」


「覗きロリ教諭参上」と後ろからリースの声が聞こえた。「置きなよ」とユウキの横に止まる。


「―」


 …無意識に頬に涙が伝う。…そして、言われた通り液晶に手を置いた。


「………」


 ……やっぱまだ壊れてないね。


 リースは苦渋の表情をする。

 端末から電子音が鳴り、駆動音が聞こえるとともに排出口からパイロットスーツが現れた。


「んじゃあ、それ持って着替え終わったら外に出てきて」


 後ろを振り替えり、教諭は更衣室から出ていく。


「―――あ、そうそう、着る時は下着脱いでね」


 ドアが閉じる音が聞こえ、その場が静寂に変わる。


「――」


 ユウキはスーツを掴み、教諭に言われた通り動く。

 …直ぐ様服を脱ぐが、パイロットスーツの形が目に入った瞬間、動きが止まった。


「…………」


 ―――頭に違和感を感じた途端、過去のものなど比較できない程の激痛が襲う。


「――ッ!!!!!」


 ユウキは頭を押さえ、その場に倒れ込んだ。


「――がッ―あッ!!!!」


 視界が点滅する。のたうち回り、涙声混じりの苦痛を上げる。


「…はぁ…っ!はぁ…っ!」


 気づけば、頭痛が治まっていた。

 …周りの床に涙の粒が零れ落ちている。



「…様になってんじゃん」


 更衣室から出てきたユウキに、リースはそう言った。


「…じゃあ着いてきて」


「……」


 格納庫奥に歩くリースの後ろをユウキは力弱い動きでついて行った。

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