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49 とある隊長の賞賛

言いがかり二人組を捕まえた警備隊の隊長のお話です


地元のボスから賄賂を貰って出動を遅らせた人です


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「誰に頼まれた」


そう聞くが、つかまった二人とも目を逸らした


どうやら話す気が無いようだ





まあ、話されても困るんだがな


オレが賄賂を貰っている地元のボスなんかの名前が出てくると厄介だ


いや口を開いたら絶対に出てくる


そうしたらどうしてくれるんだ、と文句をいいたくなるくらいのトラブルだ




世の中は微妙なバランスの上に乗っているんだ


本当のことを言ってもだれも喜ばない


逆に迷惑千万だ


余計な事は何も言わずにただ「機嫌が悪かったのでつい言い過ぎた」とでも言っておいてくれ


その流れに乗っていけば波風が立たずに ~ちょっとの罰金は払うが~ で釈放だ






余計なことを言ったら、釈放、即、天国行きだぞ


だから喋るんじゃない


喋ってくれるな


オレ達はおまえらの遺体を片づけたくないぞ


仕事を増やすなよ


お互いにシロウトではないんだから間違えるな


そう目で訴えた





どうやらわかってくれているようだ


じっとオレの目を見た後、目を逸らしたからな





まあ、白状しろって言っても本当の黒幕は知らないだろう


御貴族様か、どこかの大商人ってところだろう


あるいは小さな商人が集まって、かもしれんな





黒幕はさておき、このまま黙秘していれば、依頼主当たりが金をバラまくだろう


あるいは脅し ~脱税とか密輸とかな~ かもしれんな


汚い手、つまり裏工作をするだろう


それで釈放


真実は闇の中


よくあることだ





警備隊の隊長ともなると清濁併せ飲むくらいの度量が求められる


悪党に便宜を図り、黒(有罪)でも白(無罪)にするくらいの、だな


裏に御貴族様がいたら鉄板だ





それに比べれば店で騒いだくらいのことは軽い軽い


小さすぎて良心の呵責なんて全くないな





まあ、最初のうちはあまりの身勝手さとそれに付き合わされる己の身を嘆いたものだ


だが、もう慣れた


この街は私利私欲に走る奴らばかりだ


そんな奴ら相手に真面目にやってもバカらしい


お互いに食い潰しあえばいいんだよ


こちとら金だけ貰ってあとは勝手にやってもらおう


勝手に潰しあいをしてくれれば数が減って、街が平和になる


イイとこ取りで願ったり叶ったりだ





平の隊員だったときは良かったな


ただ騒ぎを起こしたヤツを取り押さえるだけでよかったのだから





隊長になった途端、街の裏社会のボスから接触があった


お互いに仲良くしましょう、と言われた


代理にの人間に、だけどな





最初は黙認はするが、慣れ合わない


そう言おうとした


でも前隊長 ~定年になったので退職した~ に相談したら出された手は握っておけとアドバイスを受けた


しないとどこかで足を引っ張られてとんでもないことになるそうだ





それから裏の社会とのつながりが始まった


最初は慣れなかったな


組織の人間が捕まった時には ~軽い罪の場合だけだが~ 口利きをして釈放することに、だ





貰った金はしっかり隠した


証拠隠滅だな




しかし誰からも苦情が来なかったのでこんなものか、と思った


バレるんじゃないとドキドキしていたことがバカらしい


世の中はオレが思うよりも腐りきっていた





今回も、とある店で騒動が起こるから出動を抑え、時間を稼ぐようにと依頼があった


出どころは御貴族様か、商人かは判らないが、ロクな所からではないのは確かだろう


まあ、いわゆる良くある話


商売の話がこじれてのイヤガラセってところだろう


お互いに潰しあってればいんんだよ





真面目にやるのもバカらしい


それなりに適当にやっておこう




と思っていたらイヤガラセをしていた奴ら ~なんか見たことがある~ が地面でのたうちまわっていた


なんでだ?と思ったら店が最悪だった


アンタッチャブルのアマン商会だった





オレは日にちと時間だけしか知らされてなかったからな


店の名前までは聞いてなかった


いや、勇気あるな、こいつら





よくちょっかいをかけられたものだと呆れたな


曰く、夜中に押し入った奴らが二度と帰ってこない


曰く、店員にちょっかいを掛けたヤツがボロぞうきんのようになって町はずれに転がっていた


曰く、敵対した他の店がつぶれて主人の家族から店員に至るまで全員が行方不明になった


曰く、御貴族様だって敵になったら潰される


今、一番ヤバい店だった






因縁をつけた奴らが地面に転がっているので何をしたのかと会長の小娘に聞いてみた


「とっさに小麦粉を投げました。目に入ったようです」


平気でウソをついていた






こいつらの様子を見るかぎり絶対に小麦粉ではない


もっとヤバいものだろう




ただ目にゴミが入っただけでここまで地面を転げ回るなんてことは絶対にない


そんなものは見たことも聞いたこともない


毒か?とも思ったが、全身に水を掛けられていたので証拠がない


文字通り水に流されていた





ここまで徹底して潰したのを見ると逆に清々しくなるな


お互いに潰しあえば良いとは思っているが、実際に潰れることはほとんどない


それがここまで潰してくれるとスカッとする


いわゆる害虫駆除


ある意味、応援したくなった





だから応援しているぞ!、との意味を込めて


「ああ、小麦粉ですか、まあ、こんなこともあるかもしれませんな」


とりあえず玉虫色の対応をしておいた





「ええ、本当に痛そうですわ」


私は心を痛めていますとの表情で返事が来た


どうやら伝わったようだ


本当にイイ性格しているな





これからも手は貸さないし、手助けもしない


でも、もしも最悪のことが起きそうだったら一度だけ応援をしやろう


そう心に決めた

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