表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/34

33 EP 新たな門出

本日、3話更新です。お手数ですがお戻りになってください。

(3/3)

いよいよ最終話です。皆さん、今までありがとう。

 青空の下、セシルとロナウドは港湾都市に来ていた。

 奇しくも5年前に追放されたあの港である。


「ふんふん」と上機嫌に鼻歌をうたうセシルが、目的の船を見つけた。

 クリス商会の船だ。


 あの時と同じ船長が、

「お嬢さま。お待ちしておりましたよ」

とにこやかに言い、2人は握手をする。


「ところで、お父さまとお母さまは?」

 こっそりと船長にたずねると、船長は片目をつぶってウインクした。

「大丈夫です。まだバレてはいませんよ」


 とたんにホッとするセシルとロナウド。

「……もう(あきら)めわるくって、神殿の人も聖女さま聖女さまって。私はならないって言ってるのに」

「ははは。まあ、仕方ありませんな。あれだけのことがあっては……」

「私は、ただロナウドと冒険したいだけなんだから」


 ぶつくさといいながら、船内に入る。船長が、船員に指示を出し、船は(けい)(りゅう)していたロープを解いて(いかり)を上げた。

 船はゆっくりと動き出していく。


 ――また来るわ。だから、またね。私の故郷。


 セシルはロナウドと甲板に並んで離れていく街を眺めていた。


 その時、一台の馬車が猛スピードで港に入り込んできた。スタンフォード家の紋章がついている。


 セシルが、

「やばいっ! 見つかった!」

と言い、船長に「急いで!」と叫んだ。

 船長はニコリと笑って、「ヤー! ものども、オール準備! 急いで港を出るぞ!」と言うと、船員たちが「ヤー!」と返事をする。


 馬車から、父と母が走り出してきて、船を追いかけるように走りよってきた。


「セシル! 戻って――」「来なくていいから! たまには帰ってきなさいよ! あなたの家はちゃんとこっちにもあるんだから!」


 父の言葉を母がさえぎった。立ち止まって、なさけない顔をする父の背中を母がバシンと叩く。


「もう会えないわけじゃないんだから、しっかりしなさい! 嫁に行った娘が家を出て行くのは当たり前でしょ!」

「う、うおお――! ロナウドめ! ゆるさんぞ!」


 とうとう(もう)(げん)を叫び出した父の背中を、今度は()り飛ばして海にたたき落とす母メアリー。

 扇子を広げて口元を隠しながら、こっちを向いてにこやかに手を振っている。見ると、海から顔を出した父がしょんぼりとこっちを見ていた。


 まったくしょうがないなぁ。


「お父さま! お母さま! 今度は遊びに来るからね!」


 セシルの声に、ようやく父も笑顔になって手を振った。


 ……ふふふ。ちゃんとまた来るから。心配しないでね。


 セシルは腕をロナウドの腕に(から)め、(さわ)やかな海風を浴びながら、

「行ってきます!」

と大きな声をあげた。



◇◇◇◇

 2人の出港の様子を、港の片隅でオルドレイクとベアトリクスも(なが)めていた。


 オルドレイクが船を見ながら、

「初代剣聖の名は、ロックハートと言う。……お主の先祖じゃ。しかし、お主は剣聖にはなれぬな。勇者として聖女とともに歩むがいい」

と微笑みながらつぶやいた。



 2人が見ている先で、船は外洋に出ていく。


 どこまでも広がる晴れた空に(こん)(ぺき)の海が広がっている。

 光り輝く太陽に見守られながら、2人を乗せた船がゆっくりと遠ざかっていく。


 その光景は、まるで天地が、海が、世界が、セシルとロナウドの行く先を祝福しているように見えた。




これで聖女セシルの恋愛冒険譚は完結となります。


拙作に、最後までお時間をとっていただいて、お読みくださった皆さんに心から御礼申し上げます。

本当にありがとうございました。


また色々とご意見やご指摘、またアドバイスに励ましのお言葉などをお寄せくださいまして、まことにありがとうございました。


まだすべてのご意見を反映することもできておりません。またすべての感想に返信をできてもいません。

特に昨日いただいたご意見でダイジェスト風に読める点について、その原因の分析が終わってなくて、返信できずにおります。もう少しお待ち下さい。

もしかしたら細切れで場面が切り替わっているせいなのかもしれないと予測してはいます。もっとセシル中心にして外の動きをカットしてしまえばいいのか、ちょっと検討中です。(ライラとベアトとか)


本作はタグこそ「悪役令嬢」等のテンプレを付けていますが、実は悪役令嬢ものじゃなくて、王道の恋愛まっすぐストーリーなんですよね。ロナウドを取り合う恋のライバルもないけれど、困難を乗り越えて結ばれるまでの軌跡ですから。そういう意味では少し変わった作品になったのではないかと思います。


そんな作品ですが、最後までお時間をいただいて読んでくださって、どうもありがとうございました。


すべての作者さん、読者さんに感謝を込めて。


 平成29年6月  夜野うさぎ


さあ、これからいただいたご意見の検討をするぞ。皆さん、本当にどうもありがとう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 追放後に聖女なのが分かるという設定がとても良い [気になる点] ヘイトや途中の戦争描写、魔王側の描写が長かった割に、ざまぁがあっさり。結果的に死んではいるが、追い詰められていく流れにするな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ