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妹の為なら金も命も惜しくありません!  作者: どっすん丼
第1章 貴族、勇者たち(仮)を買う
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第一話 プロローグ

次の話から時間軸が変わります


 夜空の星をかき消してしまうほどのシャンデリアの群れが爛々とエントランスホールを照らしていた。バルコニーから入り込む夜風が酒で火照った会場の空気を入れ替える。

 気温、料理、酒、雰囲気、全てが整った完璧なパーティー。そこでは誰もが満足そうに、リリアーネ・エイディンラムの十一歳の誕生日を祝っていた。

 主催はエイディンラム公爵家。邸の広いホールでは一流の奏者たちの音楽が響き、人々の談笑する声が華やいでいる。


 「おめでとう御座います。聖女様」


 「聖女様、此方は我が家からのプレゼントで御座います」


 「……ありがとう」


 椅子に座って祝いの言葉を受け取るリリアーネは未だ幼かった。大人たちの媚びた賛辞を受け取るのが余程退屈だと見えて、何処かむっすりと膨れたような顔をしている。橙色の瞳が眠そうに瞬いた。普段なら寝ている時間である。


 「誕生日おめでとう、リリー」


 「お兄様!」


 そんな憂鬱そうな顔が一変。兄であるソーマの姿を見るや否や、彼女は椅子から跳ねるように立ち上がる。可愛らしい赤毛は揺れて橙色の瞳が輝いた。

 ソーマの傍らにはその妻アーデルハイト・エイディンラムが腕を絡めて佇んでいる。美しいプラチナブロンドの髪と青みがかったシルバーの瞳が特徴的だ。


 「アデリーお義姉様も!」


 アーデルハイトは周囲が見とれるような微笑みを浮かべ、手に持っていた物をリリアーネに渡した。


 「お誕生日おめでとうリリー。去年はテディーベアをあげたから、今年はその子に着せるお洋服とチョーカーをプレゼントするわ」


 「誕生日おめでとうリリー。こっちは俺からのだ」


 ソーマは懐から小箱を取り出して、目の前で開いて見せた。中に入っているのは、細かな装飾の施された指輪だった。リリアーネの目が見開かれる。


 「指輪!? じゃ、じゃあ――」


 「ああ、リリーに"お友達"が出来るんだよ」


 指輪はシャンデリアの光を反射して、リリアーネの目の前で煌いた。友達。公爵家の息女であるリリーには、兄と義姉以外誰も傍に居てくれなかった。父も母も、兄に家督を譲ってからは別荘で隠居してしまってリリアーネのことを忘れてしまったようだった。


 「お、お友達? 本当に……?」


 「本当さ。――さあ、おいで結叶(ゆうか)


 ソーマの呼んだ名前は不思議なイントネーションだ。もしや、外国の"お友達"なのだろうか。リリアーネはますます期待で胸がはち切れそうになった。


 「っはい! ほ、ほ、本日から、お嬢様のお友達になります、結叶で御座いますっ!」


 緊張した面持ちでリリアーネの前に立った"お友達"は、指輪と同じ色の宝石の付いたチョーカーをつけていた。黒い髪と黒い瞳の珍しい人種のようで、リリアーネは初めて見る黒曜石のような瞳に夢中になった。幼い顔つきからは年齢が分からないが、ソーマは妹の年齢に近い子をちゃんと"買った"に違いない。


 「よろしくね、ユウカ!」


 「は、はい。よろしくお願いします!」


 丸い頬と優しそうな顔つきが余りにも理想の友達だったので、感極まったリリアーネはユウカへと勢いよく抱きついた。


 「お兄様、ありがとうございます! 私嬉しい!」


 微笑んだ兄の指に嵌っている指輪はリリアーネのものと装飾が似ていた。大好きな兄とお揃いだという点も相まって、リリアーネは益々嬉しくなってしまう。

 優しい兄と義姉。約束された地位。新しく出来たお友達。


 この日、この時、十一歳のリリアーネは世界で一番幸せな女の子だった。



n+2 年 4月


飽き性なりに頑張って続けたいと思います

上の年月日は以降との時系列を分かりやすくする為のものです

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