第30話 舞い踊る姫君
「《此の舞舞いし、妾が望むは我が同胞を癒す力なり》」
ミカエラが自身の周囲を廻る12の扇の内、清らかな淡い白く輝く扇を掴み取り、頭に流れ込むリズムにあわせて、頭に流れ込む通りの足捌きで舞を舞う。ミカエラが歩を踏み出す度に、空中に扇と同じ色合いの波紋が広がる。
それを見たアナスレシアが足を撓めさせて、人工生命体特有の強化された身体能力でミカエラの下まで到達すると、両の手のハルバードを思いきり振るう。しかしリズムに乗って舞うミカエラは、それを舞いながらヒラリヒラリと避けていく。
やがて舞いきったミカエラは、手に持つ扇を捧げるようにして宙へと浮かべる。すると扇は一際強い光を放ち始めると同時に愛菜とレイベルの傷を驚異的な速度で癒していく。
「な、なにこれ?」
「すげえ……、傷が治ってく」
「味方のみの傷の治癒……」
「はっ、こりゃあ……」
「まだまだ、これからっ!」
そう意気込むと、今度は薄緑に輝く扇を持って舞を舞い始める。先程とは全く打って変わって、素早く、草原を吹き渡る風のような舞だった。
「《此の舞舞いし、妾が望むは我が同胞に風の如き素早さを与える力なり」
舞の内容は全く違ったが、最後は同じく捧げるようにして宙へと浮かべると一際強い光を放ち、一瞬の後には光が収まっていた。
「今度は何?」
「愛菜とレイベルの俊敏性を上げました!」
「はっ、ステータス上昇効果とか……」
それを聞いた愛菜とレイベルの二人はここぞとばかりに攻めの姿勢でジェレドとアナスレシアに仕掛け始める。
「まだまだいくぞ!《此の舞舞いし、妾が望むは我が同胞に鉄をも砕く異才の力を》」
ミカエラの持つ扇が赤光をつ。すると、明らかに愛菜とレイベルの一撃の重さが増す。
「凄い……力が湧いてくる」
「これならっ!」
「ちっとばかし本気出さなきゃかなぁ。あーぁ、ダルいダルい」
「ちゃんとやってください、殴りますよ」
と言いながら右手のハルバードを地面に突き刺し、握り拳でジェレドの頭を殴るアナスレシア。
「いってぇぇぇ! レシアちゃんに殴られるとシャレになんねぇんだよ!」
「シャレではありませんから」
戦闘中だと言うのにも関わず、漫才を繰り広げるジェレドとアナスレシアに呆れたり、嘗められている事に腹を立てたり、余裕を見せられるだけの力があるのかと三者三様の反応を見せながら、結社との戦いはさらに熾烈なものとなっていく。




