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第9話 昇格試験【戦闘編】


 ガサガサ。

 俺達は草が揺れる音にすわ敵襲か、と武器を構えた。


「うおっ?!どうしたの皆して武器構えて」


 そこに現れたのは偵察から帰ってきたアインだった。


「なんだ、アインか脅かすなよ」

「ほんとよ全く」


 突如として現れたアインに皆が口々に文句を言う。


「ごめんごめん、気配消したまんま近づいちゃった」


 軽く謝るアインにまた非難の声が飛ぶ。

 このままだと無駄な時間を過ごすことになりそうだったので、俺が割って入った。


「おいおい、そんなことしてる場合じゃないだろ」

「そうね、ごめんなさい」

「悪かった」


 謝るウーノとエナに軽く構わない、と返し話を進める。


「それで、どうだった?」

「うん、ヤツらのアジトを見つけた。洞窟で入り口に二人見張りがいたよ」

「そうか、じゃあ作戦会議だ」


 ………

 ……

 …


 作戦会議は15分程で終わった。

 決まったことは、まず洞窟前の見張り二人をエナの弓とウアンの魔法でしとめる。

 そしてアインを先頭に全員で洞窟内に侵入、そして商人のところに向かい、救出してそこに護衛のためウーノとエナを残す。

 残りの全員で奥に向かい、盗賊達を仕留めて帰ってくる。

 という作戦になった。


「よし、決行は夜更けだ。それまで交代で見張りを立てて寝よう」


      ††††††††††††


 動物たちも寝静まった夜更けに俺達は起き出してきた。

 深夜2時頃だろうか。


「うぅん、眠い」

「我慢しろ、俺も眠い」


 文句を言うエナにそう返す。

 それからほどなくして皆の準備も終わり、愈森の中の洞窟へと向かうこととなった。


      ††††††††††††


 俺達は唯一洞窟の場所を知っているアインを先頭にして洞窟へと向かっていた。

 しかし、この森は鬱蒼としているな。

 蔦や木の根、虫が多い、そしてそれらが俺にやたらと危害を加えてくる。

 べちょ。

 うわっ、蜘蛛の巣ついた、キモい!

 がっ。

 うわっ、木の根につまづいた、転ぶかと思った!

 ぐいっ。

 うわっ、木の蔦が首に引っ掛かった、首が絞まるかと思った!

 そうしてかれこれ20分程歩いただろうか。


「あっ、あったよ洞窟」


 洞窟近くの茂みに俺達は隠れた。


「よし、ウアン、エナ頼むぞ」

「はい」

「うん」


 エナは弓を取りだし矢をつがえ、集中を高めていく。

 ウアンは魔法発動のために魔力を高めていく。


「『氷よ 我が敵を討つ槍となれ アイスランス』」

「ふっ」


 ウアンの魔法にあわせてエナの矢が放たれる。

 氷でできた槍は奥側にいた見張りの胸部を穿ち、放たれた矢は寸分違わず手前の見張りの頭に突き刺さった。

 音もなく見張り二人を倒した俺達は急いで洞窟の入り口へと向かう。

 ウアンは初めて人を殺したのか岩影で胃の内容物を吐き出していた。

 その点エナはけろっとしていた、初めてではないのか覚悟していたのかは知らないが。


「よし、中に入るぞ。アイン頼む」

「はいはーい、じゃあついてきてねー」


 その言葉に全員が頷く。


      ††††††††††††


 洞窟に入って数分後、俺はイライラしていた。

 なんだってこの洞窟はこんなにもグネグネグネグネと!!

 全く遺憾だ。

 そうしたまた数分程歩くと、


「いた、商人だ」


 アインが商人を発見した。

 俺達は急いで、且つ静かに近づき牢の鍵を開ける。


「助けて戴きありがとうございます、私は商人のマスリュートと申します。こいつは商人見習いのレレです」

「ですー」

「よし、じゃあウーノ、エナ頼む」

「分かった」

「分かったわ」


 その場にウーノとエナを護衛として残し、盗賊たちが溜まっている広場のようになった所――アインの持ち帰った情報にあった――へと向かう。

 それからまた数分程で盗賊たちの溜まり場の広場へとついた。


「よし、作戦開始だ」


 ここについてからの作戦は単純明快。

 俺とウアンが魔法で奇襲を仕掛け、混乱している盗賊達の中にズィオとアインが入り込み、盗賊たちを仕留める。


「やってやる」

「がんばります」

「緊張するなー」


 口々に意気込みを言い、集中力を高める。

 これから俺が使う魔法は俺が考えた俺だけのオリジナル魔法だ。

 魔法はイメージ、らし自分でも創れるのではないかと思いやってみた、そしたらできた。

 それだけだ。

 皆には驚かれたが。


「『水よ 鋭く研ぎ澄まされ我が敵を切り裂く水刃となれ ウォータースライサー』」

「『火よ 我が前に集いて連なる火球となれ ファイアーボールコンボ』」


 ウアンの前に横一直線に現れた鋭く研ぎ澄まされた水の刃が現れる。

 俺の前に十数個の高温の火球が現れる。

 それらは一気に盗賊たちに殺到すると、ウォータースライサーは盗賊たちの体をいとも容易く真っ二つに切り裂き、ファイアーボールコンボは盗賊たちの体をその高温の炎で灰すら残さず焼き尽くす。

 盗賊たちから悲鳴があがる。


「ぎゃあああああああ?!」

「たっ、助けて!」

「腕、俺の腕がぁぁぁぁぁ!」

「み、水!誰か水を!」

「死にたくねぇよぉ!」

 

 盗賊たちは魔法だけでその数を40人から半数まで減らした。

 アインとズィオはその断末魔を無視して中へと入り込み盗賊たちを切り捨てる。


「じゃあ、俺も行ってくるからウアンはここから援護お願い」

「分かりました、お気を付けて」


 俺はウアンの言葉に軽く頷きながらデザストルを呼び出し、盗賊たちを切り捨てる。

 腕を切り飛ばし、脚を切り捨て、胴を薙ぎ、首を落とす。

 盗賊相手に無双していると、一際大きい男を発見した。


「オッサン、あんたがボスか?」

「そうだよクソガキ、俺がこの盗賊たちの―」

「そうか、なら死ね」


 ボスに最後までしゃべらせず、その体を切り裂く。

 腕を、脚を、胴を、頭を細切れのブロック肉へと変えていく。

 さっきまで盗賊たちのボスだった男は一瞬でブロック肉へと成り果てた。

 既にブロック肉への興味をなくした俺は周囲を見回す。

 他の二人も終わりそうだ。

 それから数分ほどして、盗賊たちは一人残らず皆殺しとなった。


「おい、お前」


 と、そこにズィオが話しかけてきた。


「お前じゃない、ちゃんとした名前がある」

「ちっ、シンゴ」

「なんだ?」

「お前は人を殺してもなんとも思わないのか?」

「あぁ、思わないところがない訳じゃないがこれは必要な事だし仕事だと割りきっている、それに人を殺すのは初めてじゃない」


 俺だって畜生じゃない、人の心くらいある。

 人を殺すことに対して思わないところがない訳じゃない。

 しかし、これは仕事だし必要なことだ。

 それに、思い出すのも忌々しいあの事件が俺の初の人殺しだった。


「そう、か」

「もういいか?こいつらが溜め込んだ物を集めなきゃならんからな」

「あぁ」


 それから10分ほどで盗賊たちの溜め込んだ武器やその他諸々を俺のアイテムボックスに仕舞い、ウーノとエナ、マスリュートとレレと合流して洞窟を出て、馬車へと向かった。


      ††††††††††††


「今回は助けて戴きありがとうございました」

「ましたー」


 マスリュートはしっかりと、レレはペコッと頭を下げた。


「気にしないで下さい、こちらも仕事ですし」

「そういっていただけるとありがたいです」


 そうしてその日は解散となり交代で見張りを立てながら眠るのだった。


      ††††††††††††


 次の日の朝、俺達はミノアの街へと帰る準備をしていた。


「よーし、全員乗ったかー?」

「うん、マスリュートさんもレレくんも乗ったよー」

「じゃ、出発するぞー」


 御者のウーノが馬を操り馬車を動かす。

 帰りも道中特に何もなく安全に俺達は一路ミノアの街へと帰ることができた。

 そして二日後ミノアの街に到着した俺達はマスリュート、レレと別れてギルドの会議室にいた。

 

「あー、つっかれたー」

「ですね」

「だよねー」


 皆が会議室の机に突っ伏しているとキャトル試験官が入ってきた。


「皆、姿勢を正せ!試験の結果発表だ」


 俺も含めた全員がびしっと擬音付きで姿勢を正す。


「それでは発表する。ズィオとエナ、ウアンはB下級、ウーノはB上級、アインとシンゴはA下級だ」


 結果を聞いて皆それぞれの反応をする。

 小さくガッツポーズをする者、はしゃぐ者、静かににやける者、机に突っ伏している者、緊張でおかしくなっている者など実に様々な反応だった。


「じゃあ、報酬の分配するぞ」


 そう言って俺は机の上に洞窟で手に入れた武器やその他諸々をぶちまける。


「俺は剣とダガーが10本ずつとあとこれとこれがあればいいんだが、お前らは?」

「本当にそれだけでいいのか?」


 そう聞いてくるのも仕方ないだろう、何せ俺は今回パーティーリーダーを務め盗賊のボスを仕留めたのも俺なのだ。

 だがしかしそんなに欲しいものはない。

 剣は明日の実験に使うつもりだしダガーも一応もらっておくだけ、他に俺がもらったものは空間拡張の付与されたポーチ型のマジックアイテムと手裏剣だ。

 手裏剣に至ってはなぜ手裏剣がこんなとこにあるのかと思ってもらっただけだ。


「構わない、じゃあ俺は行くぞ」

「また何かあったらよろしくな」

「あぁ」


 そう言って俺が立ち去ろうとするとアインが引き留めてきた。


「あ、シンゴーちょっと待って」

「何だ?」

「もしよかったら俺とパーティー組まない?」

「俺は構わないのだが他のパーティーメンバーが何て言うかだな」

「あ、もうパーティー組んでたんだ」

「あって聞いてみるか?」

「良いの?」

「あぁ」

「ならそうするー」

「分かった、じゃあついてこい」


 俺はアインを連れてセナたちの待っている雲雀亭へと向かった。


「いらっしゃーいってあんたかい、どうだった?昇格試験は」

「バッチリだったよー、それでセナたちは?」

「セナ坊と藍玉ちゃんなら、ほらそこに」

「ありがとう女将」


 女将にセナの場所を教えてもらい、すぐ近くのテーブルにいたセナと藍玉へと近づく。


「ただいま」

「あ、兄貴!お帰りっす!」

「マスターか、よく帰った」

「へー、この二人がシンゴのパーティーメンバーかー」

「兄貴、この人は?」

「今回の試験で一緒になったアインだ、性格は適当だが腕は確かだ」

「アインでーす、盗賊やってまーすよろしく」


 適当なアインの自己紹介に唖然としているセナを無視して話を進める。


「こいつがパーティーを組みたいと言うんだがどうだ?」

「あ、俺は構わないっすよ」

「我もだ」

「じゃあ、パーティー成立だな」

「これからよろしくねー、セナっち藍っち」

「よろしくっす!」

「うむ」


 握手をする二人と一匹を尻目に俺は明日のことを考え、


(明日は色々と実験かな、大型魔獣を倒すための)


 俺は決意を新たにするのだった。


      ††††††††††


 ミノアの街から数㎞離れたところにある血のような真っ赤な紅色をした草――紅草、体力回復ポーションの材料になる――が生えている草原、通称赤葦草原が見える少し小高くなった丘の上に顔に大きな十字傷のある男が立って、望遠鏡片手に赤葦草原を見つめていた。

 と、そこにどこからともなくサングラスをかけたホスト風の格好をした浅黒い一人の男が炎の残滓と共に現れた。

 その顔にはホストのような軽薄さの欠片も見てとれなかったが。


「っと、ヴェリク、エクレイルの様子はどうだ?」


 ヴェリクと呼ばれた十字傷の男は後から来た男の方を見もせずに応える。


「ジェレドか、あと少しで、赤葦草原に、入りそうだ。赤葦草原に入ったら、《ミラージュ》を解除しても、良いんだな?」


 ジェレドと呼ばれたホスト風の浅黒い男はその問いに


「あぁ、構わない。王国方面はお前に一任しているからお前の判断でやってくれ」



と、答えた。


「分かった、この任務、俺が必ず、成功させる」

「頼むぞ、ヴェリク」

「あぁ」


 ジェレドはクツクツと笑った後、その表情を真剣なものに一変させて小さく呟いた。

 そして、その呟きにヴェリクも重なるように呟いた。


「「トゥエディウスの名に懸けて、我らが盟主の御心のままに」」


 ジェレドはふっ、と笑うと


「じゃあこっちは任せた、俺は帝国方面の仕込みに行ってくる、あんまり姫を待たせると怒り出すからな」

「分かった、任せろ」


 そう言ってジェレドは炎に包まれたかと思うと次の瞬間にはそこにはいなかった。


いつもお読みいただきありがとうごさいます。


次の投稿は11/14(金)の予定となっております。

お読みいただけると幸いです。


誤字や脱字などありましたら気軽にご指摘下さい。


※11/13(木)

  魔槍ムグノヴェニエの能力を変更しました。(第1話)

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