第80話 不意の出来事
「……で、どうだった?」
入学試験が終わり、デウスたちは再び国王の私室を訪れていた。
デウスの質問に誰もが黙ってしまった。
「……だろうのぉ。毎年報告を聞くたびに憂鬱になるもんじゃ」
「これは憂鬱にもなりますよね……」
「微精霊が寄ってくるまで何もできないなんて…待ち時間が暇でしたわ」
「間違いなく実践ならゴブリン1匹に全滅させられてますよね……」
「こっちも、剣技の一つも使えずでたらめに剣を振りかざすばかり。まだ能力が使えているぶん魔法科と精霊術科のほうがましだと思われます」
「そっか……他の科も悲惨だったか……」
空気がどんよりとしている。さて、これからどうしたものか…と考えているとき、フィリアが口を開いた。
「国王さま。私たちは学園の臨時教師となるのです。合格者を入学式のその日に演習場に集め、それぞれ私たちと模擬戦を行うのはどうですか?」
「ほぉ、模擬戦とな?」
「今までの学院生はレガティスさんをはじめ教師陣に色々と叩き込まれてもまだ実力不足ということでした。それは私が思うに……無理矢理やらされていると感じているからではないでしょうか? 入学式のその日に実力差を思い知らせわざと挫折させれば、自分から努力しようとする意志が生まれるのではないかと思います」
フィリアがまともなことをいう。たまに頭のいいフィリアを見慣れないフェリスは普段とのギャップに固まってしまった。
「そうじゃな。いいじゃろ。魔法科はデウスかフィリア、精霊術科はルナかフェリス、剣術科はティアがそれぞれ相手をせよ。模擬戦を行っている科以外の他の科の者たちは観客席から観戦させるように。それではそのように頼んだぞ」
国家存亡が危ぶまれるほどのエリート学院のレベルの低さ。そこに通う者たちの意識を変え実力を自ら上げようとする意志を持たせることを第一課題とすることを確認し、解散となった。
「デウスよ、少しいいか?」
「なんですか?」
「お前に話があってのぉ……」
「みんな、先に部屋に帰っていてくれ」
ティアは自室へ戻り、フィリアたちも自分たちの部屋に戻っていった。
「お父さま、デウスに何の話しているのかしら?」
「けっこう深刻そうだったよね……」
「デウスさまに特別な王命でも出しているのではないですか?」
フィリアとルナ、そしてフェリスは部屋で着替えながらそんな話をしていた。
ガチャ
「戻った……ぞ!?」
「ひゃあ!!」
「きゃあ! ちょっ……」
「…………」
デウスは女性3人が着替え途中で下着姿の時にノック無しで入ってきてしまった。
「それで……何か言うことは?」
フィリアがすごい剣幕でデウスを睨む。
「大変申し訳ありませんでした……」
「本当ですわ! 結婚する相手にしか見せてはならない姿でしたのに……ん? 将来的に結婚するからありですの??」
「私は……すべてをデウスさまに捧げておりますので…」
「ちょっと! ルナもフェリスもなに『ま、いっか!』みたいな雰囲気出してるのよー!!」
フィリアがじたばたしている。こんな子どもっぽいのに大人びた綺麗な黒色だったな……
「何よ?」
「何でもないです……」
普段と立場が逆転している。フィリアは少し楽しくなっていた。
「ところで……お父さまからは何のお話でしたの?」
「あぁ……それな。みんな、よく聞いてくれ」
真剣な表情に全員が息をのむ。
「もう貴族なんだから家を持てって言われたんだ。家も土地も費用は国が持つからって」
「そうなの! すごいじゃないデウス!」
「あぁ、そこだけ聞けばいい話なんだが……。実はすでに用意してあって、その家は≪神々の代行者≫のパーティの本拠地を兼ねるからメンバーはそこに住むようにって。
そして一番の問題は……寝室は1つしかないんだと。しかもそこのベッドは2人用。ここと変わらないんだよ……」
デウスが気まずい顔で話す。僕はリビングで寝るようにするから……と続けようとしたときだった。
「うん、いいんじゃない?」
「何か問題ですの?」
「皆さまがよろしければ私は大丈夫です」
「……えっ? いいのか?」
「もちろん!」
思ったよりすぐに話がついてデウスはあっけにとられてしまった。
新しい住居での生活に対するワクワク感。低レベルの自称エリート生徒たちを相手にしなければならない不安感。色々な感情が渦巻きながら一行は眠りについた。




