第75話 ハンデの真意
「ルナ。フェリス。観客のことは頼んだぞ」
「任せてくださいまし!」
「お任せください、デウスさま」
そういうと2人は会場の端に移動した。
「「神聖なる聖域に住まう霊獣よ 今、時は来た
永遠の盟約に従い 我が声に応えよ」」
ルナとフェリスが同時に精霊召喚術を唱え始めた。
「汝、フォルトゥナ=ウィンクルムの名のもとに顕現せよ
霊獣召喚 光の神獣 ペガサス!!」
「汝、フェリス=グラティアスの名のもとに顕現せよ
霊獣召喚 地の神獣 地帝龍!!」
会場に2体の神獣が現れる。もちろん、観客のテンションはピークに達した。
「すごいっ!! ペガサスに地帝龍だって!!! 神話の生き物だと思っていたのに実在していたなんて!!!!」
「あぁ……生きていてよかった……」
「フェリスさまは猫人族なのに精霊獣と……しかも神獣と契約されているとは、さすが英雄パーティのメンバーですね!」
観客たちはみなデウスたちのほうに注目している。それはウーヌスとデュオには面白くないことだった。
「おい! 決闘は2対2じゃなかったのかよ! 話が違ぇぞ!!」
「いいや、2対2であっているぞ。あの2人には観客を護ってもらうために神獣の力を貸してほしくて呼んだだけだ。決闘には参加しない」
「……んだよ焦らせやがって! お前ら2人なら余裕で勝てるわ!!」
「そうか。それならさっさと終わらせるとするか」
「そうだな! さっさと終わらせようぜ!! フィリア、お前は夜になったら俺たちのいる宿に来るんだ。いいな?」
「い……いやです……」
フィリアが震えている。2人を目の前にした今、また過去の記憶が蘇ってきたのだろう。
「ああん!? なんだって聞こえねぇな!?」
「そこまでじゃ!」
国王が声を張り上げた。その瞬間、デウスたちはもちろん観客もみな国王に注目した。
「神聖な決闘の場でぺらぺらと話し込むでないぞ」
ゴホン!と国王が咳払いをして話を続ける。
「主催者である儂からこの決闘についてのルールを説明する。勝敗は相手が死亡もしくは降参を口にすることで決まるものとする。通常の模擬戦とは異なり、審判の判断による試合の中止と勝敗の決定は行わない。また、今回は2体の神獣が護ってくれているから大丈夫だとは思うが、観客に被害を与えてもならぬ。以上じゃ。存分に戦いたまえ」
「「ありがとうございます」」
ウーヌスとデュオが国王に頭を下げる。
「国王さま、ルールについて1つ付け加えていただきたいものがあります」
「なんじゃ、申してみよ」
デウスは足元に円を描いた。
「相手に対するハンデといたしまして、私、デウスとフィリアの2名はこの円から一歩も出ずに戦いたいと思いますがどうでしょうか?」
「なっ……ハンデだと!? お前、俺たちをなめてんのか!!!」
「そうだ! ハンデをくれてやるとしたら俺たちのほうじゃないのか!?」
デウスの申し出を聞いたウーヌスとデュオが吠えている。
「よかろう。ルールに加えるとしよう」
(ったく、今日といい初めての謁見の時といい相変わらず大した奴じゃ)
国王はデウスの申し出を許可した。
「ありがたき幸せ」
デウスは心から国王に感謝した。その横でフィリアはまだ震えている。
デウスが圧倒的に不利なハンデを申し出た理由。それは英雄と呼ばれる自分への慢心でも、Sランクパーティのメンバーであることからくる自信からでもない。フィリアのためであった。
(この震えている状況ではフィリアは動き回って戦うことは不可能だ。兄さんたちや観客からの目をごまかすためにも、これが最善だろう……)
「審判はフォールテム学院の学長、賢者レガトゥスが務める」
そういって出てきたのは、茶色い長髪の男だった。
「デウス……やっぱり私……」
「大丈夫だフィリア。みんなとの昨日の会話を思い出せ」
「うん……うん! 頑張る! あいつらコテンパンにやっつけてやるっ!!」
「コテ……まぁ……その意気だ!」
フィリアは少し立ち直ったようだった。もう震えは止まっている。
「それではただいまより、2対2の決闘を開始する!!」
どっと歓声が沸き上がる。因縁と記憶が渦巻く、デウスとフィリアの過去との戦いの火蓋が切って落とされた。




