第74話 決闘の朝
翌日。
「……なぁ兄ちゃん。なんでこんなに人が多いんだ? 王都だからといってもさすがに多すぎないか?」
「だよな、お前もそう思うか? ……やっぱり変だよな?」
王立フォールテム学院にやってきたウーヌスとデュオは、そこに集まる人の多さに驚いていた。
学園に集まる人の多さも異常だが、警備兵がいたり出店があったり…ん? 出店?
「そうだわかったぞデュオ! 今日は入学試験の前日だから前祝みたいな感じでお祭りがあっているんだよ! 各地から集まった優秀な俺たちみたいなのがいっぱい来るんだからな!」
「なるほど! さすがは兄さん!」
2人は誤った解釈で現状を理解した。出店には「英雄の力 わたがし販売中!」といった戦闘中のデウスの霊力を元にしたような商品もあったが、アホな兄弟は「英雄」という文字だけを見て自分のことだと信じ込みご満悦な表情をしていた。
一方そのころ。
「やばい……やらかしたー!!! 決闘開始まで残り30分だぞ!!」
「そ……そんなはずはないですわ!!」
「不覚をとりましたね……」
大事な決闘の日に寝坊をしたデウスたち。夜中まで話し込んでいたからだろう。それにしても……
「フィリア! どうしてそんなに落ち着いているんだ!?」
バタバタと準備をしている3人に対し、フィリアは落ち着いた様子でゆっくりと準備をしている。
「どうしてって……私はだいぶ前から起きてたし、準備もほとんど終わってるからね?」
「起きてたのか!? どうして起こしてくれなかったんだ!」
「だって瞬間移動で一瞬で着くし、そうしたほうがアホ兄弟と観客たちに対するパフォーマンスになるからそっちのほうがいいかなって」
「……ぐうの音も出ないほどの正論だな」
デウスたちはフィリアの意見を採用し、若干ゆっくりめに準備を進めていった。
正午前、王立フォールテム学院第一演習場。
「何をやっておるのじゃ、あやつらは……」
国王は王族用の特別席に腰かけながらため息交じりに呟いた。
「おいデュオ! あいつら俺たちにビビッて逃げちまったんじゃねぇのか?」
「ありうるな! 昨日のフィリアの顔といったら……可愛がってやりたくなるようなうるうるの涙目だったんだぜ? 笑えるよな! あはははは!!」
ウーヌスとデュオがこんな話をしているとき、同じく観客からもどよめきが起きていた。
「英雄さまたち……もしかして来ないんじゃないの?」
「ほんとに遅いわね。なにかあったのかしら?」
「ねぇ噂聞いた? デウスさまとフィリアさま、元は相手の2人と同じ屋敷に住んでいたらしいわよ!」
「あっ、それ聞いた! それで才能が開花する前のお2人は相手の2人に凄惨ないじめを受けていたって話!!」
「もしかして……逃げちゃったのかしら……?」
観客の不安がピークに達した時だった。
演習場の中央付近の者だけがかすかに風を感じた。
「さすがだなフィリア。ドンピシャだ」
「当たり前でしょ? 私は賢者さまよ! このくらい朝飯前よ!!」
「……そういえば寝過ごして朝ごはん食べてないですわ……」
「ルナさん、フィリアさんみたいなことを言わないでください……」
「ちょっとフェリス! 最近私を馬鹿にしすぎじゃない!?」
「その辺にしておけ。それぞれやるべきことをやるぞ!」
演習場に突然現れた≪神々の代行者≫パーティ。ウーヌスとデュオは目の前の光景が理解できずに固まっている。
「きゃーーー!!!! 英雄さまーーー!! こっち向いてーー!!!」
「うわーー!! 本物だすげぇー!!!!」
観客席が歓声でどっと沸いた。
「やれやれ……ひやひやさせおって……」
国王は安堵した表情で演習場の中央を眺めていた。




