第61話 自分に出来ること
「デウスさん!!」
「デウスよ! 大丈夫か!?」
夜闇の中をフェリスと国王、そして地帝龍がデウスに駆け寄る。
「うっ……僕は……生きてるのか……?」
「デウスさんっ!!」
「デウス!!」
デウスは生きていた。それはなぜか? 攻撃を受けたデウスすら理由がわからなかった。
「僕は……どうして生きているんだ……?」
「デウスよ、おそらくフォルトゥナのおかげじゃ」
「ルナの……?」
「フォルトゥナの持つ創世神の加護《幸運》の効果の一つに、攻撃を無効化する障壁を一定確率で展開するというものがある。そしてその加護の効果は……加護を持つ者が心から信頼している者にも適用されるのじゃ」
「そうか……ルナが……。それは死んでいられませんね」
「当たり前じゃ」
ルナが自分を心から信頼してくれている。その事実に、その気持ちに応えるためにも、死んでなどいられない。
「状況は……?」
デウスがフェリスに問いた。
「状況は極めて深刻です。悪魔2体の力は、デウスさんを殴りつけてここまで吹き飛ばした時点で尋常ではないことはわかっています。そして……」
フェリスがうつむきながら続ける。
「私と国王さまはデウスさんと国民の避難と守護のため悪魔のもとを離れざるを得ませんでした。つまり……」
「おい、まさか……」
「そうじゃ。フォルトゥナとフィリアは2人であのバケモノたちに立ち向かっている」
「そうか……」
デウスは悔しくてたまらなかった。フィリアとルナは命をかけて悪魔たちと戦っている。国王とフェリスは自分の責務を全うしている。
「僕は……ただのお荷物じゃないか……」
デウスの目に涙が浮かぶ。しかし、霊力のないデウスには何も出来ない。それはデウス自身が一番よくわかっていた。
「デウスよ、泣いている場合ではない。大事な人が危険な状況に置かれている。そして万が一やられた場合、多くの力無き人間が殺されるであろう。我々の手には……多くの人間の命が握られていること。それを忘れてはならぬぞ」
「それはそうですが……わかってはいるのですが……」
道を見失っているデウス。そんなデウスにフェリスが語りかける。
「デウスさん。私も今回の件で、悔しい思いをいっぱいしてきました。地帝龍は大きすぎて王宮内で召喚するわけにもいかず、何も出来ませんでした。そして私は地帝龍を召喚出来ない以上、何の力もない人間です。
皆さんが捕まっていても、ルナさまが危険な状態であっても、私は何もすることが出来なかった。
でも……そんな私でも、王宮の外で市民の方々を守るために戦うことはできる。自分の出来ることがある。私はその責務をフェリスの名にかけて全うする!
デウスさん、あなたにはあなたの出来ることがあるはずです。私たちはまだ負けてない、負けられないんです!!」
(僕に……今出来ること……?)
デウスは一生懸命に考えた。今の状態でも出来ることは? 最善の一手は…?
そう考えを巡らせていた時だった。
ドーン!!!
王宮の最上階で爆発が起きる。
そこから落ちてくる2人の……人間!?
「フィリア! ルナ!!」
「任せてください! 地帝龍!!」
最上階から真っ逆さまに落ちてくる2人を地帝龍が上手く捕まえ、背中に乗せた。
「おい大丈夫か!?」
「デウス……生きてたのね、よかった……ゲボッ」
フィリアが口から血を吐いた。
「デウス……よかった……。私の加護が効いてくれたのですわね……」
「あぁそうだルナ。おかげて死なずに済んだよ。ありがとう」
「お礼として後でなんでもお願いを1つ聞いてくださいませ」
「あぁ、僕に出来ることなら何でも聞いてやる」
フィリアもルナもボロボロだった。身体中が傷だらけだった。
致命傷が無いとはいえ、よくこの傷で生きているものだと思ってしまうほどに。
「あー、この嬢ちゃんたち、思ったより強かったな」
「まぁな、まさか悪魔化してる俺たちにここまで抵抗するとはな」
悪魔2体が最上階から降りてきて、デウスたちの前に立ちはだかった。
「……っ。地帝龍!!」
フェリスと地帝龍が迎撃に向かっていった。
(僕に……出来ることは……)
「デウスよ、おまえの力は生き物を殺したら回復するのだったな?」
「はい。そうですが……」
「デウス。儂を殺せ。これが儂に出来ることであり、王命だ。拒否権はないぞ」
デウスにとってこれ以上ない非情な王命が下った。




