第60話 神眼・氷華
「お話は終わったのかぁ? じゃあこっちも遠慮なく殺してやるよ!!」
「お前ら全員さっきのあいつみたいに殺してやるよ! ありがたく思いな! あひゃひゃひゃひゃ……!」
悪魔に成り果てた人間ほど醜悪なものはいない。思考も見た目もゴミのようだ。
「ルナ、ペガサスの召喚を。それまで時間を稼ぐわ」
「分かりましたわ」
「神聖なる聖域に住まう霊獣よ 今、時は来た
永遠の盟約に従い 我が声に応えよ
汝 フォルトゥナ=ウィンクルムの名のもとに顕現せよ!
霊獣召喚 光の神獣 ペガサス!!」
ルナが精霊召喚術を唱えている間、悪魔がなにもしないわけがなかった。……はずだった。
ルナがペガサスを召喚し、悪魔の姿をとらえた時、視界は一変していた。
「なに……なんですの……? 視界が……氷?」
ルナの視界は床、壁はもちろん、空気さえも凍りついていた。
悪魔たちは氷漬けになっている。……が、動いているところをみると死んではいないのだろう。
「フィリア……あなたがやったのですの」
「えぇ、そうみたいね。……ありがとう、お母さま」
「お母さま? 誰のことですの?」
「なんでもないわ。気にしないで」
ルナはフィリアの言ったお母さまという言葉が気になった。フィリアに母親はいないはずなのに……と。
「……ってちょっとフィリア! その眼!! 氷の結晶みたいな模様がありますわ!」
「えぇ、そうでしょうね。これは多分……神眼・氷華よ」
「神眼……氷華?」
「視界の焦点が合ったところ全て凍りつける。創世神ファリアさまの権能の一つよ」
「見ただけで凍らせる……すごいですわ……」
パリン……パリン……
「あー焦った。急に凍らされるとかたまったもんじゃねぇな」
「んーと……なんか白い馬が増えてるぞ? 馬に羽根ってはえてるもんだっけな?」
悪魔たちが氷から抜け出した。
「ペガサス。あの2体の悪魔を、なんとしても倒しますわよ。フィリア、行きましょう!」
「えぇ!」
フィリアとルナ、そしてペガサスが悪魔たちに向けて駆けていく。
「虚無の理よりいずる壁よ
我を包みて防壁となせ 防壁」
「空を翔ける風よ
我が背中を押し助けたまえ 音速加速」
「燃え盛る命たる炎の槍よ
熱き炎で敵を貫け 炎の槍!!」
フィリアが次々と魔法をかけていく。
「ペガサス! 悪魔に攻撃して!」
空を駆けていたペガサスにルナが命令する。
ペガサスの羽根が何本も翼から離れ、それぞれが光の剣となった。
10数本の剣が悪魔たちに降り注ぐ。
「虚無空間」
悪魔の手に浮かぶ黒い玉。そこにフィリアの炎の槍やペガサスの剣のほとんどが吸い込まれた。
……そう、ほとんどが。
「痛ってぇ! てめぇ全部吸収しろや!」
「無理言うなごらぁ! あんだけの攻撃をほとんど消してやったんだ文句じゃなくて礼いいやがれ!」
攻撃を吸収した方とは別の方の悪魔がペガサスの剣を2本くらい受けている。そのことで喧嘩をしているようだ。
「さすが手強いですわね……でも」
「やれなくは無さそう……ね」
ルナとフィリアが顔を見合わせ、苦笑いをする。
「まだまだこれからっ!!」
「いきますわよ!!」
フィリアとルナの攻撃が再開した。片や全属性適性者の魔法使いと神獣を従える霊獣使い。片や悪魔化した元人間が2体。両者の戦いは激しさを増していくのであった。




