第26話 秘密の話
「賢者? 魔導師?」
デウスとフィリアはぽかんとしている。
「だってそうですわ! フィリアさまは賢者さましか出来ないと言われる複合魔法を使っていましたわ。氷魔法というのは水と雷の複合魔法でしか発動できないはずですもの」
まじか、フィリアはそんなに凄いことをしていたのかとデウスは感心した。
当の本人は何の話?という表情をしている。全く理解出来ていないようだ。
「そしてデウスさまです! 超高位魔法と言われる支配魔法を使えるどころか、それを無詠唱で使える人など見たこともありません。そのうえ蘇生魔法まで……そんなことができるなんて、デウスさまは魔導師さまで間違いありませんわ!!」
王女によると、この世界には魔法が使えるだけでも貴重だが、その魔法が使える者にも格というものがあるらしい。
それは下から、腕輪や杖といった魔道具を媒介としないと魔法の発動が出来ない「魔術師」、
魔道具を必要とせずに魔法が発動することができる「魔法使い」、
使用出来る魔法の属性や威力の上限が増え、かつ複合魔法が発動できるようになった魔法使いが「賢者」、
そして魔法に詠唱を必要とせず、神の御業ともいわれるほどの魔法を使える者を、魔法を導く師とあがめ「魔導師」と呼ばれるそうだ。
そして王女はデウスをその最上格の「魔導師」だという。
自分がやってきたことはすごいことなのか……と少し驚きながらもこの美貌の王女にここまで褒められると照れてしまう。
……デウスが照れているのに気づいたフィリアはニコッとしてデウスの方を見る。
「でもデウスは魔力が無いもんね!」
と簡単に秘密をバラした。この野郎。
「魔力が無いっていうのはどういうことですの? あと……お名前がリーグレットとおっしゃりましたが、リーグレット辺境伯の家の者ですか? どうして家出なんで……」
さすが王女だ。鋭く痛いところをついてくる。
デウスもフィリアも口を閉ざして見合った。
数秒後、デウスが口を開いた。
「今からお話すべきことは、場合によっては我々の命にかかわる内容のものです。他言されては困るのです。……私が今からお話することを誰にも他言しないとお二人とも名に誓って頂けますか?」
名に誓う。それは神でも先祖でもなく、その者自身に誓うものである。これを裏切れば、それは自分の名前を汚し殺し失うことと同義とされる。
要は、違えれば名前が無くなり殺されたり奴隷にされても文句を言えないような、一番強力な誓いである。
「お前……いくら我々を救ってくれたとはいえ、王女さまに向かって名に誓えとはどれだけ無礼なことかわかっているのか!!」
イークウェスが顔を真っ赤にして抗議してくる。名に誓うとはそれほどのものである。
「よしなさいイークウェス」
王女は激高するイークウェスをなだめた。そして……
「わかりました。他言しないとフォルトゥナ=ウィンクルムの名に誓いましょう。ただし、そちらも真実を話すことを名に誓ってください。それでいいですね? イークウェス」
「……イークウェスの名に誓って、他言しません」
イークウェスはしぶしぶ了解し、名に誓った。
「わかりました。真実のみを話すとデウス=リーグレットの名に誓いましょう」
デウスはリーグレット邸での兄二人による暴行やいじめによりデウスもフィリアもそこに居れなくなったこと。
本物のデウスはその時に死に、今の自分は他の世界で生きていた他の人間であること。
デウスの力は霊力というものであり、魔法と違った強力なものである反面、力の元となる霊力は生きているものをデウス自身が殺して霊力を吸収するか寿命を削ることでしか手に入らないこと。
生きていくためには王都が無難だということで王都に向かっていること。
デウスはこれまでのことをかいつまんで全てを話した。
王女は時に涙をうかべ、時に驚きながら最後まで聞いていた。そして全てを聞いたあと、王女は少し考えてから驚くことを口にした。
「デウスさま、フィリアさま。王都で実家に隠れながら暮らしたいなら……私のもとで護衛兼師匠として、一緒に暮らしてみませんこと?」
そう口にする王女はうきうきと目を輝かせていた。




