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マオと不思議なスライムの賑やかなアトリエ  作者: 小日向 ななつ
終章 様々な試練を乗り越えて
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第45話 マオと不思議なスライムの賑やかなアトリエ

 ピエロ魔人との最後の戦いから数日。

 マオはトトリカ魔術学園にあるアトリエで、ボーッとしながら過ごしていた。


「ハァ」


 ピエロ魔人の呪い。それはあまりにも強力なものだった。

 倒したにも関わらず、呪いをかけられた人々は戻らなかったのだ。

 結局、大量の霊薬〈フェニクル〉が必要となった。

 だが、必要数が多くなったということは、それに応じて多くの素材アイテムも必要となる意味である。

 そのためマオは、毎日のようにアイテム採取に本当していた。


『なんでため息をついている? 今日もダンジョンに潜るぞ』


 アイザックに声をかけられる。するとマオは大きな大きなため息を吐いた。

 途端にアイザックはムッとした顔となる。


『なんだ? 私が何かしたか?』

「なんで霊薬使っても、先生は元に戻らないんですか?」

『知るか! 私が知りたいわ!』


 その言葉にマオは、堪らずため息を吐いた。

 ピエロ魔人との最後の戦い。そこでアイザックはマオが持つべき力を代わりに受け入れた。

 その結果、アイザックは再びスライムになってしまった。

 おそらくだが、その力が強力すぎるため霊薬の力でもアイザックは戻せないのだろう、とマオは考えていた。


「なんであの時、受け入れちゃったんですか?」

『ああでもしないといけなかっただろ! それとも、欲しかったか?』

「いえ。だけど――」

『感謝はされど愚痴や文句を言われる筋合いはない。そら、前を向け。お前には輝かしい未来が待っているぞ!』


 妙に前向きのアイザック。マオはそれに、ちょっと困ったように笑った。


「そういえば先生、ピエロ魔人が叶えたかった望みってわかったんですか?」

『ああ、あれか。まあわかっているにはいるんだが――』

「わかっているならやりましょうよ。あんな奴でも、放っておけませんし」


 マオの言葉に、アイザックは苦笑いを浮かべた。

 敵でマオを苦しめた存在。それなのに、そいつの望みを叶えようとする。

 それは優しさと表現できるものではない。だが、義務感というものでもなかった。


『難しいことなんだ。おそらく、国の法律に触れる』

「え? そうなんですか?」

『だから方法を探している。だから、慌てるな』


 ピエロ魔人が望んでいたこと。それは死別した妹と再会することだった。

 だが、その思いはねじれにねじれ、国王に牙が向いた。

 アイザックの話では、国王のせいでピエロ魔人の妹は死んでしまったらしい。

 そして、いつしか国王への復讐が目的となってしまったということだった。


『さすがにホムンクルスを作る訳にはいかないからな。私だけならまだしも、お前まで迷惑をかけてしまうよ』

「だけど、早く叶えてあげないと」

『慌てるなって言っているだろ。これでも考えている。それに、方法はなくはない』


 マオはアイザックの言葉に、頭を傾げた。

 そんなマオを見て、アイザックは〈アルミティアの杖〉へと近寄る。

 そして、中で眠っている者達へ声をかけた。


『おい、お前ら。もうマオに言ってもいいか?』


『うーん、まだ確実性はないことですけど』

『まあ、ご主人が知りたがっているし、いいんじゃない?』

『問題はない。おそらくだがな』

『ワンっ』


 四つの声が〈アルミティアの杖〉から放たれる。

 それぞれがマオのために、どんな答えを言い放つか考えているのがわかった。

 そして、みんながマオのために一つの答えを口にした。


『説明を頼む。新たな魔王よ』

『その呼び方はやめろ。まあわかった』


 アイザックは気恥ずかしくしながら笑っていた。

 そしてマオに振り返り、説明を始める。


『ピエロ魔人、いやホーキンスと呼ぼう。ホーキンスは妹をずっと蘇らせようとしていた。だが死者を蘇らせるのは、魔王の力だけでは難しい。

 だからこそ、このスライムの力と錬金術師である俺の力、そして精霊達の力を使おうと考えている』


「みんなの力を?」

『ああ、そうだ。ホムンクルスで蘇らせることを考えたが、それは危険だ。だから新たな精霊として蘇らせる』


 思いもしない構想だった。

 それはどれほど時間がかかることなのか、マオには全くわからない。


「でも、それって――」

『問題はたくさんある。それに、命を弄ぶようなことだ。

 だから覚悟しているさ。これは力を手にした俺だからこそ、背負うべき罪だ』


「先生――」


 マオは一度俯いた。

 だがすぐに顔を上げ、強く見つめた。


「先生、私も手伝います」

『あのな、これはとんでもないことなんだぞ? それに――』

「先生は一人じゃありません。だから私も、その罪を背負います」


 アイザックはその言葉に、思わず目を大きくした。

 ちょっとだけ嬉しそうにする。だが、すぐに顔を引き締めて突っぱねた。


『いいや、お前は背負うな』

「先生!」

『お前が手を汚したら、みんなの努力が無駄になる。それに、これは望んだことじゃないだろう?』

「だけど――」


『お前は、優しい。でもその優しさは、間違った方向に使ってはいけない。

 マオ、強さとは弱さでもある。だからこそ間違った優しさを出しちゃいけない。

 お前がお前のために、そして大切な人のために優しさを使え』


 アイザックはマオを優しく突き放す。

 マオはそれに、とても困った表情を浮かべていた。


『さて、話は終わりだ。ダンジョンに潜るぞ!』

「えー?」

『やる気を出せ! お前の力を待っている人はたくさんいるんだぞ!』


 アイザックに促され、ダンジョンへ向かう準備を始めた。

 いつものようにルルクとミーシャを誘い、アイテム採取をする。

 そんな計画を立てている時だった。


――トントン。


 誰かがアトリエの扉を叩いた。

 マオはその音に気づき「はーい」と声をかける。

 開かれる扉。向こう側にいたその存在を見て、マオは目を丸くした。


「精霊?」


 二体の精霊が、不安げな顔をしてマオを見つめた。

 その胸には、小さな赤ちゃんがいる。


『あなたが、錬金術師か』

『お願いします。この子を、助けてください!』


 思いもしないお願い。だが、マオは躊躇わなかった。


「うんっ」


 新たなる問題。だけどそれに臆することなく、マオは全力で取りかかる。

 アイザックはそんなマオの姿に、喜びを感じていた。


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