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〇〇〇ハ死殺並ベ示シケリ  作者: ALFRED
生誕前
4/7

森の村

思うんですが小説を投稿したら知らせてくれるアプリってあるんですかね?

投稿した直後からPVが増えるので不思議に思ってます。

4話 森の村


爪痕(クロウレイン)の森


「ギィイギャァアア!」


森の中に命の危機が訪れる警笛が鳴り響く。その警笛は森の深くまで走り周囲にいた鳥はけたたましく鳴きながら枝を揺らして飛び立つ。

だが、彼はまだ死んではいない。たとえ無駄だろうと生きることをまだ諦めていなかった。


「ギィィ…ィ…」


這いつくばりながらも懸命に足を動かし矢が刺さり痛む背中と足を酷使して悪魔から一歩でも遠ざかろうと、死から逃げようと必死の抗いを見せた。

だが、悪魔はその抵抗を可愛いものだと嘲笑う様子で土を踏み均しながら彼から流れ出た血を辿り彼との距離をつめていく。


大きくなる足音

3

悪魔が近付き高鳴る心臓。

2

悪魔との距離が残り時間。

1

距離が、カウントが、ついに無くなる。



「ーーー!!ーーーーー!!」


自分がどんな声を出したのか、彼にはそれを知らない。その前に死んだ。

しかしその声には名前がある。

命が最も強い力を持つ瞬間。

悪魔が断つ断末。

『断末魔』であった。


「…やっぱりつまらないなぁ」


エルミィは猪の目に突き立てたナイフを引き抜いてひと言呟く。

相手の予想通りの行動に何の刺激がない事に分かっていたとは言え落胆してしまう。

だが、飯の種が出来たことと欲求不満がある程度解消が出来たことを考えれば悪くは無いかもしれない。

エルミィは猪の後ろ足を枝に縛り吊るすと腹を裂いて臓腑を取り出し解体を始める。

本来森の中で大量の血液を垂れ流す行為は大型の肉食獣を呼び寄せる危険な行為だがエルミィはそれを意ともせずに、むしろそうなれば良いなという狙いがあった。

肉食獣の嗅覚は鋭い、信じられないほどの距離からでも血の臭いを嗅ぎ付け獲物を捉える。

手負いの獣は厄介と言うが餓えた獣も実に厄介、手負いの獣と違い一切負傷はせず手負いの獣と同じで命の危機に晒されているのだから。

だからだろうか、飢えていたエルミィが気付けたのは。


「??」


最初は何となくだった、何となく森の中に目を向けた。その程度の違和感。

しかし次第に静かに押し寄せた虫の大群が体をを這っているような、ゾワゾワした感覚が背中を全体に張り付いた。

初めての感覚にエルミィは驚愕しその場から空中で一回転しながら飛び退き着地と同時に弓を引く。


「ふー…ふー…ふー…」


落ち着け、落ち着けと心で自分に訴えかけるが呼吸は落ち着かない。ギシギシと強く引いた弓が軋む音とだけがやたらと大きく聞こえる。

そして突風がエルミィに運びこんだのは臭い、遠いが濃厚で粘着質な物。それが全身に叩き付けられて来るような強烈な物だ。


「あっ…」


エルミィは思わずへたり込む、自分に慣れ親しんだその臭いだがここまでのものははじめてだった。

洗っても取れなさそうな強烈な臭い、鼻を削ぎ落としても頭に留まり続けるであろう悪臭。


「は、はは、ハハハハ…!」


エルミィが笑う、腰が砕けてついた尻餅をゆっくり持ち上げて、震える足を前に運んで進む。胸が高まり頬が紅潮し興奮しているのは明らかだ、解体中の猪をそのまま置いていき風が運んできた気配に向かって歩を進める。

今のエルミィの中にあったのは歓喜、村を出て良かった、狩りに出て良かった、猪を追い掛けて良かった。

今なら信じてもいない神に感謝をしてもいい。


「ハハハハハハ!!やった!やった!キャハハハハ!」


彼女が嗅ぎ付けたのは血の臭いだ、それも圧倒的な量の。

彼女は渇望していた物語のような危険があると信じた。

エルミィはひた走る、森の中をただひたすら。

森の奥にあるであろうスリルを求めて。

確かに感じた鉄臭い血の臭いに向かって。

確かに感じた大量の死の気配に向かって。


どのぐらい走ったか、血の臭いが濃くなるにつれて糞尿の臭いも微かに混じってきた。


ーー近い。


エルミィは荒い呼吸を整えつつ弓矢を携える、姿勢を低くし周囲を警戒しながら少しずつ臭いの濃い方向へ進む。

糞尿の臭いがあるという事は腹の中、大腸や小腸が破られた生き物がいる証し。

これだけの濃い臭いだと殺された生き物の数が多いか、かなり大型の筈だ。

だが、この森にはそんな大型の生き物は居ない、かといって虐殺と言えるほど大食漢な生物も確認されていない。

あるとすれば外から来た余所者の獣の縄張り争いか?

それでも大群と大群の衝突でも無い限りここまでの血の臭いはしないとエルミィは考える。


「…流石にもうキツイわね」


思考しているうちに頭が冷静になると今更ながら臭いで頭がクラついてきた。

頭の緑のバンダナを顔に持ってきて鼻から下を被う。

これでエルミィの嗅覚が鈍る訳ではないがそれは彼女の気分の問題だろう。

それにこの程度で後戻りするようなら村から出てきていない。

それからまた進むがエルミィは突然立ち止まる。森の木々がなくなり開けた場所に出ると一瞬我が目を疑った。


「こんな所に村?」


獣と魔物、彼等の縄張りの森の中で人が住むなどあり得ない、自殺行為だ。

しかし今目の前にあるのは五角形の建物、見慣れない物だったが確実に人工物だった。

エルミィは慎重に村らしい場所の中に入っていく。

周りに人気が無いことを確認すると一先ず五角形の建物に近付く、近くで見てみるとその建物は村の家より小さく、骨組みに布を被せただけの簡素な造りだった。

しかし骨組みの部分は金属質な見た目からは想像出来ないほど軽く少し力を入れだけで持ち上がり建物全体が僅かに傾く、布の部分も表面は滑らかにツルツルしていてかなり丈夫そうだ。日常生活ではそうそう破ける事は無さそうな印象を受ける。素材は違うが以前村で使ったテントに似ている。

中に入ると建物の骨組みと同じ素材の机と椅子があるがベッドは無い。その代わり天井に下げられた篭の中には小さな光の粒が集まってテントの中を明るく照らしていた。

よく見れば光の粒は星虫(セーム)と呼ばれる蛾の大群であることが分かる。この虫はこの周囲でもよく見かける、あまり珍しいものではない。


「何これ?…」


エルミィは机の上にある一枚の何かを手に取る

それには何と書かれているかは分からないが恐らく文字が書かれていた、それはとても薄く振ればパラパラと音を鳴らしながらしなる。

エルミィの知る文字を書く羊皮紙とは大分違うがそれに準ずる物であると推測した。


「うーん…貰っとこ」


エルミィは羊皮紙擬きを腰のバックパックに入るだけ入れる、実はこのバックパック、見た目より物が入る魔法袋だ。村所有の物をエルミィが無断で持ち出した。

今羊皮紙擬きをそのバックパックに入れている理由は売ればお金になるかも?

と思ってのこと、完全な窃盗だ。

因みに椅子や机の方が価値があると分かっているが盗らないのは単純に持ち出せないからだ。

バックパックに詰められるだけ羊皮紙擬きを詰め込むと慎重に外に出て血の臭う方向へ、村の中央付近へと建物の影に隠れながら移動する。

いや、村と言うには少々広いか。街迄はいかないがこれだけの規模の広さをどうやって切り開いたのだろう?

テントもところ狭しと並べられており

それも森の端からではなくぽっかりと穴を空けたように開拓されている。

なのに人が一人も見当たらない。

おかしい、ここはおかし過ぎる、ワクワクが止まらない!

エルミィは目元だけでも分かるゲスびた笑いを堪えられない。

中央付近に近付き建物の影から顔を覗かせると開けた場所に出た。

ここまでの読んでいただきありがとうございます

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