平和な日
後で一話を見直したら途中までしか投稿出来ていなかったので修正しました
後今日は短いですがきりが良いので
2話 平和な日
「おはようフーちゃん」
「おはよヒル」
日が登り人々が活動し始める時間帯、ヒルとフレデリカは生活費を稼ぐために冒険者ギルドへと赴く。
ギルドに入るといつもならまばらに居る筈の冒険者達がホールの掲示板に集まり人だかりが出来ている。
掲示板に目を向けると壁に大きな張り紙が張り出されていた。
低ランク冒険者へ
・最近王国の各地で行方不明になる事件がたくさんあるため街の外に出て仕事をするのは危ないです。
・お金がなくて困っている人は受付嬢に相談して仕事をもらって下さい。
・なにを かいているか わからない ひとは
うけつけの ひとに きいて ください。
と、子供にも分かるような文章で書かれているのは冒険者という特殊な職業に関係がある。冒険者とは基本的に誰にでもなれる差別の無い職場だ。学がない者も入りやすくそう言った者の救いの場所でもある。
特に低ランクの冒険者ともなるとそれが著明に出てきており短い文章で箇条書きにしなければ理解できない者も多い。
それでも分からない者が居るのだから冒険者内の識字率の向上を図らなければならないだろう。
因みに高ランクの冒険者は依頼主に騙されない為だったり専門知識の向上の為識字率が高い傾向にある。
二人は文字に悪戦苦闘している冒険者達を横目に見ながら何か良い依頼がないか受付に向かう。
「すいませーん、依頼を受けたいんですけど何かありますか?」
フレデリカが受付嬢に向かって聞く、ヒルはフレデリカの後ろからついて行く。
「はい、フレデリカ様とヒル様ですね。少々お待ち下さい。」
アイーダ受付長仕込みの綺麗なお辞儀と佇まいに同姓であるフレデリカでもうっとりしてしまう。
「お二人にお薦め出来るのは此方になります」
受付嬢が出した羊皮紙には一般からの依頼には店番、庭の草むしり、子守り、商品の荷物運び、掃除等多岐にわたった。
「うーん…ヒルはどれにする?」
「僕は荷運びにしようかな?フーちゃんは?」
「私は…草むしりにしよ、店番とか子守りとか絶対に無理だと思う」
「…言えてる。すいません、僕は荷運びでお願いします」
「私は草むしりで」
「分かりました。どちらも依頼書にある通り期日は明日から一日、各々遅刻の無いようにお願いしますね?」
手続きを手早く済ませた受付嬢が二人にニコリと笑って送り出す。
ギルド内での信頼が一定数ある二人は直ぐに仕事が見付かったが普段の素行が悪いものは危険が少ない一般からの依頼は受けずらい。
と言うのもアイーダ受付長率いる受付嬢達が全冒険者の業務態度や達成率等を鑑みてどの依頼を任せるか決めているのだ。
悪人が居てもおかしくない冒険者ギルド、特にこのジュガルガン冒険者ギルド支部では信頼の無いものに仕事は無いのだ。
「お互い依頼は明日だね、フーちゃんは今日はどうするの?」
「そうねー…特にやることはないから暇ね。ヒルは?」
「僕は鍛練場に行ってくるよ、多分戦闘職の人多いだろうしいい訓練になると思うから」
二人はギルドのホールを歩きながら話す。鍛練場はギルドの敷地内にあり文字通り戦闘職の鍛練を目的に作られた。
刃は潰してあるが多種多様な武器が貸し出されており教官の指導の元で訓練することが可能だ。
また他の戦闘職冒険者との交流の場にもなっており情報交換も盛んだ。副次効果としてお互いの事を知る機会にもなる、いつどこで背中を預け合う関係になるのか分からないのだ。お互いの事を知っておく事は悪いことではない。
「ふーん、暇だから私も見に行っていい?」
「ええ?多分つまらないよ?」
「私が良いから良いの、んじゃまたね」
「あっフーちゃん?」
フレデリカ何をするのか走りだしギルドから出ていった。
ヒルは首を傾げたまま鍛練場へ向かう。
「はぁ~…」
同時刻、ホールの机に突っぱねている女性冒険者が居た。
名前はエルミィ。専門はヒルと同じ戦闘、文字は辛うじて読める程度の学はある。
仕事着である防具も一目で金がないと分かる安物。頭と耳ををバンダナで隠すのがトレードマークだ。
綺麗なブロンドの髪は短く雑に刈られてボサボサ、美人ではあるがどこか幸が薄そうな雰囲気をまとっている。
決して悪人ではないが得意な事が少なく自分勝手な行動が目立つ。
今日彼女も受付嬢から仕事を紹介されたが納得できる仕事が見付からなかったのだ。
『冒険者』と言う楽しそうな名前の職業の楽しそうな役職になったが、冒険者になって2日で野外業務の自粛を言い渡された。
「つまらない、こんなんじゃ村に居たのと変わらないじゃない」
村の平和で穏やかな変わらない日常から抜け出したくて周りが止めるの振り切ってここまで来たのだ。こんなのは求めていたものではない。
彼女が求めていたのは物語のような緊張感、スリルだ。小さいときにこっそりと付いていった狩りの現場の生々しい命のやり取り、その時から彼女はスリルの虜になる。
早く狩りに参加したくて森の地形も覚え、罠も弓も誰よりも上手くなった。
でも上手くなるにつれて狩りもつまらなくなっていった。自分の予想通りに獲物が動き、予想通りに罠にはまり、流れ作業で止めを刺す。
もう狩りでは満足できなった、だから村から飛び出してここにいる。
「はぁ~でも狩るしか無いよね」
彼女は我慢の限界であったがルールを破るほど自制心が無いわけではない、それに野外業務は禁止ではなく自粛であり外出は受付で手続きを済ませれば可能だ。
彼女は席を立ち空いている受付嬢の元へ向かった。
ここまで読んで頂きありがとうございます