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第二話退屈の終わり

三月三十一日 深夜


部屋の空気が、妙に重かった。


スマホの黒い画面には、あの文字が焼き付いたまま消えない。


『全人類対象ゲーム開始まで、残り23時間58分』


「……マジかよ」


遊一はベッドに腰を下ろしたまま、しばらく動けなかった。


ドンッ。


さっき撃ち出した“石”の跡が、机に残っている。

夢じゃない。錯覚でもない。


「……やるか」


ぽつりと呟く。


怖くないわけじゃない。

でも、このまま何もしない方がよっぽど気持ち悪い。


遊一は立ち上がり、部屋の端にあるゴミ箱へ向かって指を向けた。


「……来い」


意識を集中する。


さっきの感覚を思い出す。

指先に“何か”を溜めるイメージ。


――圧縮して、放つ。


ドンッ!!


「っ!」


石柱が飛び、ゴミ箱に直撃する。

プラスチックがひしゃげて転がった。


「……出た」


今度ははっきりとコントロールできた。


呼吸が荒くなる。


「これ……マジで能力かよ」


遊一は自分の指を見つめる。


両方の人差し指。

そこから“撃てる”。


鋼石投スチールバレット……ね」


まだ名前は知らない。

でも、そんな言葉が頭に浮かぶくらいには、それは“武器”だった。


――ピロン。


またスマホが鳴る。


ビクッと肩が跳ねる。


恐る恐る画面を見ると、今度は違う表示だった。


『能力適合確認:完了』

『個体名:小鳥遊 遊一』

『能力名:鋼石投スチールバレット


「……は?」


思わず声が漏れる。


「なんで名前まで……」


スクロールすると、さらに情報が表示される。


『ステータス』

・攻撃:C

・防御:D

・速度:C

・特異性C−

・成長性A+

・総合評価:C-


「低っ……」


思わずツッコミが出る。


いや、冷静に考えれば当然かもしれない。

さっきの威力は確かに強いが、圧倒的ではない。


「てか、誰が決めてんだよこれ……」


その時。


ドォンッ!!!


遠くから、重い衝撃音が響いた。


「!?」


遊一は反射的に窓へ駆け寄る。


カーテンを開けると――


夜の住宅街の向こう側。


数百メートル先で、煙が上がっていた。


「……なんだよ、あれ」


サイレンの音はまだ聞こえない。


代わりに――


「うわあああああ!!」


誰かの叫び声が、風に乗って届いた。


「……もう、始まってんのか?」


喉が乾く。


まだ“24時間前”のはずだ。


なのに、世界はすでにおかしい。


――ピロン、ピロン、ピロン。


今度は連続で通知が鳴る。


画面には次々と表示が現れる。


『異能力の自発的覚醒を確認』

『世界各地で戦闘行為を観測』

『ゲーム開始前の干渉は自己責任となります』


「……ふざけてる」


遊一は小さく呟いた。


でも、その目はもうさっきまでの“普通の高校生”のものじゃなかった。


「……やるしかねぇのかよ」


窓の外を見る。


煙。叫び声。見えない混乱。


そして、自分の指先。


「……なら」


ゆっくりと、拳を握る。


「せめて、生き残る」


その瞬間。


また一つ、新しい表示が現れる。


『初期順位:確認中』


数字が高速で変動する。


何万、何十万、何百万――


桁が増えていく。


そして、止まった。


『順位:最下位』


「……は?」


一瞬、理解できなかった。


「いや、ちょっと待て」


世界中の人間の中で。


いきなり――最下位?


「ふざけんなよ……」


だが、次の表示がそれを否定する余地を与えなかった。


『最下位保有者特典:なし』


「……特典くらい付けろよ!!」


思わず叫ぶ。


だがその声は、夜の闇に吸い込まれるだけだった。


遠くで、また爆発音が響く。


世界は確実に壊れ始めている。


そして――


その中心に、自分もいる。


最弱として。


最下位として。


「……上げるしかねぇじゃん」


遊一は静かに笑った。


その笑みは、わずかに歪んでいた。

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