第一話終わりの始まり
三月三十一日
春休みの終わり。
どこにでもあるような、少しだけ退屈な一日だった。
小鳥遊遊一は、自室のベッドに寝転びながら天井をぼんやり眺めていた。
「……暇だな」
スマホをいじる指も止まり、部屋には静寂だけが残る。
特にやることもない。友達と遊ぶ約束もない。
テレビでは、いつもと変わらないニュースが流れていた。
――だが、その“いつも”は、確実にどこか歪んでいた。
『近頃、世界各地で“原因不明の身体変化”が報告されています』
「またそれか……」
遊一は興味なさそうにチャンネルを変えた。
ここ数週間、同じような話題ばかりだ。
物を一瞬だけ浮かせた少年。
触れていないのにガラスが割れた事故。
火傷していないのに焦げたような跡が残る現象。
どれも決定的な証拠はなく、結局は“錯覚”や“勘違い”として処理されていた。
「バカらしい」
遊一は小さく呟く。
――けれど。
ほんの少しだけ、胸の奥に引っかかるものがあった。
理由は分からない。
その時だった。
ピキッ――
「……?」
机の上に置いてあった鉛筆が、わずかに動いた。
風なんて吹いていない。
窓も閉まっている。
「……気のせい、だよな」
そう言いながらも、遊一はゆっくりと鉛筆に近づく。
手を伸ばし――
その瞬間。
バキッ!!
「っ!?」
指先から何かが弾けた。
小さな衝撃音とともに、机の端がわずかに欠ける。
遊一は固まった。
「……今、何が……」
右手の人差し指を見る。
痛みはない。
けれど確かに、“何かが出た”。
「……はは」
乾いた笑いが漏れる。
「いやいや、そんなわけ――」
言葉が途中で止まる。
胸の奥で、妙な確信が生まれていた。
――これは、偶然じゃない。
――“できる”。
試すように、もう一度指先に意識を集中する。
ギュッ、と力を込める。
そして――
ドンッ!!
今度ははっきりと、柱状の何かが射出された。
机にぶつかり、小さな凹みを作る。
「……は?」
理解が追いつかない。
現実感が、一気に崩れる。
「……なんだよ、これ」
呼吸が浅くなる。
怖いはずなのに、不思議と震えはなかった。
それどころか――
少しだけ、興奮していた。
その時。
――ピロン。
机の上のスマホが鳴る。
画面を見ると、見覚えのない通知が一つ表示されていた。
『システム起動準備完了』
「……は?」
タップしようとした、その瞬間。
画面が黒く染まり――
無機質な文字が浮かび上がる。
『全人類対象ゲーム開始まで、残り24時間』
『英才達の予備時間 ―アディショナルタイム―』
遊一の喉が鳴る。
「……ゲーム?」
理解不能。
だが、直感だけははっきりしていた。
これは――冗談じゃない。
世界そのものが、変わる。
静かな夜の中で。
誰にも知られないまま。
“終わりのカウントダウン”が、始まっていた。
初投稿です一週間に二回程のペースで投稿の予定です暖かく見守ってくれるとありがたいです。




