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置き去り

ーー翌日


 俺達は王様に最低限の水と食料、路銀を渡され帝都に向けて大森林を進んだ。

 帝都までは最短ルートを歩いて一日半とのことだ。が、この森は樹海の森と呼ばれているらしく、凶暴な魔物の巣窟らしい。

 方角は、王様がくれた地図に浮かび上がる矢印に沿って進めば襲われる事はないらしいが………

 

 ガサゴソ。


 木陰から何かが動く音がする。

 俺はそれ見て悲鳴をあげた。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 木陰から出てきたのは巨大な狼。

 見た目はシベリアンハスキーを五倍くらいにデカくした狼だ。

 ど、ど、ど、どうすれば……。

 俺は背中から冷や汗がドバドバっとでてくる。

 

 グウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!


 ――狼と目が合った。

 動物園の虎や熊とかよりもデカいのと、鉄格子無しで目があったのだ。

 当たり前だが、俺の心臓は止まりそうだ。

 頭の中では、逃げろ逃げろと命令信号を出しているが恐怖のあまり体が動かない。

 しばらく硬直状態の後、狼はヨダレをボトボトと垂らしながら俺目掛けて襲い掛かかってきた。


「あっ……ああっ……ああっ……あっ……ああっ……ああっ…」


 俺は腕で顔を覆う。

 死ぬ瞬間、今までの事を思い出た。

 『料理』という非戦闘用の職業を授かって。どうせならもっとカッコイイ職業を授かりたかったな。

 異世界転生してさ、これからワクワク大冒険の始まりかと思ったのに。

 二度目の人生もこれで早くも終わりか。

 俺は死を覚悟した瞬間………


 蓮がスキルを発動させる声がする。


「『天雷』」


 キャウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!


 雷が狼に直撃。

 狼は悲鳴をあげて逃げて行った。


「大丈夫か! オッさん」


 蓮の言葉に方針状態の俺。


「よかった! 怪我はなさそうね」

「おい、先を急ぐぞ!」


 俺たちは魔物に出会わないように先を急いだ。が、一日半かかると言われていたので日が陰ってきた。


 「まだ帝都までは距離があるから、今日はここで野宿するか」


 俺はここにするか。

 他の勇者たちと距離をとって横になる。

 疲れもあったのか、すぐに俺は眠りについた。


「おぃ、オッさんは寝たか?」


 蓮が俺の様子を見ながら言った。

 俺以外の勇者たちが輪になって、小声で話しあう。


「あぁ、寝たようだ」

「なぁ……オッさんって邪魔じゃね? 今までの召喚者の中には死んだ奴もいるって話だよな?」

「あぁ」

「これはゲームじゃねえ。生き死はリアルみたいだ。そんで、俺らは勇者だから公平に色んなものを分配するのは当たり前だ!! だが、オッさんは違う。料理人で戦闘に向かない役立たずだ」


 蓮は他の奴の様子を伺いながら話すと、

 良し……っと頷いた。


「――オッさんが寝ている間にここを離れるぞ」


 と、里穂が呟いた。


「いや、でも……そんな……」

「あぁ?」


 蓮は文句があるのかって威圧的な態度で里穂を睨みつける。


「ここって凶暴な魔物の巣窟なんでしょ。さっきみたいに魔物に襲われちゃったら死んじゃうんじゃ……」


 蓮はその言葉に「ハァ?」と呆けた表情をした。


「お前もさっきのオッさんの闘いざまを見ただろ! 俺が助けなかったらオッさんは今頃死んでるんだよ。明らかに足手纏いだろ」

「そ、それは……」

「それに、俺達の生存率を下げてまでオッさんを連れて行って、さらに無償で物資を恵んでやるのか?」

「でも、それじゃ見殺しと一緒じゃ………」

「そもそもあのオッさん勇者じゃねーんだぞ。俺等とは違う人種の役立たずなんだよ」


 里穂は蓮の威圧的な言葉に口篭る。


「あんたはどうなんだ? 大学生さん」


 流星は静かに呟いた。


「仕方ないだろう」

「よし、満場一致だ。水も食料も全て引き上げて移動するぞ。 オッさんに残しても仕方がないだろうしな」


 里穂は俺の寝袋の方角に視線を向けて……


「……ごめんね……おじさん」


 そうして俺が眠っている間に他の奴らは居なくなっていた。


 翌朝。


「あいつら……やりやがった」

 

 朝日と共に目を覚ました俺は絶句した。

 俺たちが野営していた場所は引き払われていて、王様が用意してくれた水と食料と金貨は……全て消えていた。

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