チートスキル
グァー! グァー! グァー! グァー! グァー!
無数の烏が空を飛んでいて、不気味な烏の鳴き声が森に響き渡る。
俺はそんな魔物がいる森で一人ポツンっと佇む。
仕方ない。とりあえず持ち物の確認するか
金貨1枚
寝袋
ライター
主だったところはこんなもんか。
金貨はポケットに入れていたのが一枚あった。だけど、今は何の役にも立たない。
その他の食料や水類はすべてもっていかれてた。
ヤバいな。
食料だけじゃなく、何よりも水がヤバい。これから歩き回ることを想定すると一日は持たないだろう。
――水も無ければ飯もない。オマケに魔物の危険までも心配しなければいけない。
人里に行きたいが、その場所も方向も分からない。
方向すらも分からない状態で闇雲に歩いても、すぐに動けなくなって喉がカラカラになって死んでしまうだろう。
俺は深いため息をついた。
「ううっ……、なんでこんな事になるんだ」
今度魔物に遭遇したら俺は死亡確定だろ、これ。
あぁ、まだ死にたくない。
魔物に出くわしたらどうしよう??
せっかく転生して人生謳歌しようと思っていたのに、すぐに死亡フラグ。
俺の人生ってとことんついてないんだなと思う。
そんなことを思っていると………
ガサゴソ。
再度木陰で何かが動く。
「う、うわっ!」
ピョンっとウサギが木陰から飛びだす。
「なんだ……、ウサギか」
俺は安心して胸を撫で下ろした。
狼じゃなくてよかった。
俺はほっと胸を撫で下ろす。
ぐにゃ……
安心していると何かを踏んだ感触がして、そっと足元をみる。
「死体……か」
そこには白骨化した骨があった。
ギャァァァァァァァ!!
マジでこれ死亡フラグじゃん!!
これ俺、確実に死ぬじゃんーーー?
死、死、死だよーー
俺はビビって全速力で森を走る。
* * *
『辺境の地』
無我夢中で走っていたら『辺境の地』と書かれた看板が立っていた。
そこには雑草が生い茂っている広大な草原が広がっていた。
わざわざ辺境の地って書かなくてもいいと思うが。
とりあえず、雑草の中をかき分けて進むとポツンとオンボロの家が建っていた。
よっしゃ、人がいるかもしれないぞ。
俺はドアの前に行きドアを二、三回ノックする。
返答はない。
次にドアノブに手をかけ回す。と、ガチャっとドアが開く。
よっしゃ。空いたぞ。
ドアを開けた瞬間、ゴトっとドアがとれた。
マジか………。
俺は中に入るが人の気配はない。
奥に入ると、埃と蜘蛛の巣だらけだった。
長くこの家には人が居なかったみたいだ。さっきの白骨遺体の人が住んでいたのかな?
近くにランタンが置いてあったので、俺は持っていたライターで火を灯した。
台所らしき場所には、食器類は何種類かあったけど、食料の備蓄はないようだ。
後はソファーにテーブル、イスが数個あった。
家の中はこんなもんか。
ヤバい。水らしきものがない。
俺は家の周囲を探索する。と、井戸があった。
使えるのか、この井戸?
何度かポンプを押すと、綺麗な水が溢れ出てきた。
試しに飲んでみると水は腐ってはいなかった。
よし、水さえあればなんとかなる!!
あとはこの雑草を狩りたいな。
「スキルで何か使えるか見てみるか」
ステータスオープンと唱える。
俺の目の前に半透明のウィンドウが出現した。
それにしても????どうやってこれを使うんだ?
「「?????発動」」
唱えてみても変化ない。なら、触れてみたらどうか?
特にこれといった変化はなし。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
甲高い悲鳴が聞こえてくる。
この声は女性のものだ。
「なんだ! 一体、どうしたっていうんだ!?」
茂みから少女が飛び出してきた。
次にさっき襲われたのと同じ巨大な狼の魔物が見えた。
どうやらこの少女はこの狼の魔物に襲われているみたいだ。
おいおい、どうするよ!
グウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!
鈍い唸り声を出す狼。
倒れている少女は見た感じ人間の少女ではない。
金髪の髪に長い耳、地球にいた時に物語や映画で見たことがある。あれはエルフという、亜人種だ。
ボロボロの恰好をした少女は今にも狼に襲い掛かられる、寸前であった。
どうする?
俺は非戦闘用である『料理人』しかない。
あの獰猛な魔物の狼に太刀打ちできるのか……。
今度は助けてくれる人もいない。自分でなんとかするしかない。
だが、迷っている暇はない。狼は今にも鋭い牙と爪で彼女の命を奪わんとしているのだ……。
「あっ……ああっ……ああっ……あっ……ああっ…」
エルフの少女は恐怖のあまり、足がすくんで一歩も動く事が出来ない様子だ。
俺が見逃せば、少女は間違いなくあの魔物により命を奪われるだろう。
覚悟を決める。
おい!
俺は石を投げつけ狼の意識を俺に向けさせる。
ガルルル!
投げた石が狼に当たり、狼は俺に向かって鈍い唸り声を出す。
――俺は魔物と目が合った。
ヤベー、マジでこえーよ。
俺の足はガクガク震える。
狼と俺は互いに見つめ合う。
武器、武器、武器になる物はないか?
俺は武器になりそうな物を探す。
あっ!!
錆びついた包丁が落ちていた。
俺はそれを拾い、構える。
すると、狼はヨダレを垂らしこっちに走りだした。
俺は出鱈目にカマを振り回す。が、巨大狼はそんな攻撃に怯まずに大口の牙を俺にむける。
「うわァっ! 来るなっつ! 来るなっ!」
するとピコンと頭に声が流れる。
【料理技:ぶった斬り】が発動しました。
ん?
ヒュインっ!
瞬間、風斬り音と共に鳥の頭と胴体が分かれた。
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
「料理スキルってレベルじゃねーぞ……」
俺は胸を撫で下ろす。
少女に話しかける。
「おい! 大丈夫か!?」
エルフの少女を見るのは初めてだが、整った顔立ちに雪のような白い肌。その美しさに思わず見入った。
そして彼女の服は胸元が斬り裂かれ、胸元が大きく露わになっていた。
想像していたよりもずっと大きいその双丘に俺は目のやり場に困った。
「あ、ありがとうございます! あなた様は命の恩人です! 私の名はウィンリーと申します。エルフです。あなた様のお名前はなんとおっしゃるのでしょうか?」
「俺はミツボシだ……ツキシマ・ミツボシ」
俺はエルフの少女、ウィンリーに名乗った。
「それで、どうしたんだ? 君は随分とズタボロじゃないか!?」
「それが……実は私、エルフの国の王女なのです」
ウィンリーは語り始める。
「エルフの王女様がなんでこんなところにいるんだ??」
ウィンリーはエルフ国のお姫様だというのに、なぜこんな辺境の森にいるのか、わからなかった。
「私達のエルフ国は、森の奥深くで平穏に暮らしておりました。……しかし、その平穏な日常がある日、最近噂になっている教団、ウロボロ教団と言う教団の手により、崩れ去ってしまったのです。奴らは私達の国を見つけると警告もなしにいきなり魔法で火を放ち、大勢の同胞を虐殺し、連れ去り始めたのです」
ウィンリーは悲痛な表情で告げてくる。
あっ、悪役教団とか存在しちゃうんだ。
「そして私達は命かながら、逃げてきました。他にも仲間がいましたが、途中ではぐれてしまい私は一人当てもなく彷徨っていました。そして先ほど狼に襲われているところを、ミツボシ様に助けられたのです」
なるほど! そういう事だったのか。
「そこでミツボシ様お願いがあります! よろしければ私を雇ってくださいませんでしょうか?」
ウィンリーは目をウルウルさせながら、俺に懇願してきた。
「君を雇うだって?」
「はい……どんなことでも致します」
どんなことでも?
ウィンリーの綺麗なピンクのプルンとした唇、透き通った柔らかそうな双丘、綺麗なブルーな瞳。
変な妄想が頭をよぎる。
「行く宛てもない私にどうか、慈悲を与えて頂けないでしょうか?」
まぁ一人だと寂しいし、誰かいた方が心強いか。
「いいけどさ……俺は身ぐるみ剥がされて置いてきぼりにされてるから、お金とかは出せないけど、それでもいい?」
「勿論、お金なんていりません! あなた様に救われた命です! あなた様のお役に立ちたいのです!」
「わかった、ウィンリー。君を雇うよ」
「ありがとうございます!!」
こうしてウィンリーが仲間になった。




