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不運な俺は異世界に行っても不運な様です  作者: 試験管
シェッテ王国騒乱
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256 拠点確保


「うお、なかなかご立派……っ」


 ギルド紹介で大きな一軒家、というかお屋敷……豪邸?を借りた。

 目の前にはうちの拠点よりも大きなお屋敷。

 三階建ての堂々としたその姿はまさに“貴族のお屋敷”と言ったものだった。

 ぐるりと囲んだ高い柵とそれよりもデカいお屋敷。

 壁には正門と、裏門、下働きの人達が使う勝手門があり、それ以外は装飾的でトゲトゲした柵。


 ーーーその前にズラリと並ぶ使用人。


 ここはとある貴族家の保養地として使用されるお屋敷だ。

 高位貴族のお屋敷で、主人不在時でも建物を管理する使用人を置いているそうだ。

 それだとお金を消費するだけなので、高額の費用を支払えば借りることができる様にされていて、それを借り受けた形である。

 普段はこの辺りの小貴族がパーティーに使用したり、この辺りを通る中〜上貴族が宿泊場所として使用するらしい。

 今回大人数である程度の期間利用でき、外に会話が漏れない部屋がある宿か貸家はないかと聞いたら嬉々としておすすめしてくれた物件である。


「「「ようこそいらっしゃいました」」」


 不思議な言い回しのこの言葉は、この国での歓迎の言葉なのだそうだ。

 いらっしゃいませ、ではないんだな。

 今回俺は一番偉い立場なので鷹揚に頷き、チラリとヤンスさんに視線を送る。

 ヤンスさんが頷いて一番前に立つ壮年の男性の元にゆっくりと歩を進めた。

 彼はお屋敷管理の責任者で、アントンだと名乗った。

 濃い茶色の髪をオールバックに撫で付け、きゅっと結ばれた赤い蝶ネクタイがよく似合っている。

 しかし、おでこが陣地を広げ過ぎて頭頂部まで進んでいる為、見た目が少しコミカルだ。

 痩せ型で口髭はしっかりしていて、何故か既視感を抱く見た目である。

 主にスマホのアプリゲーム的な意味合いで。

 あれ、めっちゃ広告で出てくるけど面白いのかな?

 流行りの広告内容を真似しまくってた遠い記憶……。


 おっと、話が逸れた。

 商業ギルドから連絡がいっているはずだけど改めて確認すべき事があるのだそうだ。

 ここに来るまでの間にヤンスさんから指導されたことで、俺は後方でのんびりと構えておけとの事だった。

 アントンから連想したアプリゲームを思い出しつつ、ぼんやりとしていると話は終わった様だ。


「改めまして今回お世話させていただきますマルグレーテと申します」

「滞在期間中よろしくお願いします」


 メイド長だと思われる女性に深々と膝を折った挨拶をされて、ぺこっと頭を下げると周りがざわつく。

 使用人に対して頭を下げるなんて変な人達だわーとか、本当にお金持ちなの?とか小声で話し合っている。

 聞こえてないと思ってるみたいだけど、ごめん、全部聞こえてるよ?

 マルグレーテが眉間に皺を寄せている。

 これは後で怒られちゃうかもしれないな。


「会頭、ちょっと問題がある」

「どうしま……したの?」


 ヤンスさんが俺を会頭と呼び、うっかりいつも通り返事しそうになって睨まれ、言い直す。

 うう、めっちゃ怖い!


「それが……」


 どうやら屋敷の維持管理をする人達の中には馬の世話をする馬丁はいないらしい。

 普段ここを利用する者達は御者が管理しているんだとか。

 俺達みたいに長期間利用する人は少ないそうだ。

 持ち主は勿論知っているから自分で馬丁を連れて来る。

 一日二日ならそれでも良いんだろうけど、俺達は自分達で交代で御者をやってきたので馬丁などいない。

 なんなら馬のご飯やお世話は俺がやっていた。


「うーん……流石に俺がお世話するというのは立場上よろしくない、よね?」

「そうだな。馬好きな男だとしても旅の間みたいには出来ねえな」


 俺としては馬のお世話は楽しいし、かわいいから全然良いんだけど、それしちゃうと一番偉い人間が下っ端の仕事をしてることになっちゃうもんね。

 二人で首を捻り急いで馬丁を探そうかとおもった。

 けれど、そこでクリストフさんから待ったが掛かる。

 情報屋の人が馬の世話ができる為、持ち回りでやってくれるそうだ。

 それならば飼い葉やご褒美のフルーツなどを専用の倉庫に置いてよろしくお願いしよう。


「こちらの事情で申し訳ないが……」


 飼い葉などが会頭()の【アイテムボックス】に入っている為先に馬小屋と倉庫に行きたい旨を伝えるとアントンもマルグレーテも目を丸くしていた。

 他の人達は先にマルグレーテに案内してもらい、俺、ヤンスさん、クリストフ、情報屋の三人はアントンについて馬小屋に向かった。


「こちらが車庫になります」


 アントンが扉を二つ開けると通り抜け出来る車庫が現れる。

 そこに馬車を停めて、馬を離せば馬小屋はすぐ隣。


「そちらに放牧スペースがありますので、馬達を運動させるのであれば自由にご利用下さい」

「道具などはお借りしても?」

「勿論大丈夫です。こちらがブラシであちらにピッチフォークがございます」


 クリストフの質問にアントンが丁寧に答えていく。

 それをふんふんと頷きながら聞いている情報屋の三人。

 器具や場所の説明をされている間に俺は馬達のお世話をしてしまおう。

 彼等は我慢できずに俺の髪の毛をもっちゃもっちゃやられているから。

 あー……髪の毛に涎付ケナイデー……(諦め)

 それぞれを馬房に繋ぎ、水と飼い葉を用意する。

 それを食べている間に、歩いて汗をかいてしまっている馬達をヤンスさんと手分けして拭きあげ、ブラッシングしていく。

 よしよし。

 ここまで頑張ってくれたご褒美に、葡萄を飼い葉桶に入れると凄い勢いで食べ出した。

 貸し馬車屋からはあまり贅沢をさせないでくれと言われたがしかたないよね。

 頑張ってくれたんだからご褒美は必要だよね。

 馬達の目が「もっとくれ」と言っているけどそれはダメです。


「あんまり甘いもの食べると太っちゃうからね」

「ぶひひん!(そんな〜)」


 情けない声に笑いながら首元をポンポン叩いてやったらまた髪の毛をもしゃもしゃされた。

 ああ、またヨダレがーー……。

 馬を押しやって、自分に洗浄を掛ける。

 ヤンスさんは慣れているので助けてくれるわけでもなく、安全圏から笑って見ているだけだった。

 洗浄をかましていたので、戻ってきた五人が俺と馬達のやりとりに呆然としていた事には気付きませんでした。



 俺達が案内された時には他のメンバーの荷解きは終わっており、館内の設備の説明に出た後だった。

 俺は商隊の主人という事で大きな客間を一人部屋として与えられ、メイドさんを一人専属に付けられる。

 猫の獣人さんで、頭につけられたプリムの向こうから三角の耳がぴょこりとのぞいている。

 耳の模様的に茶トラかな?

 十六歳くらいの可愛らしい女の子である。

 長い髪を三つ編みのおさげにしていて、チラリと上目遣いでコチラを見ていた。


「これからお世話になります。よろしくね」

「……っ!よ、よろしく、お願い致しますっ」


 慌てて頭を下げるメイドさんは、出会ったばかりの頃のデイジーを思い出させる。

 名前を聞けばリリーだと名乗った。

 この後すぐにアントンが館内案内をしてくれる為、この部屋を不在にする。

 そう話すとしばらくいなくても大丈夫だということが伝わったようで、「かしこまりました」と部屋から出て行った。

 メイドさんならやる事はいっぱいあるだろうしね。


 部屋を出ると丁度斜め向かいの部屋からヤンスさんが出てきたところだった。

 ヤンスさんは他のクランメンバーと同じ様にそこそこの大きさの一人部屋らしい。

 護衛担当の『烈風』達は四人部屋で、騎士の二人とヴァルターさんとクリストフさんも一人部屋、その他は四人部屋である。

 あとヴィンデとアルミンは少しランクの下がった二人部屋だそうだ。

 二人は俺達の商会の案内役として道中期間限定と言う形で改めて雇った。

 というのも、商人たるものなあなあではいけませんと、復活したヴィンデに叱られたのだ。

 どれくらいの恩義があって、幾ら返せば良いのかをハッキリさせておきたいとも言われた。

 なんか凄く商人だなぁって感心しちゃったよ。


 他の人の部屋を説明されたら館内の案内に移行する。

 食堂、お風呂、倉庫、会議室用大部屋、パーティなどで使用する用の大広間、俺達が使用していいキッチンなど、お屋敷をぐるりと案内された。

 会議室?作戦室?にするのに丁度良い部屋を確保出来たのは嬉しい誤算である。

 部屋を借りれる確認して、了承を得るとそこを作戦本部として使用する。

 大事な商談をしたりするから俺達が使っている間はそこには近づかないでね、とお願いすれば是と返ってきた。


「使用人通路確認できるか?」

「あー、と……ありますね」


 ヤンスさんに小声で言われて、念の為に探索魔法で確認すれば、部屋の両サイドに使用人通路を発見した。

 それを小声で報告すれば会議中にそこを通る者が居ないか警戒しておく様に、と言い含められた。

 また一つお仕事が増えました(笑)

 各部屋に変な仕掛けがないかヤンスさんが色々確認して、最後に談話室に向かう。

 皆と合流したらとりあえず会議室へ移動して作戦会議だ。

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