254 フォーグレノスッテに潜入 3
少し短めです。
「よく賄賂を求められていることに気付いたな」
「ん?」
門を抜け少し進んだ所でオーランドが言った。
先程のことだと気付くまでに一拍。
ああ、と手を打って簡単に説明する。
「待ってる間中に入った人達ってさ、審査の時間が全然違ったじゃん?」
「そんなの人によって怪しさとか確認すべき事が違うんだから当たり前だろ?」
ハンターの様に身の回りの荷物だけ、クエストを受けてますって人はその証明だけあれば大抵は時間を置かずに通り抜けられるし、荷物満載の馬車はその荷物を改めなければならないので時間が掛かる。
そんなのは当然だ。
だが、ここに関しては違った。
「そうだけど。でもさ、俺の偏見かもしんないけど、怪しそうな人とかやばそうな人、あとお金持ちっぽい人は総じて時間が短かったんだよ」
「ああ」
「どういうことだ?」
レオンさんはここで理解し、オーランドは首を捻る。
俺の賄賂とこの情報で大抵はわかると思うんだけどな。
「つまり色々慣れてるから、兵士が賄賂を求めてるってすぐに気付いて、お金や物をサッと渡して通り抜けたって事でしょ?」
「キリトはそれに気付いて、相手に要求を聞いた上で酒を渡したってことさ」
そう。
お金にしても物にしても何をどれくらい渡せば良いのかよく分からなかった為、探りを入れたのだ。
出来たらお金を避けて通れないかな、と期待を込めて。
俺の勘違いだったらちょっとした商売になるだけだもんね。
まあ勘違いでもなんでもなくワイン寄越せって言われたけども。
ムカついたからワインの質としては下の下なワイン (?)にしておいたけどね。
そんな話をしながら広場の隅に寄った。
門からはそこそこ遠く、でもまだ広場の内という程よい場所で、他の人達がスムーズに通れる様に場所を空ける。
勿論ヴィンデ達を馬車に乗せてやる為だ。
ただの優しさというわけでは無い。
普段からこの辺を利用している彼女達がいる事で俺達が怪しまれる可能性を僅かでも下げる為だ。
打算と欲望に塗れてる気がするけど、それで助かる人がいるなら別に良いかとも思う。
これに関しては影も情報屋も騎士さえも納得済みである。
門からは、門番的に“物分かりの良い”者達がパラパラと出てきているが、母子は中々出てこない。
時間はすでに夕方と言って良いくらいだ。
辺りは次第に薄暗くなっていく。
「いくらなんでも遅くない?」
「見逃したか?」
「いや、でも門を出たら待ってるって話しておいたし、本人達も礼を言っていたよ?」
門の前の広場はそこそこ広く、端の方ではすでに野営を始めている者達もいる。
彼等はこの時間からであればもうフォーグレノスッテの閉門に間に合わないと諦めたらしい。
俺達はどうするかと相談を始めた頃、門からよろよろとヴィンデ達が出てきた。
アルミンがその背中を支えている。
「遅かったな、何かあったか?」
「!!ぁ、ああ、オーランド、さん……少し、入国に関しての取立てがありまして……この子の前では……」
男性に少し怯えた様な態度と、疲れ切ったその姿、泣きそうなアルミンの顔でなんとなく察する。
オーランドのハンドサインでエレオノーレさんとデイジーがやってきた。
俺達はアルミンを少し引き離して彼から話を聞く。
「アイツらおれたちをみてすぐにたいどをかえたんだ」
憤懣やる方ないと言った表情で目に涙を溜めて俺達に訴える。
俺達とは違って、露骨に賄賂を要求されたらしい。
ヴィンデはここを通り抜ける際に通行料は要らなかったはずだと断ったが、それならば通すことは出来ないとニヤニヤ笑いながら言っていたそうだ。
それからヴィンデと兵士があれこれ話していたけれどアルミンには難しくてわからなかったそうだ。
けれど、結局ヴィンデは項垂れてアルミンに「ママは兵士のおじさんのお手伝いをしてくるからここで良い子に待っててね」と言って部屋を出て行った。
すぐにやってきた別の兵士が「またかよ仕方ねぇな」と笑ってアルミンと話して時間を潰してくれたそうだ。
その後満足そうな兵士とくたびれ切った母を見て連れて行かせなければ良かったと後悔した。
「かあさんをいじめたへいしをやっつけてやろうっておもったんだけど、ヤンスのおっさんにおこら……言われたからがまんしたんだ」
涙目で口をへの字にして俺を見る。
頑張ったよね?と見てくるアルミンを放っておくことなんかできなかった。
「ああ、アルミンは頑張ったな。ちゃんと我慢できてえらいな」
ガシッと抱きしめて頭をワシワシ撫でる。
なんだこれ!
なんだよこの国は!
もしこれが国境での当たり前になっているとしたら許せない。
後で絶対影の人に報告をお願いする。
そうして、手紙も書いて皇宮に届けてもらおう。
そっとしておいてほしいとかそんなこと言ってる場合じゃないだろ?
正式に国から国へ抗議してもらおう。
俺はそう決心してアルミンを連れて広場端の方、馬車の所まで移動する。
ヴィンデから話を聞いたデイジーも怒りに顔を染め、起こったことを報告してくれた。
やはり賄賂に渡すお金が無かったのでアルミンには言えない事を別室で強要されたらしい。
あまりの事にエレオノーレさんがブチ切れて「シェッテ王国側の国境の兵士達を全て燃やしてやるわ」と息まき、ジャックに止められていた。
ただ、止めはしたが、俺達全員の気持ちは同じである。
状況が状況な為、男連中は少し距離を取りデイジーとエレオノーレさんにヴィンデの回復とケアを任せる。
グレーテさんには三人の護衛についてもらった。
四人はヴィンデの身体を気遣いながらこちらにゆっくりと移動してきている。
手早く自分達の天幕を建てると、ヴィンデ母子が休める様にタープと予備の天幕を張る。
これはアルミンにも手伝わせた。
ここで手伝いをする事でヴィンデと一緒に俺達と休んで良いという条件である。
施すばかりでは救いにならないのだとヤンスさんが言う。
確かにその通りなんだけど、子供や女の人が大変そうだと助けてあげたくなるじゃんか。
ただ、ヤンスさんの言う通り、手伝いが宿泊料代わりだと言われたアルミンは、ただの親切より納得出来たのか、ニコニコくるくるちょこまか走り回ってイキイキしていた。
子供には暗い顔は似合わないよな。
ヴィンデ達も辿り着いて今はタープの中で休んでいる。
デイジーがヒールを重ねがけして身体の方は回復したみたいだけど心がしんどいらしく、声を掛けずにそっとしておけと言われた。
ちょっとマジでこの国燃やし尽くしてやろうかな?
その日の晩はアルミンを俺の天幕に泊まらせ、ヴィンデを休ませた。
いつも俺不運を読んでいただきありがとうございます。
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詰め込みたい情報が多すぎて全然先にすすみません…
申し訳ありません。
早くシェッテ王国“騒乱”になる様頑張ります。




