244 廃油石鹸実験・販売準備 5
廃油の回収を始めて一月、ここにきて予想外の問題が発生する。
なんとリヤカー欲しさに子供達を襲って盗もうとする奴が複数発生。
幸い門番や衛兵達が近くにいて事なきを得ているが、これに関しては死活問題だ。
お預かりしているご家族に顔向けできない。
どうにかこうにか、子供達の親族の引退した元ハンター達や、ウチに隔意のない他所から来たばかりのハンター達を護衛に雇った。
しかし、根本的に解決しなければこの後も何度も襲われる事になるだろうし、護衛に雇ったハンター達も春になったら契約が切れる。
勿論衛兵さんや大活躍した門番さん達に感謝の付け届けはしっかりと行った。
そもそもなんでリヤカーが狙われるのかわからない。
そう呟けば皆から呆れた表情が返ってくる。
「そりゃ誰だって欲しいだろ?」
「?」
オーランドの言葉の意味が分からずに首をひねればパウルさんが教えてくれた。
なんとこの国、木製の大八車的な物はあるけど、子供が引けるくらい軽い物は無かったらしい。
しかも大量の廃油を乗せても、あれだけ簡単に動くのは見たことも聞いたことも無いのだとか。
今までは大量の油など、馬がいないと引けない代物ばっかりだったらしい。
それが十代前半の子供達が三人で、とはいえ簡単に引いてしまえる。
商人に農父に工房に、と喉から手が出るほど欲しい者は大量にいる。
確かにそりゃ狙われるわ。
これに関しては気まずいなんて言ってられない。
いつものルートでヒエロニムス様に相談して、騎士達に話を通してもらった。
程なくして騎士だけではなく衛兵にも情報・命令が下って、街の見回りが強化される。
とりあえずこれで子供達の安全も保障された。
デイジーとも仲の良かった“門番のおじちゃん”を中心に、リヤカー強盗以外の犯罪にも目を光らせてくれるらしい。
すでに三組程の襲撃班を捕まえていた。
二組は既に騎士団に突き出し済みで、処罰されて現在強制労働中である。
最後の一組“街の悪ガキ軍団”みたいな子供達を捕まえた時は門番のおじちゃんが彼等の首根っこを掴んで引きずってきた。
彼曰く、幼い頃から見守っていて、悪ガキではあるが根は悪い子ではないのだそうだ。
子猫に餌を与えていたり、本当に困ってるお年寄りの手伝いをしたりしていることもあるらしい。
どうにかこの子達は騎士団に突き出さず、罰金程度で許してやってほしいと耳打ちされた。
無理やり頭を下げさせられている彼等曰く、ゲームのような感覚で襲ったのだそう。
「だってみんな狙ってるし」
「オレ達が奪えたらヒーローだろ?」
「馬鹿にする奴らを見返せるじゃん」
「あと、高く売れそうだしな」
「オレ達を馬鹿にする奴らに売りつけてやろうと思ってた」
などと口々に言って反省など全く見えない。
だが、コイツらは使えるのではないだろうか?
彼等の襲撃理由は誰かに認めて欲しいって感じだった。
ひねくれた空気と甘ったれる空気が弟を連想させる。
もしかしたら家族とうまくいっていない子達なのかもしれない。
少しだけ試してみようかな?
俺はニンマリと笑うと提案を口にした。
「ふうん。じゃあそのむこうみずな根性と腕っぷしを活かしてみないか?」
「は?」
「はあ?」
「「「はあぁ?!」」」
某アメフト漫画のハアハア三兄弟を思わせる返しに、より笑いが込み上げる。
これはマジでウチの弟感あるな。
「お前達を子供達やリヤカーの護衛に雇いたい」
俺の言葉に本人達だけでなく、それ以外の皆が唖然としていた。
その後色々話をつけて、悪ガキ軍団を雇った。
いや、もちろん子供達には謝罪させたし、少ないながらも賠償金を支払わせた。
はじめのうちは信用されていなくて、警戒心バリバリだった少年五人だったが、雇用契約の話になると「本当におれたちを雇うつもりかよ?」などと焦り出していて少し面白かった。
家に問題があって帰りたくない者もいるだろうから、社員寮が完成するまではウチの客室に泊めてやる。
五人中三人が希望した。
連絡も無く家を飛び出したら絶対家族が心配するので、オーランドと一緒にお宅訪問(パウルさんだと圧が強すぎる為の人選である)して、彼等を預かる旨を伝えておいた。
本人達は、かなり渋っていたけど、通すべき筋は通しておくものだろう。
まあ、反応は言わずもがなであったとだけ記しておこう。
街で暴れていたとは言え、彼等は戦闘に関しては素人。
そんな彼等を雇ったからと言って、護衛で雇っているハンター達をすぐに解雇などできはしない。
それぞれの回収組に悪ガキ軍団を組み込むけど、護衛のハンターは、一旦継続している。
護衛ハンター達も冬の間はちょうど良い仕事だが、長期間拘束される事は望んでいない。
引き継ぎが出来るなら安心して春には新しい仕事に着手出来るだろう。
単発雇いの護衛のハンター達に一人ずつ付けて訓練してもらいつつ、仕事を覚えてもらう。
護衛のハンター達には「とにかく褒めて!三歳児だと思って教えて何か出来たらすぐ褒めて」とお願いしておいた。
今までは煙たがられる事が多く、頼られることの無かった彼等は、素直に慕ってくれる子供達や、「後を任せるからな」と言うハンター達の言葉にヤル気を出して、真面目に仕事してくれる様になった。
やっぱり弟とおんなじだったみたいだ。
食事も何度か一緒に摂って、彼等が自分達の事情を色々話してくれる様にもなった。
やっぱりと言うかなんと言うか、色んな事情から家族の愛に飢えていた様子。
多少粗暴な態度は変わらずあるものの、子供返りしたみたいで、叱ったり褒めたりしてくれるパウルさんを父の様にしたってちょろちょろとまとわりついていた。
俺の事は何故だか「兄貴!」と呼ぶ様になってしまったけど、まあ可愛い弟分ができたと思えば悪くない。
彼等の実家の方でも、お金を稼いできた子供達に大騒ぎだったのは別の話。
家族に初めてまともに褒められたとはにかんで報告してくれた少年に、少し胸が締め付けられた。
あと、リヤカーの作り方を公開して誰もが簡単に発注購入できる様にしてみた。
ただ、特殊合金の中空パイプは均一に作ることが難しいらしいのでドワーフ工房に依頼しないと手に入らない。
その技術料やら材料費やらが掛かってかなりお高いけど、それでも大人一人の力で大量の資材が運べるのはデカいらしい。
ギルドや稼ぎの良い商家などは既に購入済みらしく、街を行き来するリヤカーがチラホラみられる様になった。
今回のリヤカーはドワーフの技術力以外はほぼほぼタダなのだけど、何故か大量の金貨とご褒美が貰えるらしい。
公共事業などに良いとヒエロニムス様が大絶賛していた、と伝言役の方が言っていた。
なのでドワーフ達と報奨金を山分けしたいんだけど、俺対ドワーフ工房で一対一の割合でしか受け取ってくれない。
そこから工房の職人達で分けたら足りなくない?
俺の信用のおかげ?
いや、なんか違くない?大丈夫?
え?皇宮からすげえ数の発注が来た?
俺のおかげ?
いや、なんか違くない?
ええー?
いつも俺不運を読んでいただきありがとうございます。
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現在章タイトル変更中の為、違和感を感じるかと思いますがそのうち落ち着くと思いますのでご了承下さい。
お話自体は変わりません。




