間話 ◯視点 デイジー 【ダンジョンのくりすます】
クリスマスの間話です!
クリスマスらしくちょっとだけ甘酸っぱい恋の話でも…と思いましたが妙に長くなってしまいました。
ドドレライスデンのダンジョン『罪と罰の塔』その地下階層。
そこで過ごす様になってしばらく経った。
冬も深まり、ダンジョンから出ると、冷たい風と大きな雪が容赦なく吹き付ける。
七日に一度地上に戻る事ができるとはいえ、基本的にはダンジョンに篭り切り。
街で手に入れる事が出来るのは僅かばかりの保存食と割高の薪、小麦粉程度。
お風呂に入れ、ゆっくりとベッドで休める事だけが唯一の救いだ。
魔物を倒し、セーフティエリアで休み、食事を用意する。
そんな毎日に波紋を起こすのはいつだってキリトさんである。
「そろそろクリスマスだな」
「「「「「!!」」」」」
その言葉にパーティの皆が一斉に反応した。
以前のパーティを忘れてはいない。
沢山の美味しいご馳走、プレゼント交換、ミニゲームやカードゲーム。
この鬱々とした討伐クエストの中で思い出すにはあまりにも綺羅綺羅しい思い出。
「せっかくだし、来週あたりにクリスマスパーティしない?」
「やろう!」
「やるわ!」
「やります!」
「おう!」
「……!」
そうして始まったクリスマスパーティの準備。
飾り付けは今回は無し。
流石にダンジョン内では無理だ。
でも、前回採ってきたターネンバゥの若木はそのまま利用するらしい。
相変わらず“おーなめんと”もリボンやベル、ステッキ状にしたキャンディーや、ジンジャークッキー、小振りな姫リンゴなども飾られていて、とても綺麗。
この木は見ているだけでワクワクと心が浮き立つので不思議。
「デイジーはツリーが好きだよね」
「そうでしょうか?」
ちょいちょいと位置を調整しているキリトさんが振り返って笑う。
少し前までは見上げるばかりだったのに今では視線の高さが同じだ。
その笑顔にドキドキしながら視線を外す。
ああ、また可愛くない態度を取ってしまった。
少しだけ自己嫌悪。
キリトさんは「成長が止まっている」というのは『飛竜の庇護』の間では当然の認識となっている。
でも誰もその事に触れない。
エルフもドワーフも精霊も混じっていない純粋な人間だと自称するキリトさん。
それをそのまま受け取るのであれば、成長するなり、お肌が衰えるなりするはず。
なのに現実は、少年の様なぴちぴちつるんとした肌と、幼い顔立ちのままだもの。
エレオノーレさんやカトライアさんに至っては「キリトの血を飲めば若いままいられるんじゃないかしら?」なんて笑いながら冗談を言っていた。
……じょ、冗談、だよね?
エレオノーレさんだってエルフの血が混じっているのでとても若く美しい。
見た目の年齢だけなら同い年に見えるくらいだもの。
あ、話が逸れてしまった。
クエストの合間を縫って作る料理の計画を立てる。
やっぱり山鳥の丸焼きは欲しいとオーランドさんが手を挙げる。
ヤンスさんがトマトのチーズ焼きを希望して、エレオノーレさんは豪華なケーキ、ジャックはクリームシチューと希望を述べていく。
唐揚げは今回はやめておくことになった。
油を大量に使うので危ないだろうとのことだ。
皆に配るのは量の調整がしやすいクリームシチューにして、山鳥の丸焼きは配れないのでデスムーアのローストを作っておいて配布しようと話し合う。
この日だけはお野菜縛りはお休みだ。
合間に入った休息日には買い出しに出る。
プレゼントもこのタイミングで選んで購入しておいた。
前回はハンドクリームを作ったけど、今回はそんな時間は無いので魔石袋を購入した。
外に魔力が溢れない様にした専用の袋。
これなら誰に当たってもきっと役に立ってくれるはずだ。
比較的他に入りやすい牛乳やバター、クリームにチーズなど色々追加購入して、キリトさんに手渡す。
にっこり受け取って【アイテムボックス】に入れると次の店に向かった。
エレオノーレさんの言っていた“豪華なケーキ”というのはキリトさんのレシピで作った“でこれーしょんケーキ”というやつのことである。
拠点で生活していた時に売ってたケーキが気に食わないと言っていたキリトさん。
「もっとスポンジがふわふわして、甘みも抑えて素材の旨みを活かしたのが食べたい!」と言い出した。
その日の晩に、詳しい分量はわからないけど、と言いながら“シフォンケーキ”のにゅあんすレシピというものを出してきた。
大体の材料と多分こうだったはず、とかこうしてたと思う、などというレシピとは呼べない感じ。
キリトさんはよくこうやって自分の食べたい料理のにゅあんすレシピを持ってくる。
それを見ながらわたしとジャックで量や作り方を調整改良していったのが“スポンジケーキ改”である。
キリトさんは監督と味見係でした。
そんな苦労と努力の塊に生クリームを塗りつけて作ったケーキは、神の食べ物かと思う程に美味しかった。
手間とお金がものすごく掛かった、貴族も食べた事の無い美味しいケーキなのでそう頻繁には作れないけど、時々お祝い事の時に作ってきた。
砂糖とバター、小麦粉、生クリームにフルーツの砂糖漬けや生のフルーツを贅沢に使ったでこれーしょんケーキ、それを今回作る。
めれんげと生クリームの泡だてはキリトさんの担当だ。
魔法で冷やしながら作るのでとても簡単に、そしてきめ細かく泡立つらしい。
それだけでなく、かき混ぜもとてもうまい。
「妹がケーキ作りにハマっていた頃、ハンドミキサーが壊れて死ぬ程泡だてさせられたからね」
そう言ってムンッと腕を構えるキリトさん。
その腕には薄らと力こぶが出来ていて、男性の腕だな、と思ってしまうのははしたない事だろうか?
会話の端々に出てくる妹さんとは仲良しで、とても良いお兄さんだったんだろうな、と容易に想像がつく。
なんとなく妹さんが羨ましく思ってしまい、頭を振って変な思考を振り払う。
皆でわいわいと必要な材料を買い足し終わり、そのままダンジョンに戻った。
現在は二十階層を担当している為、出入りが非常に楽で良い。
転送陣であっという間だ。
一度に沢山あれもこれもは作れない為、今日の休みは丸一日を掛けて色んな料理を作ってキリトさんに保存しておいてもらうのだ。
【アイテムボックス】に入れておけばどんなに時間が経っても熱々で保管できる。
本当にすごい。
最初に作るのは山鳥の丸焼き。
本日ヤンスさんとエレオノーレさんが取ってきてくれた山鳥の羽をむしり、内臓を取り出す。
全体に塩、胡椒、ニンニクを擦り付け、お腹の中に香味野菜とニンニク、スパイス、マッシュポテトをたっぷりと詰め込む。
表面に油を薄く塗りつけたら予熱しておいたオーブンで皮がパリッとするまで丁寧にじっくりと焼くだけだ。
時折油を掬って上から掛ける必要があるが、作り方としてはとても簡単である。
なので、オーブンに入れてしまったあとは別の料理に取り掛かれる。
次に取り掛かるのは配る方のデスムーアロースト。
上の階で結構確保したし、お肉はそこそこある。
サクサクと仕込んで、これまた放置である。
調理に時間がかかるだけで作る事自体は簡単な物が多いんだよね。
コンロの問題で今日わたしが作るのはこの二つだけ。
トマトのチーズ焼きとか、ぴんちょすとか、サラダとかは当日で良い。
隣のテーブルではジャックがクリームシチューをたっぷり作っている。
コンソメスープのいい香りがふわりと広がってお腹を刺激してくる。
しかもそれに重なってオーブンからは山鳥の焼ける匂いまでして来るのだ。
「あー……腹減ったー!」
「これ、違う」
オーランドさんがお腹を抑えながらオーブンを眺めていて、ジャックに止められていた。
セーフティエリアに漂う美味しそうな匂いにハンター達がソワソワとしているが、今日は休みの日なので、ウチからの料理の配給は無い。
初めのうちはそのことに何度か苦情が上がっていたが、「じゃあお前達が休みの日はただ働きしてドロップ品を全部寄越せよ?」とヤンスさんに言われて何も言えずに追い返されていた。
お昼ご飯は屋台で購入してきた串焼きと惣菜パンで済ませた。
「こんないい匂いの中で食べるのが屋台の料理とかどんな苦行……」
「やめなさい。他のハンター達に聞こえるでしょ」
もそもそと冷えた串焼きを頬張りながら嘆くオーランドさんをエレオノーレさんが嗜める。
確かにそう。
他のハンター達は冷たくて硬い堅焼きパンと干し肉とチーズだけなのだ。
串焼きや惣菜パンを食べれているだけマシと言うか、相当な贅沢なのである。
匂いに釣られて『三本の槍』の人達がやって来たりもしたけど、丁寧にお断りして料理を作り続けた。
午後、山鳥の丸焼きと、デスムーアロースト、クリームシチューが完成したのでいよいよでこれーしょんケーキ作りに入る。
午前中のうちにキリトさんが果物のシロップ漬けを作ってくれていたので間に挟む果物の準備はバッチリだ。
一抱えはある大きな瓶にたっぷり作られたシロップ漬けは、様々な色のフルーツがトロリとした透明な液体の中で宝石の様に煌めいていた。
自慢げな顔で「魔法を使って加圧しといた」と言われたけれど、加圧した事でどうなったのかちょっとわからなかったけど、その表情は可愛いなと思ってしまった。
粉類を量ってふるい、サクサクと混ぜ合わせていく。
バターもオーブンの上に乗せて溶かしてあるのですぐに使える。
研究期間中に何度も何度も作った為、身体が作り方を覚えている。
迷うことなくジャックと二人で大量のスポンジケーキを焼き上げた。
小麦の自然な甘い香りと、砂糖とバターの濃厚な甘い香りが広がってたまらない。
もうこれだけで美味しいよね。
はわわ、よだれ出ちゃう……っ!
スポンジが萎んでしまわない様にゆっくりと冷ましていく。
その待ち時間に上に載せるフルーツを切っていく。
丁寧に皮を剥いて食べやすいサイズにカット。
フルーツ毎にボウルに入れてキリトさんに手渡せばサッと【アイテムボックス】へ。
便利すぎるよ【アイテムボックス】。
そしてキリトさんは凄すぎる。
セーフティエリアに甘い良い匂いが広がってざわつくハンター達。
期待に満ちた視線を意図的に無視して作り続ける。
私達のケーキはホールケーキ。
わたしが手で丸を作ったくらいの大きさのスポンジケーキを三枚にスライスして、キリトさんが泡だててくれた生クリームとシロップ漬けのフルーツを水切りしてから挟んでいく。
本来ならこんなにすぐシロップ漬けが出来上がったりはしないはずなのに、とチラリとキリトさんを見たら視線が泳いでいる。
また魔法で何かしたんですね。
さっき言ってた加圧の事かな?
三段のスポンジを重ねたら、全体を生クリームでコーティング。
これもまた難しく、今のところキリトさんしか上手くできないことだ。
わたしがやると、なんでだかスポンジがボロボロ崩れてクリームに混ざってしまうのだ。
パッと見は上手くできている様に見えてクリームの舌触りがとても悪い。
「俺は妹に手伝わされてたからなぁ……」
そう言って優しく微笑んでスルスルとクリームを付けていくキリトさんは薄暗いダンジョンの中なのに輝いて見えた。
次に取り出すのはドワーフ謹製の絞り袋。
クリームが滲まぬ様撥水加工された三角の袋の先に穴が開いていて、専用の口金が取り付けられている。
それを駆使して生クリームでホールケーキの縁を囲んでいく。
今日作るのは最高に贅沢なフルーツケーキ。
このクリームの輪の中に先程カットしたフルーツをたっぷり載せて完成するのだ。
可愛くて、綺麗で、甘くて、美味しくて、最高に贅沢なデザート。
貴族として生活した事のあるエレオノーレさんも食べた事の無い超!素晴らしいケーキ!
なので見てるだけで涎が出てきてしまうのは仕方ないと思います。
じゅるり……。
そしてジャックが作るのは四角い大きなケーキ。
二枚焼いた薄めのスポンジケーキでクリームを挟んで、天面にもクリームを塗りつける。
これはジャックが練習の為自分でやっている。
そうして一口大にカット。
その上にクリームを一絞りして、フルーツを一個ずつ載せていく。
シロップ漬けは入れない。
シンプルなこちらは、他のハンター達の分だ。
流石にあの甘い香りを嗅がされて、何も無しは可哀想過ぎるだろう、とキリトさんが主張した。
なんで優しい人なんだろうね。
ただし、生きるのに不必要なので一口大のケーキは食事とは別にして販売する事になった。
その代わり、お値段は破格の小銀貨二枚で下位ランクハンター達も買う事ができる様にしてある。
勿論一人一個まで。
わがままを言ったら以後のサポートは…以下略。
そうして出来上がったケーキは【アイテムボックス】に吸い込まれていった。
来週のくりすますパーティが楽しみだ!
間の六日間はそれはもう長く長く感じた。
オーランドさんも狩り方が雑だったり、気もそぞろだったりしてヤンスさんに何度もどつかれて叱られていた。
そして迎えた最終日。
私達がくりすますパーティをするので他のハンター達にもお裾分けをするのだ。
夕食にクリームシチューとデスムーアローストを出して、別のテーブルでケーキの販売を行った。
事前に告知していたので少しだけ余裕のある下位ランクパーティの人達も買いに来ていた。
間にあった休息日にお金を下ろしたという人達も少なくなかったみたいだ。
ケーキはトングで掴んで皿に載せねばならない為、わたしとキリトさんが手分けして取り分けている。
販売に関してはヤンスさん、見回りをオーランドさんがやっていて、シチューなどの料理の取り分けはエレオノーレさんとジャックが行っている。
「ねぇ、貴女、このケーキお金は倍額出すのでもう一つ購入できないかしら?」
「いいえ、一人一つまでですよ」
アレクサンドラさんがもっと欲しいと相談してきたがもちろんお断りである。
だって残ったら私達のおやつになるのだ。
絶対に嫌である。
しかも一度でもそれを認めれば今後も「金は払う」とわがままを言ってくるに違いないのだから。
まだ何かを言い募ろうとしていた彼女に気付いたオーランドさんが近寄ってきて、アレクサンドラさんは慌てて逃げ帰った。
「大丈夫か?」
「もっとケーキが欲しいとわがまま言われただけです。お断りしておきました」
「頑張ったな」
心配そうなオーランドさんにできる限りなんて事の無い様に答えると、ぐしゃりと頭を撫でられる。
心がぽわんと暖かくなった。
こういうところがこのパーティの良いところだと思う。
皆で支え合えるって本当にすごいと思うのだ。
さて、面倒事を終わらせたら早速くりすますパーティだ!
キリトさんの取り出したご馳走を見た他のハンター達がすごい顔をして二度見、三度見をしていたけど、これはわたし達のごはんである。
分けてあげないよ。
楽しく話しながら飲んだり食べたりして盛り上がる。
ヤンスさんの前にトマトのチーズ焼きを別皿で置いたキリトさんはとても偉いと思う。
瞬く間にお皿は空になり、大皿にも手を伸ばしていた。
その後キリトさんを褒めるヤンスさんという珍しいものが見られた。
プレゼント交換は皆前回地上に戻った時に購入済みで、今年は装飾品とかお財布とかそういうものばかりだった。
流石に今手作りは厳しいよね。
私はキリトさんのプレゼントで、シンプルな膝掛けだった。
うふふ、嬉しいな。
大事に使おうっと。
そしてお待ちかねの「豪華なケーキ」の時間!
ドンと出されたそのケーキにわたし達だけではなく、近くにいたハンター達の視線も釘付けになった。
何故か『三剣の華』の人達も居る。
息を飲む声や「何だありゃ」などの驚きの声が聞こえてくるが、このケーキの前では塵芥である。
「最初は女性から選んで下さいねぇ」
ケーキをなるべく均等にカットするが、やはり多少の大きさの違いがでてくる。
なのでケーキを選ぶ時はレディファーストだと言ってキリトさんはいつもわたし達に先に選ばせてくれる。
エレオノーレさんとわたしは遠慮なく大きなものを指差した。
それに笑って頷き、ジャックにケーキサーバーを渡した。
キリトさんは不運なので、ケーキを取り分けると意図せず駄目にしてしまいかねないそうなのだ。
そんな事ない、と言えないのがキリトさんなのである。
目の前に来たケーキは一つの芸術だった。
上に飾られた色鮮やかな沢山のフルーツ、美しい断面の層、そして立ち昇る芳しい香り。
小麦の香ばしく優しい甘い香りに、砂糖とバターの暴力的なまでの蠱惑的な香り、生クリームとフルーツの触れ合う甘酸っぱい香り。
全てが入り乱れ、混じり合い、とにかくわたしを誘惑してくる。
全員にケーキが行き渡ったのを確認したらもう我慢などできなかった。
「いただきますっ!」
皆が一斉にケーキにフォークを突き立てる。
今までお店で買っていたケーキに比べてありえないくらい柔らかで軽やかな触感。
何の抵抗もなくスッと沈み込んでいくフォークに乗ったのは三角の部分。
上に飾られた桃、真っ白なクリーム、ふわふわのスポンジ、そして重なる生クリームに小さく刻まれたシロップ漬けのフルーツ。
その全てをパクりと一口で含めば幸せの味。
「ーーーーーーーーーーッ!」
脳内全てが痺れる美味しさだ。
思わずのけぞってしまう。
お行儀が悪いと言われるかもしれないが、大丈夫だ。
皆同じ状態になっている。
美味しい!美味しい!美味しい!
ここがダンジョンの中だということも忘れて全てがケーキに染め上げられていく。
甘くて美味しくて幸せで。
大切に大切に食べたというのにあっという間にケーキは無くなってしまった。
「はい、どうぞ」
「え?!」
少し悲しく思っていたらキリトさんが自分の分を半分に切ったケーキを差し出してくれる。
空になった自分のお皿と、差し出されたケーキと、少し食べられた跡のあるパタリと倒れて潰れているキリトさんの前のケーキを見比べる。
どこからどう見ても最初から半分にカットして避けていてくれた様に見える。
しかも綺麗な方を残していてくれている。
「で、でも……っ」
「遠慮しないで。だってほら、エレオノーレさんだってもらってるよ?」
視線で指された方を見れば、ジャックが自分の分をエレオノーレさんにあーんと食べさせているところだった。
「ね?だから遠慮なくこれ食べて大丈夫だよ」
「あ、ありがとう……ございます」
恥ずかしくなりながらもお皿を受け取った。
こういうところがキリトさんの素敵なところで、そして悲しいところでもある。
多分わたしはいまだにキリトさんからは妹としてしか見られていない。
良いお兄ちゃんだったキリトさんはジャックがエレオノーレさんにケーキをあげてしまうことを予測していたのだろう。
そしてそれを見たわたしが悲しまない様に、と自分のケーキを切り分けて残しておいてくれた。
(嬉しいけど、やっぱり切ないなぁ……)
分けてもらったケーキは、上に載っていたフルーツが少し酸味が強かった。
胸がきゅううううっと絞られる様な気分になり、キリトさんの不運具合にちょっぴり苦い笑みが溢れた。
いつも俺不運を読んでいただきありがとうございます。
いつもとはちょっと違う甘酸っぱいお話でも、と思いましたが、何故か三剣の華とか出てきやがりまして。
後半に頑張って無理やり甘酸っぱくしてみましたが、どうにも上手くいかず。
やはり俺不運に恋愛はいらないでしょう(つまり霧斗の恋人はまだ出来ず)
うむ。




