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第8話 グラントーレ

 ()()、1人を仲間(パーティ)に加えただけでは冒険者になるための条件は満たせていない。

 冒険者になるための条件4は「3人以上の仲間(パーティ)を組む」となっているため、俺とアリッサの2人だけでは冒険者登録はできない。そう、()()ならば。


 俺とは違って、アリッサは一般的な職業(クラス)でない『賢者』と呼ばれる、世界的にも希少な職業(クラス)を得た人間だ。


 ここで重要となるのは冒険者になるための条件がある理由、「冒険者を志す未熟な者を守る」というものだ。


 『付与士』は不遇職と言われる《支援職》であるが故に、この規定よりも厳しい条件を科される可能性もあるが、その面『賢者』は世間からも希少な職業(クラス)の上、『賢者』のみが扱える魔法が強力過ぎるので、どんな等級(レベル)でも、直ぐに冒険者として活動できるだろう。

 

 そんな理由から、冒険者ギルドが不遇とされる『付与士』が唯一の仲間(パーティ)とは言えども、『賢者』の所属する仲間(パーティ)()()と認定するとは到底思えない。


 『賢者』とはそれほどまでの影響力のある存在なのだ。つまり、俺が直ぐに冒険者になるためには、アリッサを仲間(パーティ)に入れることが必要不可欠なのだ。


 しかし、その肝心なアリッサとは6年前に別れたっきり、まともに連絡も取り合っていない。

 俺が修行で忙しく、連絡を取る暇がなかったというのもあるが、アリッサからも連絡が一切なかったということから恐らくお互いに連絡を取る余裕がなかったのだと思う。


 そのため、俺はアリッサが今何をしているかも分からない。

 既に他の誰かと仲間(パーティ)を組んで冒険者として活動している可能性もあれば、【王宮魔道士】として国に仕えているという可能性だってある。

 そして第一に、現在のアリッサが無所属(フリー)だったとしても俺の勧誘を受け入れてくれるとは限らない。

 俺とアリッサは幼い頃からの知り合いで、それなりに仲が良かったと俺は感じていたが、向こうが同じように感じてくれていたとは限らない。

 

 ……アリッサを仲間(パーティ)に誘うのは、〝出来たらラッキー〟程度に考えるのが良いかもしれないな…。



 少し寝ぼけ気味のアイリスさんから貰った朝食を食べながら、俺はそんなことを考えていた。

 


 俺がそう考える1番の理由は、アリッサが通いに行った冒険者育成学校が《グラントーレ》と呼ばれる【カルナラ】の中でも最も優れていると言われる最高峰の冒険者育成学校だからだ。

 最高峰と言われる理由は数多く存在するが、中でも有名なのは〝教師が元高ランク冒険者のみで構成されている〟ということだろう。

 最低でもCランクといった教師の質の高さを持つ冒険者育成学校はこの《グラントーレ》以外にはない。

 噂でしか聞いたことがないため確証がある訳ではないが、元Sランク冒険者の教師も居るとか。

 元高ランク冒険者という、一度冒険者というものの高みに至った者から直接教えを乞えるということの価値は、冒険者を志す者ならば誰でも理解できるだろう。

 

 しかし、そのような高度な教育を受けるには《グラントーレ》の入学条件を満たさなくてはならない。


 では《グラントーレ》に入学するために必須なものはなにか?



ーー膨大な魔力?


ー否。たとえ魔力が人より多かったとしても、その程度のことでは《グラントーレ》に入るに相応しいとは言えない。


ーー《グラントーレ》に応じた身分?


ー否。《グラントーレ》は決して権力に屈さない。平民の子供だろうが貴族の坊ちゃんだろうが分け隔てなく接することで有名な施設だ。そのため、入学する際に身分は一切関係ないと言えるだろう。


ーー入学にかかる費用?


ー否。確かに《グラントーレ》に通う為には学費が必要だが、必要だと言っても学費自体は他の冒険者育成学校と対して変わらない。つまり、費用のことで《グラントーレ》に入学するのが困難になるのであればそもそも冒険者育成学校に通うことが出来ないような者のみだろう。



 では《グラントーレ》に入学する為に求められるものとは何なのか?


ーー答えは職業(クラス)だ。


 《グラントーレ》に入学するには職業(クラス)に特異性がないといけないのだ。

 特異性。それはアリッサの職業である『賢者』のように貴重で数の少ない職業(クラス)の者、他の職業(クラス)の者にはない性質を持つ職業(クラス)の者、俺の集中付与(コンセントレイション)のように数多くある職業(クラス)でありながら抜きんでた才を持つ者たちのことを指す。

 といっても、アリッサの職業(クラス)は特に貴重な職業(クラス)である『賢者』のため、《グラントーレ》に通える者が少ないと考えてしまうが、実際は《グラントーレ》に通う人間が少ないという訳ではない。

 そこまで興味もなかったからあまり詳しいことは知らないが、確か全校生徒300人はいたはずだ。


 《グラントーレ》は冒険者育成学校という名前の通り、冒険者を志す者のための学校だ。

 他の学校は5年間ほど冒険者について学んだ後に卒業し、冒険者となるのが一般的なのだが《グラントーレ》は、より優秀な冒険者を育成するために、学校での活動に明確な期限を定めていない。


 そのため、アリッサがまだ《グラントーレ》に通っている可能性がある。


 ……実際、アリッサが既に冒険者として活動している可能性の方が高いと思うが、先程も言った通り〝出来たらラッキー〟程度の気持ちで取り敢えず《グラントーレ》に行ってみることにしよう。


 アリッサが冒険者として活動していた、アリッサに誘いを断られたなどといった場合でも、最悪ちょっと街を出て等級(レベル)を上げてくれば済む話だしな。


 

 今後の方針を決めたのと同時に、朝食も食べ終わった俺はアイリスさんに「美味しかったです」とだけ伝えると、そのまま《グラントーレ》へ足を向かわせた。

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