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第6話 評判調査と…

 冒険者として活動するのであれば宿を確保をすることは必須事項だ。


 その街を拠点において家でも建てていれば話は別だが、今の俺に家を買うなんて大それたことはできないしする予定もない。


 俺はSランク冒険者になることを目標にしているが、それと同じくらい世界を見て回りたい気持ちがあるからな。



 予定よりも早くバルジに着けたことだし、念入りにバルジの宿屋事情を調べてみますかね。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ある程度バルジ住民に聞き込みをしてみた所、この街にある宿と呼ばれる施設は《戦士の休息》、《山姥の小屋》、《渡鳥の泊まり樹》の3軒だということが分かった。


 この3つの候補の中から今日泊まる宿を決める訳だが……。

 正直、《渡鳥の泊まり樹》以外の選択肢はないと言っていいだろう。



 俺が《渡鳥の泊まり樹》を選んだことには、これらの意見が大きく影響を与えている。


「お前さん、この街に来たばかりだろう?だったら《戦士の休息》はやめた方がいい。……あそこは丁度、今くらいの時間からむさ苦しい冒険者たちが騒ぎ出すからねぇ…」


「お金がないなら《山姥の小屋》かな?……何出されるか分からないから、あまりオススメはできないけど…」



 《戦士の休息》の評判を教えてくれたおばさんが、これほど険しい顔つきになるくらい騒いでいるというのなら、その騒音はかなりのものと推測できた。

 体を休めるために宿を取るというのに騒音で安眠出来ないのであれば意味がない。

 こういった事情から《戦士の休息》は候補から外れたのだ。


 《山姥の小屋》だが、教えてくれた女性が言うに、《山姥の小屋》の料理は実際料理と呼んではいけない代物らしい。何人もの宿泊客(イケニエ)がそれを証明しているのだとか。

 それならば食事だけ別の所で済ませればいいのでは、と思ったのだが、どうも泊まりのみを選ぶことは出来ないらしい。

 なんでも儲けを気にしているわけではなく趣味の延長だから料理もセットにしておもてなし(実験)したいのだとか。

 そのため、《山姥の小屋》に泊まるのであればどうしても食事はついて来てしまうようだ。地獄かよ。

 ただ、趣味の延長だからこそ、低コストで宿泊が出来る、というのはかなりの魅力だ。

 そのため、《渡鳥の泊まり樹》に空き部屋が無ければここに泊まることになるだろう。


 

 さて、肝心の《渡鳥の泊まり樹》だが、この宿だけはバルジの住民からもかなりの評判だった。


「まだ宿が決まってないのなら、一度《渡鳥の泊まり樹》に行ってもいいと思うぜ。泊まれなかったとしても損することはねえ」


「《渡鳥の泊まり樹》一択じゃない?だってアイリスいるし!」


「《渡鳥の泊まり樹》はいいぞ」


 

 この他にも《渡鳥の泊まり樹》を推してくる住民がいたことから、《渡鳥の泊まり樹》の評判の高さが伺えるだろう。

 ……単に他に2つが酷すぎるだけなのかもしれないが。



 それからもしばらくの間、聞き込みを続けてみたが、やはり《渡鳥の泊まり樹》が良いという意見がかなり多かった。


 …こう思うとかなり多くの人に聞き込みが出来たな。

 もうそろそろ夜になるといった所だし、最後にあそこにいるオッサンに聞き込みしたら《渡鳥の泊まり樹》に行ってみるとしよう。


「宿を探してる?…こんな時間から?…ふむふむ。兄ちゃん()()()してるねぇ。……良かったら、俺の家に来ないかい?」


 オッサンの発言に経験したことのないレベルの悪寒を覚えた俺は、思わず体を震わせてしまった。

 そして、このオッサンから禍々しいオーラが放たれている、ということに気付いた俺は、身の危険を感じ、その場から直ちに立ち去ることにした。



 しかしーーー


(このオッサン、いつの間に!?)


    ーーーまわりこまれてしまった…



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 結論から言うと、俺の貞操は守られた。

 俺はあのオッサンの魔の手から逃れることになんとか成功したのだ。


 実際、あのオッサンから逃げながら、《渡鳥の泊まり樹》へ向かうのは簡単ではなかった。

 日も沈みきり、人通りも少なくなった道を《魔道ランプ》が照らすため、あのオッサンを振り切るのが難しかったからだ。

 その上、あのオッサンは時折転移でもしたかのような先回りをしてくるため、ルート構築が大変だった。

 だが、ガルフ爺ちゃんの修行で日々鍛えていたからか、なんとかオッサンを撒くことが出来たのだ。

 

 俺はそんなこんなで無事《渡鳥の泊まり樹》に辿り着けた。

 住民に聞いた話によるとこの宿は人気らしいので宿が取れるかどうかの確信は無いが、この宿に泊まれるかどうかはこの際どうでもいい。

 宿の質とかを気にする余裕は先程のオッサンとの逃走劇(チェイス)をしてきた俺にはない。

 今の俺にとって最も大事なのは安全な宿に泊まれるか否かである。

 だから最悪この宿が無理だったとしても、もう一度あんな目に会うくらいなら戦士だろうが山姥だろうが受け入れてやる所存だ。

 

 俺は安全地域を求めて、目の前にある《渡鳥の泊まり樹》の扉を開いた。

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