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第3話 沼津弁って、呪文ですか?

【前書き】


第3話です!


今回は、主人公が沼津の学校生活に飛び込みます。

東京育ち(前世)の社畜には、方言も給食もカルチャーショックの連続……!


それでは、お楽しみください!

第3話 沼津弁って、呪文ですか?


新しい人生を始めた。


東京で24年間生きた社畜、相模明里。


今は――


駿河明里。奏岡中学校一年生。


家族の会話を聞く限り、お父さんもお母さんも前世とほとんど同じ。


違うのは名字だけ。


まるで、誰かが都合よく辻褄を合わせた世界みたいだった。


「……不思議。」


それにしても危なかった。


朝、お母さんに


「朝食、大変美味しゅうございました。」


なんて社会人丸出しの言葉を言いかけた。


危ない危ない。


今の私は中学一年生。


24歳の社畜じゃない。


ボロを出さないようにしないと。


◇ ◇ ◇


気づけば一時間目。


先生の話なんて、ほとんど頭に入らない。


私は今の状況を整理するだけで精一杯だった。


その時。


「……だら?」


先生が言った。


「ん?」


数分後。


「そうだら。」


また聞こえた。


だら……?


だら……


ダラ……


ダラ……ダラダラ……!!


頭の中で、なぜかギャンブル漫画のような効果音が鳴り響く。


(なんか今日、やたら『だら』って聞こえるんだけど!?)


朝も、お母さんが言っていた。


「来月は授業参観だら?」


あれもそうだった。


隣の席から、小さな声が聞こえる。


「あかりちゃん、昨日うちっち一緒に宿題やったら? あれ、もしかして答え間違ってたかね?」


「……。」


ところどころ日本語だから、なんとなく意味は分かる。


でも――


うちっちって何!?


家?


私?


人称なの!?


(こうなったら……)


郷に入っては郷に従え!


24年間、理不尽な上司を相手にしてきた社畜を舐めるな!


私は覚悟を決めた。


「だ……だら!」


隣の女の子が、目を丸くした。


「……え?」


(やっぱり間違えたーーー!!)


焦っていると、女の子は笑いながら言った。


「だよね~。先生、今日ちょっと厳しいら。」


(……通じた?)


その瞬間。


ピコン♪


スマホが震えた。


━━━━━━━━━━━━━━━


実績解除


『沼津弁・基礎』


沼津で初めて方言を使いました。


進捗度:5%


━━━━━━━━━━━━━━━


「方言だったのか……。」


イントネーションが標準語に近いから、全然気づかなかった。


東京では標準語しか聞かなかった。


でも、この街では中学生ですら自然に方言を話している。


そんな地域色が、なんだか心地いい。


私は隣の席の名札を見た。


片浜 凪


「……なぎちゃん、か。」


優しそうな笑顔。


前世には、こんな穏やかな時間はなかったな。


◇ ◇ ◇


キーンコーンカーンコーン。


昼休み。


「給食の準備をしてください!」


坊主頭の大きな男子が元気よく号令をかける。


(懐かしい……。)


配膳が始まる。


トレーの上を見て、私は固まった。


「……え?」


アジの干物。


給食に?


すると周りから、


バリッ。


ボリッ。


という音が聞こえてくる。


「え、骨ごと!? 頭ごと食べるの!?」


恐る恐る一口。


サクッ。


バリッ。


「……美味しい。」


香ばしく揚がった骨。


ほどよい塩気。


思わず箸が止まらない。


社畜時代の昼食は、カップ麺やゼリー飲料ばかり。


プロテインだけで済ませる日だってあった。


それに比べたら、この給食は温かくて、ゆっくり時間が流れていて――


少しだけ、泣きそうになった。


男子は昼休みに何をして遊ぶか話し合い、


女子は放送で流れる音楽に合わせて手だけで踊っている。


なんだ、この平和な世界は。


その時。


ピコン♪


━━━━━━━━━━━━━━━

実績解除


『ご当地給食 Lv.1』


沼津のソウルフードを味わいました。


進捗度:10%


━━━━━━━━━━━━━━━


「ねぇ、あかりちゃん。」


顔を上げると、凪ちゃんが笑っていた。


「今日、放課後遊ばない?」


(沼津の女子中学生って、何して遊ぶんだろう。)


営業職だった頃の好奇心が、むくむくと顔を出す。


「……うん! 行く!」


こうして私の”沼津探検”が、また一歩進み始めた。

【後書き】


最後まで読んでいただきありがとうございます!


沼津弁の「だら」は、地元では本当によく耳にする言葉です。

また、アジの干物をはじめとした地元らしい給食も、沼津ならではの魅力の一つですね。


次回は凪ちゃんと初めての放課後!

沼津の中学生はどんな遊びをするのか、主人公と一緒に探検していきます!


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